安全ピン

安全ピンは安全ではないと気づきました。
どこが安全ではないかと言いますと、先端が尖っているところです。
先端が尖っているものはたいてい安全ではないという事を、わたくしは経験上知っています。
先端が尖っている物よりも先端が尖っていない物のほうが安全なのは、安全ピンを安全ピンと名付けた人ですらわかります。
なのに奴らはかたくなに僕らに安全を主張するのです。
何が安全ピンをここまで駆り立てるのでしょうか?

安全ピンが安全を名乗る以上は、安全である事が他のどんな要素よりも安全ピンにとってのセールスポイントになっているという事に他ありません。
布類に刺して使用する、というそこはかとなく立ち込める危険な響きのする使用方法を圧倒的な説得力で抑え込む自信があるからこその安全推しなのです。
どこからこのような自信が湧き出てくるのか、僕には皆目見当もつきません。
実際に安全ピンを使用する際にその先端で指を負傷した経験のある僕を納得させる程のネーミングの由来があるとはとうてい思えません。
裁判になれば、負傷した指に必要以上の包帯を巻き付け、半ば強引に勝訴を奪い取る覚悟が自分にはあります。
奴の…安全ピンのアイデンティティー構築の源はなんなのか、調べてみました。

安全ピンは、元々はただ刺すだけの針が基準となっており、改良を加えて、現在のような布類に刺した後に先端部分を金具で固定した物になりました。
従って『絶対的』な安全ではなく、以前よりかは…という『相対的』な安全を意味している。
…との事です。

納得です。
語源を知ってしまうと安全ピンと呼ばざるをえません。
だって安全なんですから。

さあみなさんもこれからは安全ピンに疑念を抱かず、安全ピンの安全ぶりを心ゆくまで堪能してください。

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