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実はなくとも豆のある暮らし(お汁粉)|酒と肴 その九十七

由無し事にかまけていたら、買い置きのじゃが芋から芽が生えていました。野菜籠に訪れた春、そう言えば明け方に、まどろみの中でうぐいすの声を耳にした気がします。ベランダから見えるご近所の梅もそろそろ七分咲き、桜の開花も間もなくでしょうか。

芽吹く

まじまじと見れば、四方八方に伸びる突起が恐ろしげ。それでも、海の生き物にも似た色と形は、ホヤやナマコの珍なる味を思い出させ、ぴくりと食指が動きます。案外、ひと口くらいならイケるかも知れませんが、冒険心よりもお腹が大事ですから、厚めに剥いて味噌汁の具にしました。じゃが芋とワカメの味噌汁は、春先のイメージです。

もうそれにしたって、こう暖かいと花粉が舞って、アレルギー反応から肌の調子も悪くなるんで困ります。
よりによって口の端に吹き出物が出来てしまい、咀嚼するたび痛みます。おかげさまで固形物はなるべく避けて、液体で栄養を摂るしかなくホントに困ります。
仕方なしに、いつもより多めに頂くビールと焼酎。近頃は芋焼酎のソーダ割りがお気に入りでして、酔えば痛みも和らぎます。これほど便利な口実は、ここ数年出会ったことがありません。ちょいと嬉しい悲鳴でもあげてみましょうか。

濵田酒造の「だいやめ」右

はい、呑み過ぎは却って免疫力が下がることも知っております。
だけどつい、自分にとって都合のよい話を選んでしまうのか人間の性。春の長閑けた気分も手伝って、締めの一杯は手がすべった振りして多めに注ぎます。

そうそう、お彼岸の時期でしたので冷凍ストックの粒あんを使って、お汁粉を作りました。焼いた餅の代わりに、小さな雪見だいふくを浮かべて頂きます。どちらも柔らかいので、口の痛みも気になりません。
豆とその加工品、例えば浸し豆や煮豆なども常備しておくと、何かと便利です。

好きな色味

温かいあんこに、冷たい雪見だいふく。何だか近頃の気候のようでもあります。
まずは表面の白い雪のところを齧り、その後はあんこと絡めて。
寒暖差は調子を崩しますが、口の中で温度差があるのはアフォガートみたいで楽しくっていいですね。こいつにはエスプレッソよか濃い目の抹茶、正しくは抹茶割りが抜群に合うのではないでしょうか。

改良の余地はたくさんありそうですけれど、なかなか素敵な組合せに出会いました。
このところは仕事にかまけて、プライベートは実のない日々ではありますが、豆のおかげでそこそこ彩りのある暮らしでございます。

メニューと材料
・お汁粉(粒あん、ミニ雪見だいふく)



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