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凪良ゆうさんの「すみれ荘ファミリア」、おもしろかった!

「汝、星のごとく」で2度目の本屋大賞を受賞され、今や書店のあちらこちらで特設コーナーが設けられている凪良ゆうさん。

今まで読んだことがなかったので、「流浪の月」を手に取ってみました。
何、この本、テーマは重いけど、面白い!

そこからは立て続けに凪良作品を読破。
見事にハマりました。
どの作品も読み応えがあったのですが、今回ご紹介するのは「すみれ荘ファミリア」です。

主人公は、生まれつき体が弱く、お人好しの下宿屋管理人、一悟。
ある日、彼が乗る自転車に若い男がぶつかってきます。
青年の名は芥。
小説家で、事故が原因で怪我をしたから面倒をみろと一悟の下宿に転がり込んできます。

彼は小さい時に生き別れた実の弟だと確信を待つ一悟。
しかし芥は正体を明かそうとはしません。

芥が近づいてきた目的はなんなのか…。
不可解な点を残しつつ、表面上は穏やかに日常が過ぎていき、一悟を取り巻く下宿人や母親など周囲の人間の悩みや苦悩が明らかになっていきます。

読み始めてしばらくは、人間の持つや苦しみを描いて行く短編連作か…。
みんな頑張ってるよね、それぞれに事情があって生きるのって大変だよねっとさらっと登場人物に共感する感じで読んでたのですが。

読み進めるうちにどんどん不穏な空気が立ち込め、思わぬ方向に話が進んでいきます。
まさか、まさかの結末にあんぐり。  

小説の中のあちこちに散りばめられた違和感やひっかかりが、終盤に向けて綺麗に回収されて行くさまは爽快でした。

「普通の人」に潜む狂気や闇の部分。
世間的には「普通でない」とされる人が、自分ではその変わった部分をどうすることもできないまま、なんとか折り合いをつけて生きて行く姿。
凪良さんの作品に共通する、「普通」に対する問題提議と、はみ出してしまった人への温かい視線が随所に溢れた素晴らしいお話です。

蛇足ではありますが、BL作家としてデビューされた作者。
そちら関係の作品も読みました。
面白くはあったのですが、なかなか刺激的ですので、抵抗がある方は、それ以外の作品から読むことをおすすめします。
偏見を持ってこの方の作品を読まないのはあまりにももったいない。
心の底からそう思います。

本日の写真:アイスチューリップ
毎年同じような写真をとってますが、やっぱりチューリップは好きなのです。


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