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若者に支持されるコンテンツを解明する adtech tokyo2019 【セッションレポート】

11月末に行われたアドテック東京に登壇しました。その話はまた別でするとして、登壇者の何がすごいってすべてのセッションが聞き放題なんです。今回はアプリ企画・PR・プロモーションを担当する身としてコンテンツ系のセッションを中心にいくつか聞いてきました。

その中でも特に印象に残っているのが「若者に支持されるコンテンツを解明する」http://adtech-tokyo.com/ja/session/session.html?num=CK7

「紐解く」というコンセプトで色々とヒントになることが多かったので内容をまとめてみました。

登壇者とセッションアジェンダ

●登壇者はモデレーター含め以下の5名(公式より抜粋)

モデレーター:池田 昂平さん(TBWA\HAKUHODO コンテンツプラナー)

スピーカー :石橋 尚也さん(UUUM株式会社 執行役員)、伊沢 拓司さん(株式会社QuizKnock 代表取締役社長)、武藤 崇雄さん(C Channel 株式会社 広告営業推進部 部長)、渡辺 裕介さん(株式会社チョコレイト 代表取締役)

●セッションの中で議論されたテーマ

①若者に支持されるコンテンツは時代に左右されないのか

②本質×時代性

③どういうフローでコンテンツを発想している?

④タピオカブームを分析する

⑤SDGsとの関わり方

後半は時間がなく①~③を中心に話していたので、その内容についてまとめてみました。

そもそも「若者」と「コンテンツ」の定義とは?

議論に入る前にまずこの2つの言葉の定義を明確にしておこうということで、このセッションでは以下の定義になりました。

若者:現代においてはZ世代。過去と比較する際は10代後半~20代後半まで
コンテンツ:側としては「消費されるもの」だけど本質は「心を動かすもの」

コンテンツについては動画プラットフォームとの関わりが濃い石橋さん・武藤さんから「消費されるもの」という言葉が出てきました。特にWeb上にある動画は一瞬見られてすぐに終わり、次々消費されるものと考えられます。しかしそれはあくまでフォーマットの話であり、過去も遡って考えると本質は「心を動かすもの」なんじゃないかと、渡辺さん。みなさんこの意見には納得しているようでした。

若者に支持されるコンテンツは時代に左右されないのか?

●フォーマットや時代によってできあがるものは変わる

フォーマットの話ではまずテレビとWeb動画の比較の話に。テレビに出演しながら、Youtubeでもコンテンツを作成している伊沢さんは、同じ動画でも当然画面サイズや映る範囲が変わってくるので、大局を見せればいいテレビではディテールはわからなくてもいいけど、逆にWeb動画だとディテールが問われる作りになると。またTikTokと同じコンテンツをテキストだけのブログで流行らせるのは難しいけど、適したプラットホームが出てきたことで新しいコンテンツが生まれたという話もありました。つまりみなさん、フォーマットによって好まれるコンテンツは変わると考えているわけです。

武藤さんからは、東日本大震災がきっかけで、地方応援やあたたかみのあるものが求められて、ゆるきゃらが流行ったことについても触れられました。世の中の空気感もコンテンツが受容される上では無視できないものとしてありますよね。

●本質の部分は同じでは

そんな中でも変わらないコンテンツは何か?という話で、みんな美味しいものは好きだし、ペットはかわいいしといういわゆるコンテンツの「定番」の話に。個人的にはセッションの説明にあるように「恋愛」「モテ」も不変のワードだと思うし、なぜか今LINEのタイムラインで昔流行ったチェーンメールと同じようなものが流行っているらしく「これしないと呪われる!」みたいな不安を煽るようなコンテンツはプラットフォームが変わっても形を変えてみんなが惹きつけられるものなのかなと思ったりします。

その流れで実際に、10年前にテレビの深夜番組で流行った企画を焼き直しているYoutuberがいるという話も出てきました。今、そのYoutuberのコンテンツを見る子たちは当時の深夜番組を知らないので初めて出る新しいものに思えるそうです。そう考えるとベースとして好きなものはやっぱり変わらないのかもしれないですね。

コンテンツの本質×時代性

●今の時代どうやってコンテンツを作ればいいの?

ここではクイズノックで実際にYoutubeの動画を作成している伊沢さんの話が中心になりました。クイズノックでは、やりたいことを自由にやるより、いかにニーズに応えるかということしか考えていないそうで、あくまで「バズ」ではなく「教室で話題になること」が目的なので「おもしろくてテスト勉強になる」というところをキーポイントにしながらコンテンツを作っているそうです。ちなみに最近の傾向としてはスーパープレイが求められていると感じているそうですが、これだと期待値が上がって答え続けるのが難しくなります。渡辺さんからそういうときはどうするの?という質問が出ると「ヒーローが明らかに無理なことに挑戦することで、一度期待値をリセットする」と話す伊沢さん。クイズノックであれば、中国語でクイズに回答するなどできそうもないことに挑戦して「やっぱりできない」という姿を見せるそうです。共感性だったり弱さを見せることで愛すべきヒーローになってもらうというか、包み隠さない姿勢も大事なのかもしれないなと、ここはすごく時代性を感じました。

企画の発想法は?

●バズへの疲弊

クイズノックでは、教室で話題になることがテーマでしたが、ここではみなさん「バズに疲弊してきた」というのが垣間見えました。バズは結局消費されるので心に残らないし、バズってもお金が動く感じがしないとモデレーターの池田さん。受け手も造り手も刹那的に消費されていくコンテンツが生み出され続けること・そしてそれを生み出し続けることに心が疲弊してきているのかなと感じました。そういう意味では長く愛してもらえるコンテンツに回帰してきているのかもしれません。

●柔軟な発想方法でコンテンツを作り出す

具体的な発想法の話では一人で考えることの限界の話に。石橋さんによると最近ではYoutuberのコンテンツコンサルという職業も出てきているそう。企画のプロである広告プランナーの渡辺さんも「雑談が一番発想が出る!」と話していました。また、雑談は何のプレッシャーもないので、そういったプレッシャーもないところのほうが自由にアイデアが出るということもお話していました。

ちょっと毛色が違う考え方だと、プラットフォーマーである武藤さんから視聴率・再生率といったデータからコンテンツを逆引きして考えるという話がありました。これはデータが色々取れるようになったデジタル時代ならではだなという感じで意外性を感じたのですが、よく考えるとWeb広告のバナーやLPの世界では当たり前に行われていることかもとも思いました。

こんな感じのお話までしたところでだいぶ時間切れとなり、最後に少しだけタピオカの話をしてセッションは終了しました。

まとめ もっちり的所感

セッションを通してみなさんがお話していた通り、私もコンテンツの本質は不変なんじゃないかと思います。「キレイ、美味しい、かわいい」は共感を呼ぶなんて言うけど、人が本能的に惹かれる要素は必ずある。

ただプラットフォームに合わせた「見せ方」と、その時代の価値観に合わせた「伝え方」は変わるはずだというのも今回すごく感じたことでした。セッションで話しきれなかった「SDGEsとの関わり方」で議論されていたかもしれないですが、女性芸人を「ブス」「デブ」といじるようなマイノリティや外見を否定・排除するコンテンツは受け入れられなくなっていますよね。けど昭和~平成初期だったらみんなそれで笑っていたわけです。東日本大震災後のゆるきゃらの話にも繋がりますが、そういった社会全体の価値観や求められる空気感によってもトレンドは変わると思います。そう考えると「誰の」「どんな想い」に訴えかけたいかを大事にしながら、時代の流れを読んで伝えられるコンテンツが、一番深く刺さるんだなあと改めて感じました。

とここまで書いて、これはすごくPR的な視点だなとも思いました。自分たちの伝えたい情報と世の中の時流をうまくつなぎ合わせて情報を加工する技術はPRのテクニックですよね。今まで広告コミュニケーションといえば、伝えたいことを一方的に伝えることがメインになっていましたが、そういうメッセージはどんどん受け入れられなくなっていくんだろうと思います。伝えたいメッセージと世の中で受け入れられるメッセージのバランスが難しいとはわかっていつつも、そのバランス感覚を持ってコンテンツを届けられる人でありたいなと改めて感じる50分間でした。

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