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乳と卵

梅雨入りとか夏が始まるとか、ジメジメ汗が体を纏う不快感を与えてくる季節は好きじゃない。なぜ日本はこうもジメジメしているのか、なぜ無駄に夏が暑いのかと思うけど、海外に行ったのは2回しかないから比べようもない。

化粧が剥がれ落ちそうな程汗をかいたり、蝉の鳴き声が聞こえてきたり、花火をしたくなったりした時に無性に読みたくなるのが、川上未映子の小説、乳と卵。

このケーキでも作るのかと思うタイトル。ページを開いてみると自分の体の変化やコンプレックスに対する戸惑い・悩み、そして母子のすれ違いから勃発した冷戦の行方が書かれている。

どんな人も子供という多感な時期を経て、現在大人と分類される人生の真っただ中にいると思うのだけど、思い返してみると私は子供の時の方が沢山の事に悩んでたと思う。実はくだらない事だったのかもしれないけど、限られた世界で生きてた幼い私には大きな事ばっかりだった。

給食で出るトマトが食べれないとか、泳げない・夏のプールの授業が大嫌いとか、犬を飼いたいのにダメと言われるとか、勉強したくないとか、すぐに自転車の鍵をなくして母親に怒られるとか、一番仲良しになりたい友達には一番の仲良しがいるとか、好きな男の子と喋れないとか。書いてたらきりないけど。

その当時を振り返ると可愛いなぁと思う悩みやけど、その時はかなり真剣に悩んで悩んで悩んでいた。そんな時は漫画雑誌の『リボン』の付録でついてた可愛いノートに思いの丈を書き付けてストレス解消をしていた事を思いだす。ノートに叫びまくる毎日。思春期にはあるあるな現象なのか?

乳と卵に出てくる小学生の緑子もノートに気持ちを書きなぐっている。大人になった今でも緑子の心からの叫びは胸に突き刺さり、自分も同じ事で苦しんでたその頃を思い出して、読み終わった後放心状態。

今の時代、男とか女とか言うのはどうかと思うけど、やっぱり女性の体で産まれたから感じてしまう苦痛とか悩みとかは子供の時の方があったのかもしれない。下品な言い方やけど、子供心に『股から血が流れるってどうよ』『子供とかいらんから毎月のこのお腹の痛みどうにかして』と思ったものだった。

もうとうの昔に私は少女を終えてしまった。それはそれは切ない現実だけど性という概念ではもう自分の体と向き合い終わったような気がする。体のコンプレックスも時間の経過とともに受け入れれたし、自分は自分と納得している。そんな感じでもう30代。大人としての悩みはやっぱり尽きないが、そんな今の世界に飲み込まれそうになった時に、子供時代の悩みを思い出してみたくなる。

乳と卵


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