まんまるなみだ

2021.8.25~ 詩/音楽/写真

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2021.8.25~ 詩/音楽/写真

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最近の記事

詩「埋める」

校庭と空がいつもより広い テスト最中に眺める窓の外 空白は埋めたくなるけれど 空欄は埋めたくならないね 君が泣き顔を見せるくらい の確率なんだけど、テスト を中止させるほどの大きさ の隕石が近所に落下して、 僕の退屈を埋めてほしいな

    • 詩「春の終わり、そびれる」

      寝そびれた 子供が 泣きそびれた 大人を 見つめている 春の終わりを 憂うかのような 眼差しで 聞きそびれた 告白と 言いそびれた 告白が 春の終わりに 鬩ぎ合い 夕刻

      • 詩「抱く抱きしめる」

        君を抱きしめられなくなって 散り際の桜の幹を抱きしめてみた まださみしかったから帰り道 陽を浴びた電柱を抱きしめた 広くなった部屋でぽつんと泣きたくなる 絶望を抱くことができてしまうから

        • 写真「換気口と骨」

        詩「埋める」

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        • なみだのある風景
          252本
        • モノクロスクエアな風景
          39本
        • 音楽を着がえる
          14本

        記事

          詩「嘘つき」

          記憶は 嘘つきで 涙もまた 嘘つきだ 泣いてる わたしを 傍観してる わたし 背面跳びで バーを越えるとき 空を見る余裕のある わたし

          詩「虹の源」

          土砂降りの雨は森のにおいをむせるほど濃くし、モノトーンの空間をつくりだす ぼくは湖面のあたりで雨粒が激しく踊り狂っているすがたを静かに見ている やがて空が泣き止み、気温が上昇する 湖面から沸き立つように虹が弧を描き、それをパレットにして誰かがまわりに色を塗るように色彩が戻ってくる そんな虹の源は生前、虹だったころを忘れられない虹鱒であってほしいと願う

          詩「青い光のみ反射して」

          あなたの肉体が青い光のみ反射して夜桜の下、病人のように浮かぶ 触れたいものがなくなったから、もう肉体はいらないとか言わないでほしい傷ついたことすら忘れるくらい傷ついていたことはわかるよ でも、人間とか異性とか友人とか抜きに、肉体としてわたしに触れてほしい肉球のように愛おしい部分とか誰にも触れられたことのない部分など そして夏に向かって、いっしょに細胞を作り変えていこうよ あなたの涙は青い光のみ反射して、そのなかに春の痛みを全て閉じ込める

          詩「青い光のみ反射して」

          写真「ギャップ」

          写真「ギャップ」

          詩「美しい人」

          美しい言葉遣いの終わりに嫌いじゃないと言われたら、終わりの見えている疑似恋愛に発展しそうで 美しい発音で死と言える人の死は、やはり整然として美しいものなのだろう そんな人は姿勢だってきりっとしているから、ずっと遠くまで見渡せそうで 知らなくてもいいことを知ってしまって、流さなくてもいい涙を流すことになるのだろう

          詩「美しい人」

          詩「子供のように」

          ニルヴァーナをナーバナ、オアシスをオエイシスと訂正されつつ、次のレコードに針を落とす。 ティアーズ・フォー・フィアーズの発音はそのままでいいらしい。 イギリスからやってきた彼女が酔いにまかせ、子供のように泣く春の夜、窓からなまあたたかな風が入ってくる。

          詩「子供のように」

          詩「恋を失う午後」

          一口も口 つけて ない 珈琲の なかの 目と 目が合う 午後 頷いてる 合間に 零す 涙が 傍観者 のような あなたの 視線で 抹殺 される

          詩「恋を失う午後」

          詩「雨のなかに」

          胸のなかに隠しておくのなら 雨のなかに隠しておいたほうがいい 子供と大人なんてたいして変わらないけれど 涙と雨は似て非なるものだけれど もし隠しきれないほどならば そっと雨後の森にばらまいてしまえばいい

          詩「雨のなかに」

          写真「YUNGBLUD」

          写真「YUNGBLUD」

          詩「美学」

          「泣いてやってきたこの世を去るときくらい笑えよ。」  「笑わせてやるから。  苦笑い、愛想笑い、泣き笑い、照れ笑い、嘘笑いのどれがいい?」 「いや、おまえのくだらない冗談を馬鹿にして笑わせてくれないか?  みじめな死顔は見せたくないから。」

          詩「そびれる」

          言いそびれた告白と 聞きそびれた返事が そびれのねじれのような 虚空をさまよっていた冬 エンドロールで 泣きそびれた映画のあと 街ですれ違う若者たちの スニーカーの色合いが 僕に春を告げる

          詩「そびれる」

          詩「ひとつ」

          ひとつじゃない真実 ひとつじゃない正解 巧妙でときに堂々とすり替えられ 同情をかっさらってゆく ひとつじゃない愛のかたち ひとつじゃない涙のかたち 大人になるまで雑踏が落ち着く場所 だなんて信じてなかった