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TCFDとTNFD 気候変動と生物多様性

2024年が明けました。
コロナも落ち着いて穏やかな年明けになると思いきや、能登での地震、羽田空港での大事故と立て続けに大変なことが起こり、辛い年明けになりました。
人為的な事故は別として自然災害は防ぎようがなく、普段忘れがちな「人間は自然の一部」ということを改めて意識しました。
今日のテーマは、メジャー化してきた「TCFD」と、去年から注目急上昇の「TNFD」にしてみようと思います。

まずTCFD(気候変動)
TNFDの前にTCFDの説明を。(ちなみにNがNature、CがClimateです)
TCFDは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD: Task Force on Climate‐related Financial Disclosures)」で、企業のサステナビリティ担当、もしくは社外開示に関連するIRか総務(文書株式)の方はご存知かと思います。
簡単にいえば「気候変動で想定される企業の経営上の影響をわかりやすく説明しろ」ということで、これまで任意の開示だったのが、去年2023年から、プライム上場企業は有報記載が実質義務化され、企業側も本腰を入れざる得なくなりました。

ここで特徴的なのが、この仕組みが、環境団体からでなく金融側(金融安定理事会という国際組織)からスタートしたことです。物理的に気温が上がり続けて農作物や魚がこれまでと同じ場所で取れなくなるとか、制度が移行してCO2を大量に出す化石燃料関連の事業はできなくなるとかで、投融資先の企業の事業が気候変動の影響を受けてシュリンクしてしまう可能性があるなら、金融側も気候変動の影響を投融資の判断に織り込まないとということですね。
逆にいえば、猛暑でも屋外で作業ができるファンのついたベストが売れるとか、気候変動を事業機会として売上を伸ばす企業も出てきます。
どんな企業にも気候変動の影響は多かれ少なかれ必ずあるので、金融側は有報や統合報告書や企業サイトを見てしっかり投資判断するように変化してきました。

そしてTNFD(生物多様性)
ということで気候変動関連のTCFDが大成功したため、このやり方を使って生物多様性の重要性を知らしめて自然資本を回復させようとしてるのがTNFDです。
(しつこいですが、NがNature、CがClimate)
TNFDが成功した点としては、開示ルール(ガバナンス・戦略・リスク・目標とかのお作法がある)や、企業の経営&事業上の統合や、認知の拡大などなど。
特に日本の企業は業界ごとの横並び意識が強いので、これまで全く無関心だった役員が「同業のあそこが対応するならうちもやれ」と言い出すケースも発生しがち。

話がそれましたが、TNFDは「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)」の略称で、「企業の経営上での自然資本の影響をわかりやすく説明しろ」ということです。

TCFDとTNFDを比較してみました。
TNFDは自然資本がテーマなので、生物多様性・森林・水使用の事業影響ということで、地域性にも依存するし、それぞれの項目が関連しあっていて
複雑で分かりにくいです。
その点、TCFDはCO2という統一化されたスケールがあるので集計しやすいし、企業間でも比較しやすいです。それもあってか、課題感としては同じように重要なのに、TCFD(気候変動)の方がTNFD(生物多様性)より早く浸透したのかもしれません。

結論
企業の環境担当者やサステナビリティ担当者にとって、やっと気候変動関連の集計やら開示やらに目途がついたのに、更に生物多様性、しかも分かりにくい!ということで、「はぁ~どこから手を付けたらよいのか」と暗い気持ちになる方もいるかもしれないですね。

で、結論なのですが、TNFDとTCFDは別物でなく、一体化して捉えるべきと思います。
環境課題として双方が関係する部分もありますし、そもそもの目的である「企業経営、事業への影響」について、気候変動と自然資本の観点での別々の開示より、一緒の方が社外の投資家等から理解されやすいのでは。
そして、既に一部の企業でTNFD・TCFDを統合して開示している企業が出始めています。
まだ別々に開示されている企業が多いですが、今後は一体化・統合での開示が増えていくと思います。

残念ながら1本化したとしても、担当者の手間が半分になるということはなさそうなんですがね…

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