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(book)桃を煮るひと

本を読むのは好きですが、久しぶりに「この作家さん、大好き!」という方に出会いました。

桃を煮るひとの著者のくどうれいんさんです。

ふわふわの桃の表紙がかわいい


料理や食材のタイトルが並ぶエッセイ本です。作者のプロフィールを見ると、歳はわたしの1つ下の方でした。同世代の方がこんなに素敵で美味しそうな文章が書けるのかぁ!と読み終わった後にしみじみと感動。

寝る前に読むと、穏やかな気持ちで眠り始められる、そんな雰囲気のエッセイでした。


好きなエピソードはいくつもあったのですが、特にお気に入りのいくつかをご紹介。


キャベツとレタス

キャベツもレタスも食べていないエピソードなんですが、たった数行の文章にクスッとさせられて、あまりの強烈さにそのフレーズがなかなか頭から離れません。これからスーパーでこの二つを見かけると投げてみたくなってしまいそう。

「キャベツとレタスの違いってなに?」と尋ねると、「思い切り投げてよく飛ぶ方がキャベツ」と言う

桃を煮るひと 「キャベツとレタス」

あのファミチキ

ファミチキといえばあのファミチキのエピソードです。れいんさんの大好きだった会社員時代の記憶と結びついているファミチキ。会社を辞めてフリーランスで働きだし、忙しかった会社員時代にはなかった時間の余裕を手に入れてるんだけど、ふとした時に感じる寂しさと孤独感みたいなものが現れているエピソードでした。

私は、忙しければ忙しいほど、「あ〜、もっと余裕のある仕事がしたい。定時には終わって毎日自炊できて平日にも習い事ができるような仕事につきたい!」とか願ってしまうんだけど、基本的には仕事で忙しくしていないと不安になるタイプなので実際にその環境を手に入れたら少し寂しくなると思うんです。

今のわたしの労働と結びついている食べ物もあのファミチキです。真夜中まで残業した時は駅のコンビニで自分へのご褒美として食べてしまいます。そういう時に食べるホットスナックって、すごく特別な味な気がします。「今日もお疲れ様、わたし」という気持ちもセットで記憶されているからでしょうか。

いつかわたしが今の会社を離れて、真夜中の残業から解放された時にも、れいんさんと似たような気持ちになって、駅前のファミマではしばらくチキンが買えないだろうなと思います。

どらやきの女

デパ地下で美しい練り切りを見つけて「さぁ、今日はこれを自分へのご褒美としよう」と店員さんに話しかけたのに、「でも、どらやきがお好きそうですよ」と二度もお勧めされて怒ってしまう、というエピソード。

今でも根に持っているらしく、本人はすごく気を悪くしたのだろうけど、やりとりが面白くクスッとしてしましました。

自分にとって少し背伸びしたものを買うぞ!と店員さんに話しかけるだけでも少し勇気を使うのに、その決意を2度もへし折られたら、そりゃ気分も悪くなるわなぁ〜。感情の動きがすごく分かりやすくて思わず共感していましました。


本当は全部のエピソードをここに書き連ねたくなるくらい、大好きな本になりました。読んでいるとすごく穏やかになるエッセイです。いつでも枕の隣に置いて、眠れない夜のお供にしたいと思います。読んでいると何か食べたくなってしまうのが困りどころですが。


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