見出し画像

note#3 できないことが同じ

ヨシタケシンスケさんのかわいらしくて、ラフで、優しい、ほんわか系のイラストは、一目見た瞬間私の好みにクリーンヒットしました。

ヨシタケさんは絵本作家さんという認識だったので、絵本コーナーではないところでヨシタケさんのイラストを見つけたときは少し驚きました。ヨシタケさんは絵本だけじゃなく、イラストエッセイも出版されているようです。

私が初めて読んだのが『思わず考えちゃう』という本で、ヨシタケさんが日頃メモをするように描かれているスケッチを1つ1つピックアップして、「この絵はこういう時に思いついて描いた」、「この時こんなことを思った」という風に解説が添えられている、スケッチ解説エッセイです。
色付けされていない、本当にザ・スケッチという感じの絵がどれもかわいらしいのはもちろんなんですが、子育て中の1コマ(粉お薬をペットボトルの水で飲ませたら、粉が幾分か水の中に戻ってしまって、スノードームみたいになったとか)であったり、ヨシタケさんの物事の考え方であったりの切り口が面白いのも魅力です。

普通の人なら、一瞬は目を向けるけれどすぐにスルーしてしまうような些細なことを、スケッチとして記録することで、"そんなに深く考えたことなかったけれど確かにわかる!、共感できる!"と人に感じさせることが出来るってすごいなと感じました。

今日取り上げる『結局できずじまい』も、立ち読みですぐヨシタケさんワールドに引き込まれてしまいました。この本はヨシタケさんのできないことをテーマにしたイラストエッセイです。
絶妙に共感できるし、とにかく絵がかわいいです。
しんどかったり、何も考えたくなかったりするときに、精神安定剤になってくれるような癒しパワーをまとっている気がしました。


この本では24コのヨシタケさんの「できずじまい」なことが描かれているのですが、その中で、個人的に特に共感できると思ったものをピックアップしようと思います。



①いまだに"ボウリング"ができません(7~9ページ)

読む前、ボウリングが下手という意味だと思っていたのですが、シューズのサイズがないという話題から話が始まったので、おや?と思いました。
読み進めていくと、多人数でのボウリングを心から楽しめていない様子のヨシタケさんが描かれていました。
サークルの交流会に参加した時の自分と重なって、ちょっとだけしんどくなりました。(笑)

ボウリングに限らずですが、"みんなの注目を集める時"と"平均的な言動"は、すごく相性が悪いと思います。
すっごく出来るか全然出来ないかのどちらかしか求められていないって思ってしまします。盛り上がりが命!みたいな場面では特にだと思うんですが、そういう時は相手のリアクションも気にしてしまうし、自分も自分の結果にどうやって反応するのが正解かわからなくなってしまいます。

たまに、中途半端な結果を鼻で笑ったりとか、「まあ、所詮お前はそんなもんやな」みたいな顔をしてきたりとかする人と出会うんですが、そういう人たちからの視線は本当に耐えられないです。
だからきっと、私もボウリングに複数人で行ったら、ヨシタケさんと同じことを思うだろうなーと想像しながら読んでいました。


②いまだに”パソコンへの心構え”ができません(19~22ページ)

イラストが個人的にとても好きな章です。ということが、どうしても言いたかった。(笑)


③いまだに”献血”ができません(23~26ページ)

ずっと頷きながら読み進めていました。献血や注射、点滴などの言葉を聞くだけで体から力が抜けそうになります。
なので正直ここの、血液検査を受けるヨシタケさんのイラストも、まるで自分が注射針を刺されているような気分になって、「あわわわ~」と力が抜けそうになったんですが、その中で一番深く共感したのが26ページのイラストです。
注射の後の綿を永遠に抑えたくなってしまいます。自分でもよくわからないけれど、"はずすとバイキン入っちゃうんじゃ…"とか、"腫れてきたらどうしよう…"とか、とにかく怖いことを考えてはずせないんです。
ひたすら注射されたところを気にかけ続けるから、注射した日は他のことを考えられないです。
ずーっと"注射針刺された…"が頭から離れず、一日中まさに26ページのヨシタケさんと同じ様子で過ごします。


④いまだに”自発的な行動”ができません(30~34ページ)

24コのできずじまいの中で、一番共感したのがこれです。これを読んで、一気にヨシタケさんに対して親近感が湧いてしまいました。

「自分から外部に対して行動はしない、でも自分だけでできることはきちんとやっておくし、頼まれたらやるぞ」ということを表す例えがものすごく自分の中で腑に落ちました。32ページから33ページのところです。
私も今までそういう生き方をしてきて、直さないとと思っても、そう簡単に内向的な面を変えることはできないから、結局今もピッチャーやバッターが来るのを砂漠で待つクセが抜けません。
なので、将来への不安がかなり強かったのですが、自分と同じような感覚を持つ方が社会で活躍されているのを見て、少し気が軽くなったように思いました。


⑤いまだに"みんなでテレビ鑑賞"ができません(41~44ページ)

このページを読んだとき、なんでこの感覚をわかってくれるんだろうと感動してしまいました。
私も年齢が上がるにつれてみんなでテレビを見るのが苦手になっていきました。「この場面を見てみんなはどう思ったんだろう」とか、「この芸人さん面白いなぁ…、あれっ、みんなは笑ってない…?」とか、テレビの内容よりも家族の反応や様子に頭がフォーカスしてしまって、テレビを楽しめないんです。
意外とこういった方って多いんですかね?
あと、44ページのヨシタケさんのイラストのちょこんと座りがかわいらしくて好きです。


⑥いまだに"無関心のフリ"ができません(45~48ページ)

これもものすごくわかります。最近は、相手と視線が合うのが怖いという感情が勝って、クセは抜けましたが、以前はよくやってしまっていました。
店員さんが商品を袋に入れていく様子とか、人がたこ焼きを焼いている様子とか、清掃員さんが掃除しているところとか、飽きずにずっと見てしまっていました。相手が人ではなかったら今でもじっと見てしまうことはたまにあります。
何が面白いのかと問われても答えようのないほぼ無意識の領域で、じっと見センサーが働いてしまいます。

46ページの歯医者さんでの1コマのイラストがお気に入りです。


⑦いまだに"くつ屋を信用"できません(70~71ページ)

メンズ用のくつでピッタリっていうときがたまにあります。
サイズでではなくて、デザインで自由に靴を選ぶ権利が欲しいです。


⑧いまだに"解決への努力"ができません(90~93ページ)

プロローグ的な章です。
93ページの「お互いのできないことを許し合い、助け合う」という言葉は、すごく大切にしたいなと思いました。
人ができない様子を見ると「なんでそんなことが出来ないんだ!」と責めたくなる時もあるけれど、人によって得意なこと、不得意なことは異なっているから、責めるんじゃなくて認めることが必要ですよね。

人はみんな人だけれど、それ以外は違いがあって当然だから、その違いを仮に理解できなかったとしても、許すことは疑いなく、していきたいなと思いました。


〇全体の感想

やっぱりイラストがすごくかわいらしい!
何回も読んで、くすっと笑ったり、わかる…!とうなずいたり、したくなる本でした。
たまに出てくる例えも絶妙で面白かったのでお気に入りポイントです。


☆今回取り上げた本

著者:ヨシタケシンスケ
タイトル:結局できずじまい
出版年:2023
出版地:東京都
出版社:講談社


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?