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卵巣がん備忘録(4)「出ました?」

卵巣がん&子宮体がんを患い、人生初の入院・手術になった53歳の秋。
無事に両方の卵巣と子宮の摘出手術を終えて病棟に戻った。
ここからは、とにかくできるだけ歩く、動く。
朝昼夜と内服の痛み止めが処方されたのだが、これが・・・まさかのアセトアミノフェン。
えーと、私結構な開腹手術をしたはずなんですが・・・、痛み止めってコレなん!? 劇的に痛みがなくなるような薬じゃないんだ!? とビックリしたっけ。
そして手術翌日から朝となく昼となく夜となく、ドクターやナースにやたら訊かれたことがある。
「ガス出ました?」
ガス・・・そう「屁」のことである。
開腹手術をしたので、腸がちゃんと動いているかどうかを確認するために放屁は必要不可欠らしい。
ある意味、術後最大のミッションともいえる。

術後最大のミッションをクリアすべく!

そこで、少しでも腸を動かすためにキズが痛いなりに歩いてみたのだが、手術翌日は出ず。
出そうなんだけどキズが痛いため、怖くて腹に力が入らないってのもあった。
しっかり縫合してあるんだから屁くらいじゃどうこうなるわけない、とアタマではわかっていてもやっぱりカラダは怖がっているのだろう。
結局この日はガスが出ないので、夕食ナシ。

入院5日目・術後2日目。
寝ている間じゅうお腹はグルグルと鳴っている。
朝、ナースが聴診器でお腹の音を聞いてくれた。「メッチャ動いてますね~もうちょっとですかね~」
しかし、いくらメッチャ動いていても屁が出ないことにはどうにもならない。
その後、女性のドクターが病室に来て第一声が
「ままさきさん! オナラ出ました?」←女医だからストレート(笑)。
「・・・出ません」
「じゃあ今日も朝昼食事はナシですね!」
がーん。

少しでも早く放屁ミッションを終わらせようと、この日は痛み止めを飲んで午前中病棟をぐるぐると8周歩き、午後も5周ほどしてみる。しかし・・・出ない。
ナースが「白湯を飲むといいかもしれませんよ」と給湯室を教えてくれたので、コップにお湯を入れてちびちび飲んでみたが・・・出ない。
「お腹あっためてみましょう」と湯たんぽも持ってきてくれたので、湯たんぽを腹に抱えながら横になってみたが・・・出ない。

結局、屁が出ないまま夕方。
処置室でドクターがドレーンを入れていた部分のガーゼを交換してくれた。
術後のキズはキレイだそうだが、今のワタシにとって大切なのはそこではない。
「先生、ガスがまだ出ません・・・」と力なく言うと、
「まあ気長に待ちましょう」と明るく返されてしまった。
「お腹は空いてるんですよ~」と訴えてみるも「ガスが出れば流動食からスタートするからね」とあっさり。
というわけで夕食もナシ。

しかしだ。
これまでの人生で、こんなにも「屁」のことばかり考えたことがあっただろうか。
こんなにも屁が出ることを心待ちにすることなぞあっただろうか。
常に下腹と肛門に意識を集中しているのだが、どーにもこーにも出ない。
何でもない時は気軽にブッブカブッブカ出るくせに、こういう時に出ないとは、人間のカラダってのは不思議でワガママなものである。

落胆したまま部屋に戻り、chromebookでドラマを観始める。
そうこうしていると、夜6時頃・・・同室のみなさんが夕食を食べているタイミングでトイレに。
座って神経を集中していたら・・・、
控えめながらも・・・出た!!!!
これだけ待ちわびたのだから、どうせならもっと盛大に出てほしかったが・・・なんとも中途半端な放屁であった。
やっと「出ました!」とナースに報告ができた。
苦労したが何とか放屁ミッションもクリア!

それにしてもだ。
思えば10月から、婦人科の診察台での内診を何度も行い、大腸カメラ、注腸造影、そして浣腸、尿道カテーテル・・・と、
人にシモを見られる機会があまりにも多かったせいか、なんか慣れてしまって、屁くらいじゃ恥ずかしいとも思わなくなってきた自分がいる。

人生初の流動食

入院6日目・術後3日目。
夜中じゅう、お腹がグルグル鳴って落ち着かない。そして待ちに待った朝食がやっと来た。

これが流動食というものか・・・。
手術前日の夜から10食ぶりにモノを口に入れる。が、全部が液体なので「食べた」感は無い。
でも栄養は摂らねばならないので全部いただきました。
3日間、水とお茶しか口にしていないので、味噌汁(具はナシ)なんて強烈にしょっぱく感じた。

食後2時間後に血糖測定。いきなりの206でインスリン2単位注射。そのほかに血栓予防の注射も打たれた。

この日もせっせと病棟を歩く。Spotifyに入れた音楽を聴きながら優雅な病棟散歩である。
まだ腹が全体的に重痛い感じで、キズの下に何か溜まってるような違和感がある。
午後にドクターが来て、傷を覆っているテープを取ってくれた。
「へえ、もう取っちゃって大丈夫なんですね」
「このテープは3日つけておくのが基本だから、あとは石鹸で洗って清潔にしておけば大丈夫」とのこと。
すごいな。ハラ切ってからまだ3日だよ!?
さらに今日からシャワーOKだそうだ。ナースいわく、あと3日もすれば痛みもなくなってくるそうで。人間のカラダってすごいわ。

ハラの傷とご対面!

お昼(まだ流動食)を摂った後、早速シャワーへ。4日ぶりの風呂!
キズはボディソープを泡立てて手で優しく洗い、直接シャワーを当てないように洗い流す。
洗い流した後、鏡でハラのキズを見てみることに。正面から見るのは初めてである。

ワタシも一応女だから多少はショックを受けたりするのだろうか・・・と思いつつ、恐る恐る直視。
ヘソの下からまっすぐに線が伸びていて、改めて見ると結構なキズだ。
しかしショックを受けるどころか、すぐに見慣れてしまった。
こんな御大層なキズなのに3日後にシャワーに入れるなんてすごいなあ。
もちろんお湯がしみるなんてこともなく、全身洗ってさっぱりすっきり♪

さっぱりしたので、病棟を5周ほど歩く。夕食もまだ流動食。やたらとジュースやゼリーやヨーグルトがつくので、なんか毎食がおやつみたい。

入院7日目・術後4日目。
この日の朝から三分粥となる。三分粥ってほぼ重湯みたいな感じ・・・。
相変わらず胃と腸は一日中グルグルグルグル鳴っている。
この日は病棟10周歩く。
まだ術後4日目だというのに、早くも暇。
午後はchromebookでYouTube観たりドラマを観たりして過ごす。
家にいる時は、何だかんだでやることがあるため腰を据えてドラマを観ることができない。
今回はせっかくの機会なので観たいものは観よう! と意気込んでいたのだが・・・、
そうそう何時間も何本も観続けられるものでもないことがわかった。これも歳ですかね。

今回私は6人部屋だったのだが、入院してから患者がくるくる変わる。
みなさん腹腔鏡手術らしく、4~5日で退院の人が多い。
退院するとすぐに次の患者さんが入ってくる。
なんだか「いつまでも給食食べ終わらない人」みたいな取り残され感を感じる7日目の夜・・・。

※個人の体験であり、個人的な感想を書いています。診察・治療などについてはワタシの記憶で書いてあるので正確ではない部分もあります。あくまでも『ワタシの場合は』の話で、すべての人にあてはまるわけではありませんのでご了承の上読んでくださいね。

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