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大人ってこうじゃなかったって、たぶんあのころの大人も思ってた

もう二度と好きな曲を他人に教えないし公共交通機関の中でお喋りもしない。

沈んでしまうと起き上がれなくなること、身をもって知ってしまっているから自分の中にある燻りをずっと無かったことにしている。

私はまだつまらないことで大袈裟に笑うし人の恋愛話に興味があるフリもする。乗り換えに間に合うように走ったり、他人のことなんて知らないというふうに街を歩いたりもする。好きなアーティストのライブに当選してまだ日にちはあるのにその日着ていく服を考えたり、旅の思い出をインスタのアーカイブにのせたりもする。健全。
手首に傷もないくせに、親にしめられた首はある。流す涙はないくせにやたらと傷ついていくだけの心はある。何にもなりたくないくせに何かをなしとげたいと思ってもいる。不健全。

他人と仲良くなるのに1番手っ取り早いのは共犯になることだと思う。同時に仲を保っていくのに必要なのは気遣いの程度が同じであること。あと時間の価値が同じかどうか。

砂浜で押された背中が乾いていく頃にはすっかり日は落ちていた。赤すぎる空にここがこの世であるのか一瞬の錯覚。忘れていた課題をふと思い出す。私たちの夜は天頂からやってくる。星が真上から散りばめられて段々と水平線が暗く滲む。世界なんて早く終わればいいと思っているくせにいざ終わるとなったら焦るんだろうなと宛名のない呟き。小学生の頃授業で育ててたミニトマトの苗ってどうなったんだっけ。ほらみんな終わり際なんて興味無いじゃん。悲しくもなんともないよ、こんなに綺麗な世界で1番要らないのはにんげん。大人ってこうじゃなかったって、たぶんあのころの大人も思ってた。ともだちを数える指先。考えてるフリして打った相槌の行方はどこだろう。ヒーローに遅れてやってこられても困るよ仕事はしっかりしてね。声を震わせるのも歌声に涙を混ぜるのも簡単でしょ、簡単に出来ちゃうでしょ。雨好き?

苦しんでいる人の傘になったとてその人に根付いた苦痛を引っこ抜けるわけじゃなかった。むしろ空さえ閉ざしてしまった。

先生にも分からないことはあるよ責めないであげて。でも私にもわからないことはあるけど責めてもいいよ。みんな疲れちゃったもんね。

私が友達に愚痴を話さないのは諦めているからです。解決も相槌も共感も理解も助言も信頼も。人は裏切るよ時が来れば。誰のことも信じないのが最大の保身であり最大の欺瞞です。

全部わたしのことです。でもここに書いてるのは全部フィクションです。


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