tanka

高校生から去年までのもの。たまっていたのを見つけたのでここに供養します。


夢をみた 湖畔に佇む人間を見つめて沈む魚のせぼね

差し込んだ光の束で目を覚ます 世界は私のことを知らない

あたたかな風が前髪を撫でてってとても惨めな私だけ春

あの魚溺れて死んだよ かなしいね 人間も息が出来ないとしぬのよ

喉元を熱いコーヒーが過ぎていく 熱を思い出せお前は無傷

温めたカレーライスを頬張って転がっていた乾電池も食む

明日からまた日常が始まって本も読めない電池も買えない

満員とまではいかない 人々の生活が少し重なった箱

小学生の時に貰った花丸に見立てて玄関に置いたガーベラ

泣かないで私は無傷かさぶたも引っかき傷も見えないなら無い

限りある10本の指で限りある1本の首をよぉく握るよ

水道水呷って生きる音楽もちゃんと聴こえるまだ生きている

あたたかい湯船に浸かる 魚なら死んじゃうね私ひとでよかった

明日死ぬならこの春のこと好きになる私のことも許しちゃうのに

あたたかいふとんのなかでまるまって こわかったよねつらかったよね

し、と打つと3つ目の予測変換に自殺がでてきてその次が自我

あの人が私に授けた教育が命を世界に引き止めている

傷ついた心を両手で包み込み額にあてる温めてやる

この部屋に散らばった心だったもの かき集めて抱くこの腕で抱く

死にたいと思ってるくせに生きようとしている体吐き出した水

本当はつらい 嘘です 本当は悲しい 嘘です たのしいしあわせ

首吊りと飛び降りどっちが楽だろうまずは出てきた数字から殺す

「生ぬるい人生のくせに」「ぬるくても蛙が死んだのお前がころした!」

ひとつだけ傷つく音がきこえたらさらに刻んで五線譜にする

真っ直ぐな黒檀の長髪確かめてゆっくりなでるなんでもできる

人間の犯した罪をひとつずつ数えるように畳の目食む

分割でお願いします 数ヶ月命が続いている前提で

小さくてかわいいあの子 大きくてつよいあいつ 中程でかわいくもつよくもない私 しね

しねばいいとか言った暁にお前の首を撫で付けるかぜ

紺色の空の隙間から睨まれる 半月の目いたたまれない

少しずつすり減っていく心の臓 髪をひと房与えてください

海にでも無人駅でも星にでも自殺名所でもついて行きます

人間の心の柔らかいところ かにで言うとそう味噌のところに

人間の生活をよりよくするための人間のための人間の法

眠れずに背中丸めて親指の第1関節ちぎって食べる

指先にでさえ死んだ細胞があるというのに私ときたら

ふわふわの綿菓子食べてふわふわの味がするってふわふわの夢

くるしいもかなしいもすべておくすりでかいしょうできたらそれでよかった

次に会う約束をして手を振って振り返らずにそのままで行け

脳内をアルコールのねつ巡りゆきどうせお前も私も生きる

あかねさす空を見ながら傾けたグラス垂れてるひとつぶの泪

伸びるつめ黒の部分が目立つ髪生きてることを自覚していく

胃の中でぐるぐる踊る今日たべた食べ物すべて手を取り合って

目のふちで涙が留まっているから泣ける理由を探してめくる

たまきはる鏡に映った顔が白くてきもくて水を煽る吐き出す

底冷えの夜、過去を省みる夜、酩酊酩酊、酒をちょうだい

これ以上誰かを失うということに耐えきれないから私が消えます

平穏であれと願っているばかり 友達の愚痴の通知を飛ばす

暗くなる空にカラスが飛翔して飛べない私は石ころを蹴る

どこ見ても何を聞いてもあけすけな悪意ばかりだこれが日本か

瞼閉じイヤホンさして懐かしい歌が懐かしすぎて泣けます

冷えきった指先擦ると手の中に あの日抱えたハムスターのねつ

あと何回この肩を撫でられるだろう 変わらぬものなどないと街灯

夢に見た知らない人が気にかかり 以前どの夢で会いましたっけ

朝焼けのような夕焼け身にしみてお前と今生生きてたかった

ぽぽぽぽと並ぶ中央分離帯 心臓の壁 空目して業

同じ今を生きてないくせ願いだけ乗せて瞬くな星屑どもめ

海街の夜景が水面に照りつけて竜宮城からクレーム5件


まんまるのはずだったのよ私たち外の空気が悪かったのよ

13時21分私って何してたんだろ笑ってたのかな

信号の赤が点滅する中でお前があれは水色だという

海中のプランクトンに希う 生きてくれてるだけでよかった

潮が満ち眼下の漣の狭間 死が揺らめいてそのまま沈む

おいそこの帽子の男、撮ってはいけない海は墓場だ

ねえかえろう、みんながあなたを待ってるの いつになったら廻ってくるの

交番の前を通る時常人のフリをしているなにもないのに

海霧が海と空を一つにしこの世とあの世をつなげている航路

お空にも海の中にも帰れない 匣に入れられ決定を待つ

あの人が好きだったリンゴ100パーのジュースが下のまぶたに染みる

「あの夜」になる予定であるこの夜を有意義にするための法律

水平線のあいだに指先突っ込んで開くとそこには神の御座す間

イヤホンの音の切れ間から流れ込む母の呼ぶ声に現実がある

眼焼くヘッドライトが心臓のほつれにかかってお前がいない

戦士にも魔法使いにも僧侶にもなれぬ私が撃つモンスター

死にたいと思いながら聴く音楽はどうだ、お前だお前に聴いてる

カタカナ語を平仮名でわざと書くようなあざとい素振りラメ入りシャドウ

メルマガの解除方法もわからない明日も早いのにまだ起きてるの?

逆剥けを前歯でちぎって浅い夜布団さえ私を拒絶するよう

もうやだと何回思えば私たち大人になれるの記述問題

春さえも夏も秋も冬さえも私をころす黙れよ世界

水槽が溢れてそれでもなお水を注ぎ続けるような二酸化炭素

目を閉じてイヤホンさしてゆっくりな音楽聴いている時だけ充分な呼吸できた気がした

ハッシュタグアーカイブとは緩やかな自殺のようだね投稿10件

逆剥けを前歯でちぎって浅い朝 お母さん、私大学辞めたい

スケジュール帳をバイトで埋め込んでこれからも私生きなきゃいけない

正しくあれと言い聞かせ歩く夜 クリープハイプが目にしみる夜

まだ私飛び込まないで済んでいるプラットホームに宙吊りのまま

釣り針の先に襟首かけられて眼下に線路守られている


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