成人式なくなっちゃったけど私それでも大人になれるらしいよ

まるで膜の中にいるような。それは守られているのではなく包み込まれているのでもなく隔絶を意味するのだけど、あなたにその意味がわかりますか？

髪の毛先まで爪の先まで頭の隅まで綺麗に綺麗にありのままで、個性とか求めるくせに協調性ばかり強いてきて上手く馴染めなかったらあぶれてしまうねみんなそうじゃないの？私にはわからないことばかりあるけど、みんな全てをわかっているの？こんなこと言いたいわけじゃないよごめんね。

温かいコーヒーとか、体に巻きつけた毛布とか、少し固くなったぬいぐるみとか、パンを焼く工程とか、悲しいと思った時にそれを隠す表情の作り方とか、毎日握っていたのに今では触りもしなくなったあのシャープペンシルとか、マフラーを巻きあったこととか、寒いねって言いながら歩いた夜の帰り道とか、朝の光だけで目が覚めることとか、親が作ったご飯とか、あたらしいふくを着る高揚感とか、そんなものだけでいいのに。そんなものだけでよかったのに。本当はお金も地位も世間体も資格も点数もいらないんだよってなんで誰も教えてくれなかったの。あの頃あの場所のちゃちなイルミネーションが今まで見てきたイルミネーションの中でいちばん綺麗だって言い張れるよ私。

伸ばしている爪は綺麗なネイルをするため。伸ばしている髪は振袖を着た時にそれに合わせて結えるように。成人式なくなっちゃったけど私それでも大人になれるらしいよ、私の友達も友達だった人も顔見知りの人も初恋の人もみんな大人になるんだって、さ。みんなみんな大人になるんだって。私はずっと過去に囚われてばかりで前を向けても3秒後には落ち込んでいるのに、料理なんて全くできないくせにそれ以外の家事だけ上手くなっていって、今親が死んだら私この味もう食べれないんだとか思って切なくなったりするのに、就職だってできる気がしないのに、私だけが置いていかれているような被害者ヅラばかりして悲壮に浸ってるのに、わたし、大人になるらしいよ。

将来の夢たくさんあった。宇宙飛行士にも花屋にも保育士にも先生にも看護師にも本屋にもパティシエにもなりたかった。結局どれにも私はなれない。こんな姿、幼い頃の私には見せられない。宇宙飛行士の募集が今年久々にあるって聞いて思い出しただけ。タイミングがないと思い出さないほどにはなってしまったよ。

おやすみなさい。