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「なんでそんな元気なの?」ステージⅣのがんになった私が元気に過ごせている理由

Instagramを通じてステージⅣのがんを患ったことを発信したことで、たくさんのメッセージをいただきました。

最初は単純に、がんって2人に1人かかる病気だと言われるくらいだから、きっとどこかの誰かが私と同じように不安な気持ちでいるに違いない。もしかしたら、そのどこかの誰かの検索にひっかかって、いつか「あ!同じような人いた!私も頑張ろう!」って思ってもらえるかも…なんていうただの思いつきで、入院中にかなりゆる〜っと書き始めたこのnoteも、Instagramの発信をきっかけにたくさんの方々の目に触れることになりました。

その結果、誰かを元気づけるよりも、私の方がたくさんの人に多くから勇気や元気、優しさ、温かさ…もうなんて言ったらいいかわからないくらいの想いをたくさんいただくことになってしまいました。

本当に多くの人の優しさに触れ、こんなにも世の中の人は温かいのかと毎度毎度心を大きく動かされる毎日を過ごしています。


そんな中、先日こんなDMをいただきました。
「私もがんを宣告されましたが、なぜそんなに元気なのですか?」と。

DMにはその時に私が答えられる精一杯を返信しましたが、やっぱりDMでは伝えきれないこともたくさんあるし、状況もわからないので適当なことも言えない…ということもあり、この機にちょっとこの質問に対する私なりの回答を書いてみようと思います。

がんの闘病生活は、ずっと苦しくて辛いという誤解

初めに、がん治療における闘病生活のイメージって意外と違ってるかもよ?というお話をしたいと思います。

がんは、生涯を通して2人に1人はかかるくらい身近な病気と言われていますが、身近にがんになった人がいなければ実際の闘病生活を知る機会は当然ありませんよね。でもなぜか、「がんの闘病生活ってすごく苦しい」というイメージを多くの人が持ってしまっているのではないかと思うのです。

がん患者と言えば、抗がん剤の副作用で毎日痛かったり苦しかったり吐き気がしたりしていて、日常の多くをベッドの上で過ごし、髪は抜けてニット帽をかぶっていて、顔は青白く体は痩せている…

そんなイメージを持っている人も少なくないのではないかと思うのですが、決して全ての人がそういう状態ではないということを私は身をもって知りました。

もちろん、それくらい辛い闘病生活を送っている人がいるのも事実でしょうし、全ての人の状況を知っているわけではないので、このことについて多くを語るつもりはありませんが、少なくとも私が知っているがん患者の多くは副作用の個人差はもちろんあるもののずっと寝たきりの状態…というわけではありません。

「がんの闘病生活はずっと辛くて苦しい…」というように、私たちが勝手に幼い頃から描いてしまっていたイメージは、その後何十年も変わっていないかもしれませんが、この10年でも医療は飛躍的に進歩しているので、イメージだけが昔のまま置いてけぼり状態になっている可能性が十分にあるということを、ぜひ知っておいていただけたらと思います。

がんになってからの私の日常生活

じゃぁ、どんな生活を送っているのか?ということを少し書き記したいと思いますが、本当に人によって治療に使う薬もかかる時間も副作用の状況も全く違うので、決してこれが「がん患者の生活の標準」だというようなイメージを持たず、あくまで一個人の一例であることをご理解いただいた上で読み進めていただけたらと思います。

私の場合、まず2週間入院をして必要な手術を済ませた後に抗がん剤治療を開始しましたが、退院後は、2週に一度通院して抗がん剤治療を受けています。

とてもありがたいことに、今のところ抗がん剤の副作用は薬でしっかり抑えられているようで、抗がん剤を打ったその日(1日目)は、終日病院で過ごし、その後3日目まではまだ抗がん剤を打っている(※)ので、自宅でぐったりというかゆったりというか、あまり動かずに過ごすことが多いのですが、4日目からは徐々に回復して、後半の1週間くらいはほぼ副作用に悩まされることなく日常生活を送れていたりします。

※私が打っている抗がん剤の一つは、48時間かけて体に入れていくもので、手術でCVポートというカテーテルを体に埋め込むことによって、そこに針を刺した状態のまま抗がん剤のボトルをぶら下げて持ち帰ります。
ボトルの中の薬がなくなるまで常にそのボトルをぶら下げたまま自宅で過ごし、終わったら自分で針を抜いて投与終了となります。

…という記事を書いている途中で、約10日ほど体調が優れずそのうち半分は高熱に見舞われて寝込むという状態(これも副作用の一つ)に陥りましたが、こういうイレギュラーなことがありつつも、元気な時は基本的に毎日外に出掛けて体力作りのためのウォーキングやサイクリングを楽しんだり、家族で可能な範囲で出掛けたりするなんてことが出来ています。

今は、支持療法と言って、できるだけがんの症状や副作用を抑えて症状を軽くするようなケアをしっかりしてもらえるので、今くらいに副作用が抑えられていれば、今後は治療を継続しながら(コロナが落ち着いてきたら)旅行などに行くこともできますし、健常者と変わらない楽しみもしっかり味わうことができるのです。

私が元気でいられる理由1:生かしてもらった命だから

そんな私の現状の生活を少し知っていただいた上で、ようやく本題について触れていきたいと思います。

こうして元気でいられる一番の理由は、やっぱり多くの人に生かしてもらった命だということを心底実感したからだと思います。

夫は私の治療のために、ここには書ききれないくらい全力で私をサポートしてくれていますし、親たちは入院中や退院後、家事や育児に力を貸してくれました。
夫の仕事関係の人たちの多くは、私たちの生活が仕事で圧迫されないように配慮してくださっただけではなく、私たちが安心して日常生活を送れるような多くのサポートをしてくださいました。

そして、治療にあたってくれる病院の先生やその他のスタッフの方々は私の命をつなぐための処置を施してくれています。

こうして多くの人たちが、がんになった私を案じて何かできることはないかと力を貸してくれていることを、がんが発覚したその日から、毎日毎日じんわりじんわりと感じるのです。

そんなたくさんの人の優しさに触れて、「人はやっぱり一人では生きられないんだなぁ… こうして人は人に生かされているんだなぁ…」ということが心で理解できるようになった時、私は「生きなきゃ。せっかくなら楽しみながら生きなきゃ。」と思えるようになったのです。

私が元気でいられる理由2:自分の命の大切さに気付いたから

がんを宣告された直後は、今では考えられないほどメンタルは弱っていました。

どうやったら長く生きられるのか…ということを考える前に、いつまでなら生きられるんだろう…というマイナスな考えで頭がいっぱいで、たった一ヶ月後の未来を想像することすら出来なくなっていました。

ただただ未来を考えることも怖くて悪い想像をしては涙を流す毎日でしたが、一つ目に書いたように、多くの人に生かされていることを実感するようなったことで「きっと長く生きられる」と少しずつ信じられるようになってきた頃、自分の命の価値をちゃんと理解すべきだということに気が付いたのです。

私にとって夫や娘はかけがえのない存在であるように、良い妻であるとか良い母であるとかということは別にして、夫や娘にとっても私は唯一無二の存在であることに違いありません。

だから、ついついメンタルが弱っていると考えがちな「私がいない方が…」なんてことも絶対になければ、「私がいてもいなくても同じ…」なんてことは決してなくて、ちゃんと生きなくてはいけないと心の底から思えるようになったのです。

私の人生は私にしか生きられないし、夫のためにも娘のためにもやっぱり私は生きなきゃいけないし、私の命は私が一番大事にしなきゃいけないんだと…。

私が元気でいられる理由3:夫と娘と一緒に生きたいから

人に生かされた命をちゃんと大切にしようと思えるようになった私は、次にやっぱり夫と娘とまだまだ一緒にいたいと強く思うようになりました。

結婚してからストレスフリーな生活を送ってこれたのは紛れもなく夫のおかげですが、私にとっては夫と娘と過ごす毎日があまりにも幸せすぎたのです。

だからこれまで通り幸せな人生をこの先も歩み続けたいと強く願いました。

がんになって、一度はメンタルが大きく凹んで明るい未来が想像できなくなっていましたが、やっぱり私の願いはたった一つで、家族三人でいたいということでした。

夫にはもうすでに散々な想いをさせているのですが、出来れば夫にはこれ以上悲しい想いをさせたくないし、できるだけ笑っていてほしい。もちろん娘にも明るく生きてもらいたい、そしてそんな夫と娘とずっとこの先も一緒に居たいと思えば思うほど、自分がどういう生き方をすればいいのかの答えは一つです。

私が笑って前向きに生きること。

そう思うと自然と元気が湧いてくるから不思議なものです。誰とどんな人生を送りたいのか…?これを常に頭においておくことは、生きていく上でとても重要なことなのかもしれません。

私が元気でいられる理由4:理想的な生活を送っているから

こう言ってしまうと少し誤解を生んでしまいそうですが、がんになったことで良いこともたくさんありました。

例えば、育児をしながらあまり完璧を目指さずゆるっと生活をしていると、ついつい自分たちの健康に気を配ることが蔑ろになり、栄養バランスを考えない食生活になっていたり、運動することを怠り体力はどんどん落ちる一方だったり…

そんな私たちも、私ががんになったことで食事を根本的に見直し、身体にいいものを積極的に取り入れたり、体力をつけるためにちゃんと運動をし始めたりと、健康にものすごく気を遣うようになりました。

具体的にどんなことをしたのかはまた別の記事で書こうと思いますが、できるだけ身体にいい食材を選んで、ちゃんと食事に時間をかけて楽しみ、体力作りもしっかりやっている…という理想的な生活が、今はできているのです。

そのことによって、身体が整い、メンタルバランスが整い、元気でいられるのだと思います。

私が元気でいられる理由5:夫という最高のパートナーがいるから

他にも具体的なことを挙げ出すとたくさんありますが、結局のところ、私が元気でいる一番の理由は一緒に生きてくれる最高のパートナーがついているからということになると思います。

私の夫がいかに素晴らしいか!みたいなことをここでは書くつもりはないのですが、少なくとも私にとっては素晴らしく頼れる存在であり、命の恩人です。

私のがんがわかった時、もちろん夫も相当なショックを受けていましたし、私には言えない色々な感情を押し殺しながら過ごした時間はとても多かったに違いありません。

それでも、がんが発覚してからずっと、きっと本人の方が辛いだろうと私を「支える」ことに専念してくれました。入院中は面会できないこともあって会えないし話せないのはお互いのメンタルにとって良くないと、高いお金を払って個室を選び、毎日夜になったら電話でプラスの情報を私に提供し続けてくれましたし、弱音を吐こうものならただただ頷きながらいくらでも話を聞いてくれました。

退院後は、基本的にはキッチンには立たないと決めていた夫が「(我が家の)シェフになる!」と料理をするようになり、治療には体力がとても大切だからと無理矢理にでも外に出る時間を作っては外にでて身体を動かすことを促してくれます。

こんな風に、私の治療が継続して行えるよう常に情報収集は欠かさず、完璧なまでのマネジメントしてくれています。

ついつい夫に頼りすぎてしまっていることは否めませんが、夫が側にいるかぎり、私は生きていける!と、信じることができるのです。


がんという病気は確かに怖い病気です。ひとたびがんになってしまえば、ついつい人の辛い闘病期や悲しいエピソードばかりが目に入りがちですが、医療の進歩によって、完治したり寛解したりする人もどんどん増えています。

がんになってショックを受けた状態で5年生存率が50%程度だと言われると、ついついダメな方の50%に自分が入ることばかりを恐れてしまいがちですが、心が前向きになると自分は生きられる方の50%にきっと入る!と心から信じることができるようになります。

私も精神状態が整わないうちは、明るい未来が一切想像出来なくなり、良からぬ想像をしては涙を流す毎日でしたが、今はもう娘が20歳を迎えるまでの人生も、夫と優雅に二人で楽しむ余生も想像できるようになりました。

そんな私は、夫と娘と一緒にこれからも長く生きていくことを宣言して、この記事を終わります。

最後に、いつも応援してくれるたくさんの人たちに心からの感謝を込めて。

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日常生活を取り戻すため4月5月の更新ができていませんが、2021年3月にがん宣告を受けてから最初の治療に入るまでの状況、宣告を受けた時の感情、入院するまでの流れ、手術のこと、入院中のこと、入院中のマインドをどう保ったのか、その間の子育てはどうしたのかなどなど…0歳児の娘を持つ私たち家族の体験談を書いていきます。

子育てしながら、大腸がん(肝臓・リンパ節への転移)ステージⅣ-bの闘病をしています。そんな私と私の家族の体験談を書いています。

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