【映画】今さらのパラサイトレビュー

今日は2か月以上前に観たあの映画のレビューです。
※ネタバレを含みます※

概要

作品名 パラサイト 半地下の家族
監督  ポン・ジュノ
出演  ソン・ガンホほか
公開  2020年(日本)

半地下の家に住む貧しい一家が、裕福な一家に"パラサイト=寄生"する物語です。
パルムドール、アカデミー賞総ナメの超有名作品です。昨年パルムドールを受賞したと知り、ぜひ見てみたいなと思っていました。日本での公開後にアカデミー賞も受賞し、一気に人気が出ました。

初の韓国映画

 私はこれまであまり韓国のカルチャーに関心がなかったので、これが初めての韓国映画でした。何しろいまだに韓国=冬のソナタの印象でしたので、かなりアップデートされました!

韓国を知る

 そもそも半地下って何?と思っていたのですが、もともと防空壕だったところを住居に改装して住めるようにしたものだそうです。ソウルへの人口集中により地下が上昇し、低所得者は普通の家でなく、こうした半地下の家に住む人も多いのだそうです。キム一家が半地下で過ごすシーンはちょくちょく登場しますが、路面に撒かれた薬剤が家に入ってくる等、ちょっとしたエピソードからも住環境の貧しさが伺えました。
 
 他にも、熾烈な受験競争や格差社会を匂わせる登場人物の台詞等が散りばめられており、映画1本見るだけでも、その国のことが少しわかるんだなぁと思いました。

見終わって

 いやぁおもしろい!1本とられた!という印象です。

 扱っているテーマは格差社会というヘビーなもので、そのまま見せると観客の中には疲れてしまう人もいそうです。それを、テンポの良さやコメディ的要素で覆って、エンタメとしての要素を打ち出しながら仕上げています。題材の重さをすごくいいバランス加減で調理しているな、と素人にもよくわかりました。
 また、途中でちょっとした驚きの展開があり、宣伝では全く触れられていなかった人たちの登場により、さらにストーリーに引き込まれる感じがしました。

格差社会について思うこと

 途中まではコメディ的に話が進んでいき、うまく「パラサイト」するキム一家を面白く見ていられました。が、終盤一気に重い展開になり、最終的に事件が起こってしまいます。この映画を見て、格差社会の重要な問題点を1つ、突き付けられた気がしました。

 格差社会は格差が固定されて安定しているように見えるんだけど、実際はむしろリスクを抱えた不安定な社会ではないか、ということです。

 貧しいキム一家と裕福なパク一家は、格差社会の韓国において、経済的な意味で住む世界が違います。けれども同時代に生きているのは確かで、住む世界が違うと言いつつも、違う階層の者どうしが全く交わらないということはありません。

 階級が固定されており、普段は見えない格差が、時たま訪れる異なる層との交わりで表出します。それは格差社会で割を食う者にとって、決して気分のいいことではありません。その格差の実感がじっくりと、格差社会における弱者の中に醸成されて、時折ぶわりと噴き出す。それがこの映画における最後の事件のシーンだ、と自分は捉えました。

 日本でも、数は多くないですが通り魔事件が起きたり、アメリカでは銃乱射事件が発生したりしています。もちろんその全てが格差社会が原因であるとは言いませんが、社会の何かしらの要素が犯人に負の影響を与え、「世の中全てが憎い」という感情を抱かせてしまったことが事件の一因にはなっているのではないでしょうか。

 格差が完全になくなることはないですが、世の中全体に憎しみを覚える人を輩出してしまうくらいにひどい格差は、私たち人間全体にとって良いものとは思えません。それに、時折起きる「事件」のリスクを抱えて生きるのは不安定で怖いです。格差社会で割を食っている人たちに救済手段がないと社会としては健全ではないよなあ、と思わされました。
 

まとめ

 笑ったり考えさせられたりする、いろんな感情・思考を揺さぶられるとても完成度の高い映画だと思いました。見たときには気付かなかった伏線もいろいろあると事後に知ったので、レンタルになったらもう一度見たいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?