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【美術】ルドン、ロートレック展レポ

最近美術のnoteが多くなっていますが、先月行った展覧会の記録です。

概要

表題 1894Visionsルドン、ロートレック展
場所 三菱一号館美術館
会期 10月24日~1月17日

三菱一号館美術館の母体である建物、三菱一号館が竣工した1894年に活躍していたルドンとロートレックの二人をキーに、その時代にもてはやされた芸術を見せてくれる展覧会でした。


ルドンへの気付き

この展覧会での一番の収穫は、ルドンに対してイメージが変わったことです。ルドンと言えば、黒っぽい不気味な絵を描く象徴主義の画家、というイメージが強く、好みではありませんでした。

そうした一面も間違いではなく、本展では1つの章を割いて「ルドンの黒」を紹介しています。そこに展示されてある絵はやはり不気味でした。

ですが、まさに1894年、ルドンは色彩のある作品を発表し、以降は、自分のイメージとは全くちがうカラフルな作品を送り出していたと知りました。もともとの作品にあった浮世離れ感に豊かな色彩が加わり、他のどの画家にもない、儚い優美さが備わっているのが特徴的だなと感じました。

その集大成でもあり、本展の目玉でもある「グラン・ブーケ」は、とても美しい絵画でした。作品は撮影禁止なので、写真撮影用に掲示してあった複製タペストリーを載せておきます。

本物はもっと色鮮やかです。

他にも衝立の装飾も手掛ける等、自分の知らないルドンを知れて良かったです。

ロートレックに驚き

ロートレックの作品はよく見にする機会があり、酒場に入り浸って、デザイン性の高いポスターをたくさん描いた人というくらいの認識はありました。ですが今回驚いたのは、彼の娼館通いです。

音声ガイドによると、彼は娼館に住み込んで娼婦をモチーフに作品を描いたこともあったのだとか。娼館にいるときが一番落ち着くという発言もあったようです。当時のフランスには娼館が多数あったようで、今の感覚とは違うのかもしれませんが、娼館が一番落ち着くという感覚はどんなものか・・・そう思ってしまう彼の生活環境はどうなっていたのか・・・等といろいろ考えてしまいました。

日本画家の作品もあり

これまた意外な収穫だったのが、パリで学んだ日本人画家たちの作品も掲示があったことです。

まず、山本芳翠さん。名前を知っているくらいでしたが、「裸婦」という作品を見て、単純に、めちゃくちゃ上手いと思いました。当時のアカデミズムのお手本的なカヴァネルの「ヴィーナスの誕生」を彷彿とさせるなめらかな肌を持つ、美しい女性が描かれていました。この方のヨーロッパ滞在時代の作品は、ほとんどがヨーロッパから日本に運ぶ途中で船ごとなくなってしまったため、あの作品はとても貴重なものだったようです。

ほかに、ルノワールに弟子入りしたとされる梅原龍三郎さん。当時、ルノワールは高齢で、南仏のカーニュという村で活動していたそうなのですが、梅原さんはわざわざ訪ねて弟子入りされたとのこと。

作品はルノワールっぽい、というかルノワールの作品ですと出されたらそのまま信じてしまいそうなほど、ルノワールの絵の技術をよく習得しているなと感じました。と同時に、フランスにわたるだけでもすごいのに、直接弟子入りまでして絵を学ぶという情熱が素晴らしいなと思いました。

浮世絵すごすぎ問題

この展覧会では版画が多数展示されていました。ロートレックはもちろん、ゴーギャンも版画集を発表したりしていたそうです。
多数の版画を見て、素晴らしいけど、浮世絵のレベルが違いすぎないか・・・?と、却って浮世絵の完成度の高さに気付きました。

参考に、浮世絵の展示を行っている太田記念美術館のnoteのリンクを貼っておきます。

もはや普通の絵ではないか?というくらい精巧な作品が大量にあります。

細かい=優れた絵とは思っていませんが、浮世絵の繊細さは特筆すべきものがあるなあ…と改めて思いました。

まとめ

事前の予想より見所が多く、行ってよかった美術展でした。19世紀末のフランス美術が好きな方におすすめします。

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