【映画】ジブリの底力を知る

今日は映画レビューです。

概要

表題 魔女の宅急便
監督 宮崎駿
公開 1989年

 魔女のキキが修行で知らない街に住みつき、自分の生活を確立していくまでの成長を描く物語です。
 先日金曜ロードショーで放映されていたのを録画して子どもと見ました。おそらく20年以上ぶりに見たのですが、今まで見た中で今回が1番、受けた衝撃が大きかったので記録しておきます。

子どもの頃はできなかった見方

 この映画は子どもの頃好きだったので何度となく見ているはずですが、これまでの見方と今回で1番違うポイントは、感情移入して見られた、ということだと思います。
 子どもの頃は、キキという架空の女の子の冒険物語としてこの映画を見ていました。その設定自体は正しいのですが、今見直すと、キキが知らない街で自分の居場所を見つけるまでの奮闘や、心の揺れ動きが、自分の上京当初の頃と重なって見えました。

 コリコに到着してすぐの期待に胸膨らませている様子。
街の人がそこまで親切ではなく、膨らんだ期待が萎んでいく様子。
そんな中でも自分を気に入ってくれる人と関係を築き、なんとか自分の居場所を作っていく日々。
失敗したり、うまくいったり、軌道に乗り始めたと思ったらまた壁にぶつかったりする仕事。
スマートに毎日を過ごす、自分と同年代の人たちへの羨み。

 また、物語の重要なポイントとして、キキが魔法が使えなくなり、それを取り戻すため奮闘するところが描かれています。そこも、いわゆる「スランプ」に陥ったときの感覚がうまく呼び起こされるように描かれていて、感情を揺さぶられるなぁと思いました。

 これまで当たり前にできていたことができなくなったことへの焦り。落ち込み。自分へのがっかり感。画家の友人・ウルスラに共感してもらえたことによる癒し。がむしゃらにやることでスランプをふっと抜け出たときの感覚。

 舞台は外国で、主人公は魔女の女の子というフィクションでも、特に新しく生活を始めたことのある人、得意なことで壁にぶつかったことのある人は、十分に感情移入して見られる、心の動きが丁寧に描かれた素晴らしいストーリーだと思いました。

音楽の使い方が抜群

 ストーリーの素晴らしさと同じくらい衝撃を受けたのが、音楽のはまり具合とその使い方です。特にオープニングテーマの入れ方(箒を操っているキキに言われて黒猫ジジがラジオのスイッチを入れたところ、ルージュの伝言が流れ始める)は、スタイリッシュかつ印象的すぎて鳥肌がたつかと思いました。BGMは久石譲さんです。コリコの街がスクリーンに登場したときの雄大なBGMを始め、様々なシーンで絶妙なアクセントをつけていました。子どもの頃はわからなかった絶妙なバランス加減に脱帽しました。

ビジュアルも最高

 またこれも言うまでもないのですが、ビジュアルが素晴らしいです。子どもの頃から気づいていた、食べ物の美味しそうな描写はもちろんですが、今回は特にコリコの街の美しさが印象に残りました。街の全景もしかり、ふと写り混むスーパーマーケットや路地なんかもとても丁寧でした。この作品は1989年の公開ですから、たぶんセル画の作成も手作業なのかなと思います(違ったらごめんなさい)。この映画を支える、数えきれない枚数のセル画を作成された方々には頭が下がる思いです。細部に至るまで一切手が抜かれていない、本質は細部に宿るとはこういうことなのかなぁ、と思わされました。

まとめ

 なんだこのスタイリッシュかつ面白いアニメは!と驚愕しました。子どもの頃も十分に楽しんで見ていたはずですが、20年以上の時を経て、いろんな経験を積み、またいろんな映画を見たからこそ、改めておもしろさや映画としての質の高さに気付くことができました。
 きっと多くの人が子どもの頃に一度は見たことがあると思うので、ぜひもう一度見てみてください。きっと驚くと思います。

以上

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