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浦河でマスターソンメソッド®のデモ

上の写真は『ビヨンドホースマッサージ』の裏表紙の写真で、マスターソンメソッド®を確立した創始者ジム・マスターソン氏が馬に施術をしているところだ。

このマッサージを超えた(ビヨンドホースマッサージの原文、Beyond Horse Massageは、馬のマッサージを超えた、その先にある、といった意味)ボディワークを、日本で唯一人、公式インストラクターの資格認定を受け、なおかつ、この本の翻訳者である千本木倫子さんにお願いして浦河に来てもらい、愛馬でデモを行ってもらった。せっかくの機会なので、たくさんの方に知ってもらおうと私が主催者となって、周りの人に声をかけ、フライヤーも作って微力ながら、告知をしたら、私も含めて19名が(浦河だけでなく、遠くは恵庭や札幌からも)参加。青空の下、2時間、多くを学ぶ機会となった。

初っ端ハプニング

浦河の乗馬公園の丸馬場で行ったのだが、愛馬はいつも砂浴びをするために丸馬場に行くことが多い。デモ前の導入部の説明の際、私が引いて愛馬を歩かせていたのだが、丸馬場=砂浴びなので、愛馬は隙あらばゴロンとしようとする。それをさせないように歩いていたら、「なんでやねん!なんで砂浴びじゃないねん!?(なぜかこのとき、大阪弁)」と訴えて立ち上がった。参加者の方々はさぞ驚いたと思う。私の方は慣れているので(暴れるのが目的ではなく、ただ訴えているだけなので)、講師の方にその旨伝えると、それでは私たちが丸馬場から出て、砂浴びをしてもらいましょう、とおっしゃってくれたので、愛馬は心置きなく、2回ほど転がって、気が済んだらしい。その後は、穏やかだったと思う。ただし、マスターソンメソッドもホースマッサージも、デモ馬になることも初めての体験だったので、愛馬も最初はガードが堅かったように思う。(しかも20名近い人々の目に見つめられるため、餌食になった気分だったのか、耐えられなかったのか、意思を持ってそっぽを向く場面もあった。)

何されちゃうんだ、オレ? と考えている風。

習性

馬には、言葉が通じないから、犬などのペット同様、気持ちを汲み取ろうと何を感じているか、喜んでいるのかを一生懸命観察しているつもりだった。でもその気持ちの汲み取り方が人間目線だったなぁと、最初の説明を聞いて、そう思った。

馬は1日24時間のうち、本来なら16時間くらいを歩いては草を食み、また歩いては草を食む。万歩計どころの話ではない。それが馬房でほとんどを過ごすのだから、本能的に動きたい、歩きたい、体がうずうずする。馬房の中などで前肢を開いて身体を大きく左右に揺らすことを熊癖(ゆうへき)と言い、悪癖とされているが、馬の習性から考えたら、体をうごかしたかったのか!(目からうろこ)

また馬は被食者、つまり襲われて食べられてしまう側なので、痛いところがあっても、それを表に出さないようにするのだそうだ。なぜなら、あいつは弱っていると分かれば、一番に狙われるからだ。また群れの中での自分の順位が下がることにもつながりかねない。なので、多少の痛みやこわばりがあっても、本能的に表にださないのだそうだ。そういえば、犬って痛いってさけぶというか、声に出すことがあるけど、馬って本当に静かかも。

スキャン=Bladder Meridain(膀胱経路)

他にもいろいろと馬の習性について話してくれながら、デモを行ってくれたのだが、何か派手な、ポキッとなるようなカイロプラクティックのようなものでもないし、指圧とかのような押してもみほぐすというのではなく、習性や体のつくりなどからこの辺、大丈夫? 凝ってない? と指先で馬の膀胱経路をなぞるというか、スキャンをして、馬が何か反応すれば、そこでちょっと待ってみて、馬が「あっ、気づかなかったけど、凝ってたわ」とでも言うように、力を抜く仕草、たとえば瞬きをしたり、あくびをしたりするのを誘発する感じ。

段々と気持ちよくなって、色々なリアクションを見せる愛馬。フレーメンまで披露

様々なテクニック

そのスキャンが終わると、ボディワークは大きく3つの結合部というのだろうか、頭と頸椎の交わるところ、胸椎と肩甲骨と前脚がつながるところ、腰椎と骨盤と後脚、大腿骨がつながるところで、テクニックを行う。まずは頭の方からしてくれた。馬の頭は重い。体重の20-30%と言われていて、愛馬は500㎏以上あるから100㎏もある! それに草の咀嚼をするから結構、顎も舌(!)も同じ動きをずっとしているから、そこを馬自身にほぐしてもらいましょう、とまずは上あごのハミを入れるあたりに指を置くと、即座に変顔大会に出られそうな顔になって、舌と顎をおもいっきり横にゆすっていた。あぁ、それわかる気がする。前日までの4日間、終日通訳をしていた私もあごがつかれて、自分でがくがく無意識のうちにうごかしていたもの。

指をあてているだけなのに、即座に変顔に
下も同じく指を置いただけで舌も顎も動かさずにいられなくなるようだ

前脚のほぐし方も面白かった。見ている分にはただあげて下ろしているようにしか見えない。引っ張ったりはせず、馬が自らいつもの位置よりちょっと下に上腕筋だったかな、見ていてわかる筋肉を下げるよう誘導する感じ。実は愛馬は3月20日に足をかばうような変な歩様になり、40日以上のリフレッシュ休暇を消化したばかりだ。そのためか、問題のあった左前脚の方があきらかに下におろすのに馬が苦労していた。動きづらそうだから無理やり引っ張ったり動かして動かせるようにするのではなく、馬が自分で伸ばして、いつもと違うところ、たとえば普通に立っているよりも内側とか、外側とか、前とか後ろに蹄を誘導し、そこに脚を下ろすときに筋肉がいつも以上に下がって伸びているようだった。

馬が前脚の体重をあずけてくれたら、それをいつもとちょっと違う位置に下ろす

腰から後ろのテクニックも面白くて、尻尾も何気で重いし、独立しているのではなく、頭の上から骨でずっとつながっている。その尻尾をちょっと上にあげてあげたのだと思うが、馬がおやっという顔をして、なんかリラックス。

尻尾をさわらせてくれなければ、尻尾の毛を数本もつだけでもよいのだそうだ。後ろからは反応が見にくいが、常に馬の反応を見て、馬が感じたことを自ら処理する時間を与えていた

後脚も前と同じようなテクニックをしてくれたが、左前脚が堅かった愛馬は、対になっている右後脚にやはり硬さがあった。なので、少し内に伸ばせるように蹄を下におろしていて、馬がその伸びを楽しみ、満足するとため息というか、息を大きくはいて自ら元の位置に戻す。はぁ~って感じだ。私たちがアキレス腱を伸ばす運動をするみたいなのかな。

硬さがあったので、ちょっと内側深くにおいて反応を見る

最後に尻尾の根もと(?)、つまりは大きな脊椎の一番最後の部分からウェーブを起こすような軽い動きをすると、それが伝播して、鼻の先までその揺れが続くのが見えた。どこにも力をいれて抵抗していないから、どんどん伝播して行き、ちょっとした揺れで全身をほぐしている感じなのか、なんだか気持ちよさそうだった。

下唇が緩んでいて気持ちよさそう

決して急ぐことなく、馬の反応を見ながら、馬に感じて処理する時間を与えながらも、2時間の中で全体的な流れを見せてくれ、徐々に愛馬が緩んで行くのを見る事ができた。

このメソッドは運動前や馬房で過ごしている時など、筋肉が温まっていない状態でするのが良いそうだ。また試合直前に行うよりも3日前ぐらいに行い、1日休んで、大会に臨むなど、タイミングを見計らい、ほぐして可動域を広げるのが良いとのこと。

ITでいうところのnon-intrusive(押しつけがましくない、非侵入型の。医学だったら体に負担を掛けない非侵襲型)な施術だなぁと思った。

私の理解が浅くて伝えきれないですが、ご興味のある方は英語ではありますが、公式サイトをぜひご覧ください。ジム・マスターソン氏の動画もたくさん見られます。犬にも良いようで、Canineとあるタブは犬のマッサージのセクションとなっています。


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