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想像力

各個乗り

乗馬ではよく聞く「各個乗り」。複数人馬が馬場にいても、各々が好きに乗ることを指す。フィギャアスケートの羽生結弦選手がケガをした、あの試合前の練習を頭に描いてくれると分かりやすいかもしれない。色んな方向やスピードでそれぞれが動くので気を付けなくてはならない。

この各個乗りの時にどう乗るか、何をするかはもちろん自分で決めるのだけど、それが案外難しい。羽生君なら何をこの時間にチェックすべきか、誰に言われずともわかって練習していると思う。だからトップアスリートなわけだけど、私みたいに下手な人が直すところばかりで乗ろうというのだから、何から始めたらよいのか頭にアイディアさえ浮かばなかったりする。私はたいてい一人で乗っているので、言うなれば常に各個乗りであるにも関わらず、だ。

近づく町民乗馬大会

秋の町民乗馬大会まで3週間をきり、ついに出場する競技もクロス障害と決めた。そのために横木を置いて跨ぐ練習を一人でしていたのだが、何本の横木を置くのがよいのか、どこにどう置くのがよいのかもわからない。しかも私も初めてだが、愛馬も初めてなので、どう練習したら、大会への準備が整うのか、暗中模索もよいところ。なので助けを求めた。求めよ、さらば与えられん(Ask, then it shall be given you)の精神で。

ここ数日で色々なことを教わった。実際にクロス障害を飛ぶ練習もさせてもらっている(一人の時は危ないのでやらないんです)のだが、障害を飛ぶことよりも、障害へのアプローチや障害と障害の間を走るときの速度とか、飛んだ後にスピードが出がちなので、どう抑えるかとか、コース全体をどう走るのかといったことが難しい。

様々指導を受けているのだが、昨日は覆馬場で、いつものように練習してみて、と言われて、蹄跡をまず走ったところ、障害の試合では蹄跡はないし、蹄跡を走ることはないから、それでは練習にならないと指摘された。ではどうするか。もっと想像力を働かせるように、とのこと。

どういうことかというと、練習で何もない馬場を走っているときも、あそこに障害があったら、どうアプローチするかと考える。中央線のようなところを横切るときは、そこが障害のバーだと想像して、馬が直角に横切れているか気を付ける。半巻をして中央線や蹄跡にはいるときに馬を緩やかなカーブで曲げているか(私は自分のことしか考えていないので、無理な姿勢で直線に入ったりしている)確認する、そういった想像力、頭の中に障害コースを描いて練習するように。そしてそれを自分が決めた一定の速度でやること。

トンネルの向こうに明かりが見えた気がした。

Netflixにも通じる?

実はちょうど手掛けている翻訳と重なる部分があるなと感じた。Netflixが大きくなって行く段階にかかわった人のレクチャーを翻訳中なのだが、スタートアップ企業に時に足らないのは想像力だ、と言っていた。数名で今やっていることが、いつか世界に広まることまで想像できない。うまく行くためにはその想像力が必要だと言う。

実際に体験

実際にそのことを身をもって知った経験がある。4人で起業した会社の話だ(私は創業からかかわったわけではない)。会社創立の準備が整って、これから頑張ろうというときに、創業者がミカン箱(当時はきっと段ボールではなく木箱)の上に立ち、この会社を1兆とか2兆とか、そんな企業に育てたいと話したところ、1ちょう2ちょうって豆腐じゃあるまいし(たしかに豆腐は丁だわね)、まだ1銭も稼いでいないのに、そんなことがあるか、と辞めてしまった人がいた。私は実は株価から計算したこの会社の価値が初めて1兆を超えたときに、その関連会社で社内通訳をしていて、幹部の一部の方々に随行していた。その幹部の方々が日々株価をチェックしてついにその時がきたところに居合わせたのだ。私が勤めていたその会社では何かの決意を述べるときは、ミカン箱の上に乗って話すのが恒例となっていた(そのためのミカン箱があったんです)。

私の場合はミカン箱ではなく、馬に乗って想像力を大いに働かせよ、ということですね。頑張ります!



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