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野良妊婦予備軍だったあの頃の話

大分前につぶやいたツイートが久しぶりにいいねされてびっくりした。

確か不妊治療をして念願の赤ちゃんを授かったお母さんに、母子手帳担当の保健師さんが「この妊娠は想定外のものでしょうか?」といったニュアンスの質問をしてきた、辛い…というツイートを見た感想なのだけど、ベビイさんを妊娠した当初、私は野良妊婦になる可能性が非常に高いと市からマークされていたのだ。草も生えない。


妊娠が発覚したのは2018年の4月下旬、夫の誕生日の前日だった。産婦人科の先生からは心拍が確認されてから母子手帳を公布してもらいましょうと言われ、市役所に赴いたのは連休明けだった。当時住んでいた市の保健センターの一角で母子手帳をくださいと言うと問診票を書くように言われ書いたのだが、それがまずかった。いや、私は事実を誇張なしに書いたのだが、置かれていた状況が以下のとおりである。

・未婚、入籍予定だが時期未定

・夫(当時は彼氏)と別居している

・夫と中距離(関西と東海)

・職場に産休、育休制度がない(多分強く望めば作ってもらえたのかもしれないけど前例がなかった)

・どこで出産するか決めていない

・双方の親に何も言ってない

・転居予定だがいつどこに住むのか未定

・精神科通院中


こう書き出してみるともう危険極まりない。当時の私も危険な状況であることは頭で理解していたはずだが、そこまで現実味がないというか、正直日々の生活と妊娠と結婚すること、したがって退職することをいつ職場に伝えたら良いのかで悩んでいっぱいいっぱいだった。当然保健師さんも問診票を目にした途端表情が凍りついた。そらそうだろう。私が保健師なら個室に通して面談していたと思う。

「えーと、今回の妊娠は…その、予定されてたんですかね…?」

「いえ…」

そこから先はもう質問攻めに次ぐ質問攻めだった。夫は妊娠を知っているのか、喜んでいる様子はあるか、年収は知っているか、会社はどこだ、聞き慣れない会社だがどれくらいの規模のところか知ってる?あなたの職場は?あああそこね、先生には言った?まだ?院長だけ知ってるのね?で今あなた一人暮らし?いつまで1人で住むの、というか1人で住めるのつわりは?ない?精神はどこ行ってるの、あああそこかー先生に言った?今日?じゃあ薬のこと聞いてね、などなど。主に夫のスペックに関する質問が異様に多く、ああきっと揉めた時に最悪認知と養育費を取れるかどうかの聞き取りなのかなぁ…とぼんやり考えながら、今後も何かあればすぐ電話してくださいね、こちらからも連絡して良いですか?と電話番号を聞かれたのでハイハイと電話番号を教えた。


その後も時々保健センターから電話がかかってきた。入籍できましたか、とか引っ越しはいつになりそうですか、病院行けてますか?お金大丈夫?などなど。職場が精神科のクリニックだったのだが、こんな電話が丁寧にかかってくるんですよと職場で話したら、

「それ、野良妊婦予備軍の人の調査やん!」

と盛大に笑われた。いやあなたのとこの従業員が今まさに疑われてるんですよ、そのプロジェクトに参加してるって先生言うけどこの状況は大丈夫なんと思うのだが大丈夫だったのだろうか。ちなみに野良妊婦を作らない対策の資料作成も少し手伝った。野良妊婦予備軍が。もうめちゃくちゃである。

その後、引っ越しにあわせて保健センター間で引き継ぎがなされ今に至る。ベビイさんがサクサク発達検査を受けられたり、時々家庭訪問や電話連絡があるのはそのためだ。なんなら新生児訪問も里帰り先の実家と戻ってからの2回受けた、手厚い。

コロナ禍と呼ばれて久しいこの時代、ただの?野良では済まないような過酷な状況や不安に取り沙汰された妊婦さんやママが大勢いるだろう。質問攻めにされるのが辛くなければ、保健センターに相談してもいいかもしれない。多分。

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