住人のキロク#1
「手を合わせてください」「ごちそうさまでした」
この瞬間、僕の胃袋のストップウォッチが押された。
子どもと一緒に食べる給食の量では、僕の胃袋はもって3時間だ。
これから3時間のエネルギー消費は、この後の戦いに影響を及ぼす。
この戦いは16時45分の退勤後に訪れる。しかも週に5回もだ。
僕の働く学校は繁華街にある。横須賀の中でも美味しいお店が軒を連ねる。
僕はラーメンが大好きだ。
仕事後はラーメンが食べたい。ラーメンが食べたい。ラーメンが食べたい。
一歩一歩踏み出す足は、香り豊かな繁華街へ向かっている。
くそぉ! だめだ、だめだ!!
腹が鳴っている。
胃袋の中のモンスターが早く麺類を啜れと叫んでいる。
頭の中に鳴り響くエネルギー0までのカウントダウン。
この時間は1日の中で一番辛い時間だ。
その欲望をなんとか押さえつけて足早に電車に駆け込む。
ふぅ、なんとか第一関門突破だ。
電車内では空腹を紛らわせるために無の境地に自分を押し込める。
この空腹状態で何を考えることができようか。
家の最寄駅に着いた。
あとは10分ほど歩くだけ。
最後の上り坂は自分への試練だ。
ここを駆け上がれば夕食にありつける。
よし。
いつもより大股で、なんなら小走りで坂を駆け上がる。
家に着く。
ん、、、この香りは、、、!
戦いに勝ち、僕は夕食にありつく。
途中で負けなくてよかった。
後悔しない夕食が毎日待っている。
幸せだ。
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