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困った行動への対応でメンタライジングを育てる

株式会社ドンマイは、就労継続支援A型事業所、カフェ、放課後等デイサービス、訪問看護事業所を運営しています。
2ヶ月に1回川谷先生が講師となる勉強会を開き、
利用者さんが「イキイキと自分らしく」生活できるよう、
精神療法の視点を取り入れた支援を行っています。
放課後等デイサービスそらは、小学生から高校生までの児童を対象としているため、
子どもたちの「パーソナリティー発達を支える」ことを目標とし、
私もスタッフミーティングに参加し、スタッフと意見交換をしながら、
より良い支援を目指しています。

先日のミーティングで、「相手の立場に立って考えられない子」への対応が話題に上がりました。
診察でお会いする子どもたちの中にも同じ悩みを抱えている子は沢山いらっしゃるので、
以前、ブログにも「『人の気持ちがわからない』悩みを持つ子の保護者にお伝えしていること」
「共感力を育てるには」でこうした話について書きました。

https://note.com/mam01/n/na308fc0e904b
https://note.com/mam01/n/n20da8027a07c

ただ、もっと実践的な、「この問題行動に対して、どうしたらいいの?」
という疑問に対して、明確に書いてなかったなと気付いたので、
今回またこの話について書くことにしました。


自分の行動を振り返り、内省し、相手の気持ちを考える力のことを
メンタライジングといいます。
相手の立場に立って考えられず、その場にそぐわない行動を繰り返しとってしまう子は、
メンタライジングの力を育てる必要があります。

日々の何気ないやりとりの中で
前回お伝えしたような感情のラベリングや、情緒的応答を増やすことは前提として必要です。

その上で、問題行動が発生した時の対応なのですが、
これまでの先入観を捨てて、
「その行動の背景には、どんな気持ちがあるのだろう」と、
その気持ちを知りたいという気持ちで対応する
ことが重要です。

ダメだと言われていることを行ってしまう行動を見るとつい、
「またやって。なんでこんなことしたの?」と言いたくなります。
よくぺアトレなどで「なんでやったの?と、悪い行動の理由を聞こうとしない」と言われますが、
それは悪い行動を責める気持ちや、反省をさせたい気持ちから起こった発言だからだと思います。
そうではなくて、「ダメだと頭ではわかっていることを、せざるを得ない気持ちってなんだろう」
と思いを寄せるのです。
そうすると「なんで?」ではなくて、
「面白かったから、つい気持ちが止められなくなっちゃったのかな」とか
「お母さんが弟に構ってばかりで、つまらないなって思ってたのかな?」になると思います。

もちろん、悪い行動を悪いと伝えることは必要です。
短く、くどくどならず、端的に事実を伝える形で悪いことだと伝えます。
その後、もしもカッとなっている時などは落ち着いてからでもいいので、
振り返りの時間を作って、
「その子の気持ちを知ろうとしている」ことを伝えてください。

初めのうちは「知らん」「わからん」という返事が返ってくることが多いと思います。
そこで、言い当てる必要はなくて、
気持ちを知ろうとしているんだという姿勢を伝えることが1番大切です。
その姿勢が伝わると、悪いことをしてしまった自分を理解しようとしてくれた、
と子どもは受け取ります。
悪いことをしたと自分で認めることは、大人でも辛いものです。
だから、悪いことをせざるを得なかった気持ちに目を向けてもらえると、
自分を否定されないという安心感から、
自分自身が、自分の悪い行動を受け入れられるようになります

そして、自分の気持ちを知ろうとしてもらった体験から、
今度は自分が自分の気持ちを探ろうとするようになります。
それが、自己内省を深めることとなり、
今度は自分が相手の気持ちに目を向ける、という行動を行うことにつながるのです。
つまり、メンタライジングが育ちます。

メンタライジングとは1991年にFonagyが提唱したもので、
メンタライジングを取り入れた治療法MBTは当初、
ボーダーラインパーソナリティ障害の人への治療法として発展しました。
ただ、メンタライジングを用いた治療の背景には愛着理論があるため、
子どもを対象としたセラピーでも有効だという意見も多く、
ADHDの子どもたちや、感情コントロールの難しい子どもたちへの対応にも
用いられるようになってきています。
MBTを行える施設は限られていますし、川谷医院でも行えていませんが、
川谷先生からは私が医院で働く前からずっと指導を受けてきていて、
以前から「行動の背景にある気持ちに目を向ける」ように言われてきていました。
FonagyによってMBTという治療法として確立されたのが比較的最近ではあるけれど、
愛着形成に視点を置いた精神療法を行う臨床家にとって、
メンタライジングを育てるということは、
昔から自然と行ってきたことなのではないかと思います。
上述したような問題行動への対応は、川谷先生からの教えを元に親御さんにお伝えしていることですが、
MBTについて学んでいると似たようなことが書かれてあったので、
併せてメンタライジングというものをご紹介しました。


発達障害の子への対応として広く活用されているABA応用行動分析でも、
その行動の前の出来事に注目をします。
ABAも、行動の背景に目を向ける、ということがポイントで、
行動だけに目を向けない、という点では一緒です。
ただ親御さんの中には「何があったのか」ということに意識が向きすぎて、
その子の気持ちにまで目を向ける余力がないケースも多々あるなと感じています。
今回、スタッフミーティングで話題になった時もそうでした。
問題行動が起きた場合は、対応する側も自分の感情を抑えて神経を使っている精一杯の状況ですから、
重要なことを一つに絞って、対応がよりシンプルになる方がやりやすいです。
そこで、背景の気持ちに焦点を当てるという方法は、実践しやすくて有効ではないかなと感じています。

困った行動は、メンタライジングを育てるチャンス!と思うと、
「またか」ではなく「よし来た!」という気持ちになりませんか?
対応する側も新鮮な気持ちで向き合えるといいですね。

とっさに言葉が出ないことも多いので、
対応の仕方については、事前にご自身の中で
シュミレーションをしておくことをお勧めします。
うまく考えられない、という悩みをお持ちの親御様には、
ペアレントトレーニングの受講をお勧めしています。
当院でも行っていますので、受付でご相談下さい。

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