シェア
Mayumi B
2016年8月3日 23:07
部屋全体は薄暗く、行灯の炎がゆらりゆらりと蠢いていた。熱帯魚の影も障子に大きくゆらめいている。遠くからは、三味線や男と女の笑い声が薄っすらと聞こえてくる。緩やかであるが音と鮮やかな色彩の洪水のなかで、龍太郎は、なぜか心が休まった。吉野になら隠し事をせず、何でも話し尽くしてしまいそうだった。 龍太郎は、夜の帳が下りたもとでその空気を呑み込むように一呼吸し、先を続けた。「親父は、その時、なぜ