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悲しき熱帯魚(小説)

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人魚姫をベースにしたせつない話です。
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#運命

悲しき熱帯魚 5章

 部屋全体は薄暗く、行灯の炎がゆらりゆらりと蠢いていた。熱帯魚の影も障子に大きくゆらめいている。遠くからは、三味線や男と女の笑い声が薄っすらと聞こえてくる。緩やかであるが音と鮮やかな色彩の洪水のなかで、龍太郎は、なぜか心が休まった。吉野になら隠し事をせず、何でも話し尽くしてしまいそうだった。

 龍太郎は、夜の帳が下りたもとでその空気を呑み込むように一呼吸し、先を続けた。

「親父は、その時、なぜ

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