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Berlin, a girl, pretty savage

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遼太郎の娘、野島梨沙。HSS/HSE型HSPを持つ多感な彼女が日本で、ベルリンで、様々なことを感じながら過ごす日々。自分の抱いている思いが許されないことだと知り、もがく日々。 幼…
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【連載小説】あなたに出逢いたかった #21

梨沙は恐る恐る電話に出た。 『午前中から出かけてるなんて珍しいな。俺のこと探していたみたいじゃないか。今どこにいるんだ?』 夏希から聞いたのだろう。梨沙は咄嗟に嘘がつけず「横浜」と答えてしまった。途端に遼太郎の声が曇る。 『横浜? 何しにそんなところにいるんだ?』 「と…友達と会ってる…」 『友達って?』 「…ベルリン留学時代の、同じギムナジウムに通ってた人が横浜にいて…」 自分が話題に上った康佑は黙ったまま自分で自分を指差し、目を丸くした。 『どうしてそんな所で会

【連載小説】あなたに出逢いたかった #20

梨沙がハッと目を覚ますと時計は8時を指していた。日曜の朝。 康佑とは10時に桜木町で待ち合わせだ。 スマホをチェックしても昨夜別れた後の康佑からの気遣いメッセージが入っているだけで、遼太郎に送ったメッセージに既読は付いているものの返信はなかった。 慌ててリビングに行くと夏希が朝食の準備をしているところだった。遼太郎はいない。 「あら梨沙、珍しく早いのね」 「パパは!?」 「まだ寝てるわよ」 それを聞いて部屋に向かおうとする梨沙を呼び止める。 「だめよ梨沙! 昨日遅か

【連載小説】あなたに出逢いたかった #16

10月最初の土曜日。 数日前までじっとり高い湿気を帯びた風が嘘のようにカラッとし、筆で掃いたような雲が青空に広がっていた。金木犀が陽の光を受けカーネリアンのように輝き甘く芳しい匂いを放ち、道端に落ちた花は金平糖のようだった。 金木犀もまた、強い風に儚く散る、梨沙が最も好きな花の一つだ。 家には高校の友だちと買い物に行く、と言って出てきた。遼太郎は先日梨沙がクラスメイトと揉めたと切なく打ち明けてきたが、それが解消されたのだろうと思い、ホッと胸を撫で下ろした。実際は嘘だから、