【連載小説】あなたに出逢いたかった #16
10月最初の土曜日。
数日前までじっとり高い湿気を帯びた風が嘘のようにカラッとし、筆で掃いたような雲が青空に広がっていた。金木犀が陽の光を受けカーネリアンのように輝き甘く芳しい匂いを放ち、道端に落ちた花は金平糖のようだった。
金木犀もまた、強い風に儚く散る、梨沙が最も好きな花の一つだ。
家には高校の友だちと買い物に行く、と言って出てきた。遼太郎は先日梨沙がクラスメイトと揉めたと切なく打ち明けてきたが、それが解消されたのだろうと思い、ホッと胸を撫で下ろした。実際は嘘だから、