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"豊かで快適な生活を実現する", 川上デザインルーム代表、 川上元美(かわかみもとみ)さん

武蔵野美術大学大学院・クリエイティブリーダーシップ特論II、第4回川上元美さん、2020年6月8日@武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス(via Zoom)by 木越純

今日は、日本を代表するデザイナー、川上 元美さんをお迎えしました。川上さんは、東京芸術大学美術学部工芸科(ID専攻)のご出身。学生時代に出会った作品集からアンジェロ・マンジャロッティに魅せられて、イタリア語を学び奨学金を獲得してイタリアに留学し、念願のアンジェロ・マンジャロッティ建築事務所で修行を積むました。GENOVA家具展金賞(イタリア)、アメリカ建築家協会主催インターナショナル・チェア・デザインコンペティション1席(USA)、iFデザイン賞(ドイツ)など国内外の賞を多数受賞されています。

これまでに、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、環境デザインと、文具やキッチン小物からイスや家具、オフィスや学校、果ては「鶴見つばさ橋」と言った橋梁まで、ありとあらゆるデザインを手掛けられ、また日本各地の地域起こしのプロジェクトにも多数関わっておられます。クラスでは、たくさんの素敵な作品の写真を、発想のきっかけや苦労話などを交えて紹介してくださいました。

川上さんのお話から、まず人間中心の思想が伺えます。身の回りから空間全体まで、デザインの力で豊かで快適な生活を実現しようとすることです。そこには見た目だけのデザインではなく、素材や肌感覚や使い勝手への拘りがあります。次にデザイン、建築、工芸、環境といった領域を越境した思考と実践があります。川上さんが在学していた時期の東京芸術大学の芸術学部工芸科がいろいろな領域を統合した学びの場であったことが、越境人材となる素地を作る上で大きかったとのことでした。そして、素材や技術への飽くなき好奇心です。技術革新から生み出された新素材や古来から知られながら用途が限られていた素材を果敢に取り入れて、斬新な作品を産み出してこられました。

これまでに一番思い出に残った作品は何ですかと質問させて頂きました。迷わず、冒頭の写真の折りたたみ椅子をあげられました。まだ駆け出しの頃の作品、製品化については、イタリアの会社のオーナーが変わり中断したりと色々苦労があったとのことですが、1977年 アメリカ建築家協会(AIA)主催のインターナショナル・チェア・デザインコンペティションで 1席(USA)に選ばれ、川上さんがプロダクトデザイナーとして世に認められる転機となった作品です。「これでデザイナーとして独り立ちできるかもと思えるようになった」と感慨深げに語っておられました。(了)

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