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メンタル・マッチョ・ゴリラ <誕生編>vol.5 「アナログの鬼」
ジャングル島でサバイバルな日常を送るうち、私はあることに気づいた。
相容れない2体の獣には、普通の人間にはとうてい真似のできない共通点があったのだ。
スーパーアナログなお仕事術である。
二人の係長それぞれにパソコンが支給されてはいたのだが、、、放置され埃をかぶっていた。(のちに、私がお借りした)
オサムは電話で、橋爪係長は手書きで、、、ジャングル島には昭和(初期)の仕事風景が広がる。
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オサムは自分で伝票類を書くことは一切なかった。すべて電話で指示を出す。発注書は加工部門へ、委託伝票は営業部へ、というように。営業本部の部長でさえ、そんなことは許されないのだが、オサムの場合はそれがまかり通っていた。
字が絶望的にヘタクソなんだ!と、私は一人合点していたが、偶然見かけた直筆は超達筆でひるむほどだった。
とにかくオサムは事務的な作業を嫌った。
橋爪係長の方がオサムよりデジタルスキルは、確実に上だった。
コピーがとれた。
営業部への新作のプレゼンも、他のプランナーはパワポのところ、橋爪係長はお手製の資料を配布する。商品のイメージ画を切り貼りし、修正ペンを駆使し、びっしりと手書きの文章で埋められている。膨大な時間をかけ作成された夏休みの自由研究を彷彿とさせる資料に、誰しも懐かしさのあまり言葉を失う。
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もちろんハンドライティングの方が、魅力的で分かりやすい場合もある。字やラフが魅力的で、内容がきれいにまとまっていればだが、、、。世のほとんどの人はそこまで絵心もセンスも時間もない。
だからこその需要で、グラフィカルな資料作成ソフトPowerPointは、現在も年間1億ドルも売り上げている。
とはいえ、今から30年ほど前のこと。
アラフォーで「ゼロ」からのパソコンスキル習得は、
野生の成体ヒグマ(雄)にバレエを仕込み、ボリショイで踊ってもらう位の難易度、、、。
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さて、オサムのプレゼンテーションは、といえば、、、。
すべて口頭だ。参考商品やサンプル商品を前に、身振り手振り、かつ得意のトークがさく裂する。誰もが、メモを取る手を止め、彼の新作に、いや、ザ・オサムショーから目を離せない。だからこそ、彼の開発した商品イメージは営業たちの頭に焼き付くのだ。
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ずんぐりカバおじさんには、一瞬にして人を魅了する天性の才があった。
ただし、気が向いた時には、だが、、、。
大規模な展示会には、百貨店、小売店が特別なお客様をご招待する。たいていは、高級ホテル、料亭、ホールなどラグジュアリー感あふれる場所が選ばれる。往年の財界人の別荘など趣のある場所などは、限定で招待された人々の心をくすぐる。超高額品を売るには、やはりそれなりの場所でなければ財布のひもは緩まない。
こういった特別な展示会となると俄然、オサムは張り切る。スーツを新調し(セミオーダー)、靴もそれに合わせて買い込む。気分から入るのだ。もっとも、丈を詰め、脇を出せるだけ出すというお直しを経たスーツは「もう、うちのラインではございません!」と高級メゾンを泣かせるのであるが、、、。
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さて、展示会当日。開場したとたん、オサムは狩人に変身する。美しく着飾ったご婦人方を、熱い視線で見つめ、ターゲットが決まると、もうロックオン状態で目を離さない。自分の商品の前に来るまで決して目をそらさず、近づいた瞬間、がしっと手をつかむ。(毎回ではない)そして、「待ってたわよ」と言うと、商品片手にフフフフフフと不敵な笑みで迫るのである。
普通であれば、警備員が呼ばれ、✕の烙印をおでこにジュッと押され、冥王星あたりまで追放されてもおかしくない。
ただ、オサムがやるとどういうわけか皆「きゃっ!」と驚きながらも大笑いしてしまうのだ。夫君が見ても、目くじらはたてないであろう。たいてい、妻が展示会にきていることは知らされていないので、どのみち問題ない。
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そして、オサムは自分の作り上げた芸術品への熱い想いを、軽妙なトークに込める。魔法にかかったようにすっとりと、皆、オサムの商品を求めていく。こうして、ぽんぽんと数百万単位で彼の商品は売れていった。
定時に出社し、定時に帰る生活を送る人間には、とてもできない離れ業である。
※アナログ=悪ではないです。私自身、超アナログ人間。未だに、メモ帳が欠かせません。(走り書き過ぎて、後で読めない、、、)
ただ、お仕事では、やっぱり効率が求められます。基本、相手があることなので。
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