もし僕がいなくなっても君は大丈夫
既に過去となってしまった憧れを
取り戻したい 力を貸して
彼のプロフィールに書かれていた言葉に惹かれた。SNSの友人から辿り着いた彼はなんだか周りとは違って見えた。
「リルケ 冥王星のリュクス」
彼はこんなつぶやき方をしたりする。
私はリルケの詩集を買って彼に見せた。どれか教えてと言うからいくつか選んで書いて見せた。好きな物を持ち寄って遊ぶみたいに毎日一緒にいるようになった。
クリスマスイブに彼が電話をかけてきてくれた。初めて電話越しに聞いた声はとても優しかった。
「なんて癒やし声なんやぁ」
あまりに綺麗な声だったので思わず訛ってしまった。彼は恥ずかしそうに笑っていた。
天気の話をした。
SNSの仲間の話をした。
あっという間に30分経って
彼はこう言った。
「まゆ そろそろ現実に傾けて」
彼とSNSで繋がったばかりの頃、なんとなく恥ずかしくなってアカウントを削除したことがある。でも数日後、気になって様子を見に行ってしまった。
「どこかで元気に暮らしてればいい」
そう書かれていた。
四年前、彼は旅に出ると言ってSNSから突然いなくなってしまった。どこに住んでいたか知っているけど恥ずかしいので会いに行ったりしない。
「どこかで元気に暮らしてればいい」
空を見る。空に彼を乗せて想う。でも彼は心の中にいて一緒に生きている気がする。彼を追いかけるように日々を過ごしあの時はこういう思いだったんだと知る。
彼は島に住んでいた。
どこか異国の雰囲気なのはそのせいかな。
私の母も島で生まれた。
私はその島の海で遊んでいた。
どこか異国の雰囲気なのは
私自身なのかもしれない。
もし突然僕がいなくなっても
あなたは大丈夫なんだ
なんとなく眠れない一人の夜には
僕の声を思い出してほしい
「繭」
music by Yo1ko2
December 2020 mayke
唯ノかずほ
mayumilder
このご縁に感謝します♡