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Vals

休日出勤。朝から予算書と格闘し、会議資料を二つまとめた。オフィスには誰もいなくて、私のデスクにだけ電気がついている。ベストは尽くした、でもなんだか虚しい。。
パソコンを閉じてミロンガへ。銀座の奥まったところにある雑居ビル。着いた頃にはもう21時半を回っていて、熱気に溢れていた。

"なぁに、今来たの?"
踊らなくてもいい、この空気、この音楽に囲まれて自分に帰りたかった。とりあえず一息。ワルツがかかり、カベセオが飛んできた。あ!台北のミロンガでお会いしたミロンゲーロだった。
派手なことはあまりない、けど穏やかで暖かいアブラッソが嬉しかった。今日の疲れが溶けていくような、自分の存在を認められた安心感があって、溢れる涙を堪えることができなかった。"どうしたのー?"と笑われて"なんでもない"としか言えなかった。何にも喋ることなく3曲を踊った。
…いや、アブラッソでたくさん話しかけてくれて、たくさんの頷きを返した。忘れることのない、特別なワルツになった。

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