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呪う気持ちに、救いなど

アニメ『呪術廻戦』に思うこと。

友人から勧められた『呪術廻戦』13話まで追いつきました。「オカルト好きだから、面白そうだな〜、推しは誰かな」と思って軽い気持ちで観たら、思いの外考えることが多くて、感想を書ききれません。なので、noteに書くことにしました。

推しという点で言えば今のところは、一番魅力的だと思うキャラクターは七海。登場を一番心待ちにしていたけど出番が少なかったのが狗巻先輩。これから好きになりそうなのは伏黒君。
という結果。地味に花御も気になってます。

今回は推しがどう、というよりもアニメの終盤でメインとなる吉野順平のお話について、考えたことを書きたい。


とにかく「あぁ……」って思う台詞が多い。

順平はおそらく過去に虐待にも合っていて、登場時には凄惨ないじめにあっている。しかし、明らかに負の感情は持っていても、何故かいじめっこを憎みきれない・呪いきれない部分があるように見える。それは優しさや強さとはまた違っていて、彼は「正しさ」を常に求め、きっと呪ってもよい理由………呪うことに「正義」となる何かを求めてしまっていたのだと思う。

順平はずっと自分を嫌う人を嫌っていい理由、自分に危害を加える人間ならば殺してもいい理由を探していた。そこで出会った真人の「心は物質と同じ、命に価値などない」という理論に救われたのだ。
理論や理屈はどうでも良くて、人の命を等しく大切だと思いたい主人公・虎杖君との対極さがまた…………。

結局、唯一の心の拠り所であった母を奪われ、更に言葉によって誘導されることで、徹底的にその境遇と感情を利用されてしまう。順平…………!

順平の「"愛の反対は無関心"と初めに言った人間はちゃんと地獄に堕ちたのでしょうか?」という言葉はかなりドキッとした。「悪意を持って人と関わることが、無関心よりも正しいなんて」と人に対して無関心であることが究極であると主張するも、一方で真人に「そんな君が復讐なんて」と笑われてしまう。その通り。人を憎み、呪うことは、無関心ではなく"悪意を持って関わること"そのものだから。

自分がされた仕打ちに関しても、復讐していい理由と同様に 「人には心がない」から、と思うことが救いだった順平。

「そうでなきゃ、母さんも僕も、人の心に呪われたっていうのか。そんなのあんまりじゃないか」という悲痛な叫びは、もう

うわーーーーーーー

ってなった。心臓、鷲掴み。

真逆。

真逆なんだけど「人には心がある。かけられる言葉には相手の気持ちや理由がある。」って思うことで、自分にかけられる傷付けるためだけの言葉を受け入れることに辛うじて耐えられていた時期があった。それに対して、優しき人から「その言葉に意味や心なんてない、相手はきっと何も考えていない。」と助言された時に「そんなの………あんまりじゃないか!残酷だ!」と順平と同じように取り乱したことがある。今思えば心ない言葉にはやはり心なんてなくて「仰る通りでした!」っていうか、圧倒的にド現実なんだけど、笑 自身の精神の拠り所にしている理屈を手放すのってめっちゃくちゃパワーが必要だったんだよね。例えるなら、支柱を失う朝顔というか…。何かに巻きついて、ようやく成り立ってる精神の「何か」を引き抜かれそうになってるんだから、順平も必死だわ。

順平が一番「人間」なんじゃないかな。主人公の虎杖君が一番感情移入しやすそうに見えて、感情移入できないと思う。人間離れした身体能力や両面宿儺とは別に「万人等しく正しい死に方に」と理屈抜きで思えるのって、人間離れしてるよ。善とか悪とか置いといて。どちらかというと「命の価値は等しくない、救う人間を選ぶ」って言ってる伏黒君の方がよっぽど人間寄り。

そんなこんなで、呪いは「人間」の負の感情から生まれているから、こんなにも「人間」な順平は呪う才能に満ち溢れているし、利用されちゃうわけです。

「熟慮は時として浅慮よりも間違った選択をすることがある」

とか

「君が馬鹿にしていた人間のその次くらいに君は頭が悪い」

とかなんとか

真人に言われて。

え、真人。それ順平じゃなくて私に言ってる?

考えれば考えた分だけ、悩んだら悩んだ分だけ「正しい」を見つけられると人間思いがち。だけど、正しさに揺らがらない規範なんてどこにもなくて、言ってしまえば、人の数だけ「正しい」がある。考えても、考えなくても、同じ。熟慮浅慮に優劣も善悪もない。

命に価値なく、心に意味はなく、ただそこに或るだけ。

皮肉だね。耐えて耐えて考えて考えて考えて、自分の「正しい」にやっと辿り着けた順平。でも、それは結局「ない」と思うことで正当化できた自分の「心」を利用されてしまった。虎杖君の「自分が正しいと思いたいだけだろ」に一蹴されたのもまた。とっても的を射ておりました。

いや………吉野順平回……………

救いがなくて……

好きでした……………。


続き、狗巻先輩の活躍が、めちゃ楽しみです。

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