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全日本プロレスの年末からの混乱を目の当たりにして「ズンドコ」の意味が理解できた

去年と今年にプロレスリングノアについて書いたところ結構反響をいただいたので、月一くらいでプロレスについて話してみようと思います。

正月以降はプロレスリングノアとしては安定して良い試合が展開され、1月13日の後楽園ホールと2月4日の仙台での興行は本当に面白かったんです。

ワグナー選手がタイトルを獲るということは予想していなかったけど、実力的にもパフォーマンス的にも納得で、意外性はあるけど説得力のある結果って引き込まれるものがあります。

これからタッグリーグ戦もある。
そして4月に入るとマンデーマジックがまた始まる。

丸藤飯伏戦は物議を醸しましたが、安定感と意外性が丁度良くミックスされて、観ている側としては今のノアは本当に楽しめると感じました。

で。
プロレスに戻ってきて思うのは、案外他団体の話題も目に入ってくるということなんです。

新日本プロレスも全日本プロレスも女子のスターダムもとにかくこの1月が大揺れで。

新日本は団体の顔を長く務めたオカダカズチカ選手とオスプレイ選手の退団、スターダムはエグゼクティブプロデューサーだったロッシー小川さんが契約解除なんていうことがありました。

契約満了に伴う退団っていうのは長く団体を運営していると必ず誰か出てくることなので仕方ないんですけど、スターダムのような内紛みたいなきな臭いことっていうのも結構あるんですよね。

野球でも阪神タイガースのお家騒動っていうのは何度となく繰り返されてきましたし、サッカーチームにおけるサポーターの問題は絶えずどこかで発生しています。

ただ、それとプロレス団体の混乱っていうのは色合いが異なるように思うんですよ。

特にそれを感じたのは、全日本プロレスの年末年始の出来事でした。

いや、
なんかね、

全日本プロレスに関してはおいおい大丈夫かよって感じだったんですよね。何しろ動きが色々とありまして、それが連動しているように見えるんです。

まず、ノアを離れた中嶋勝彦選手が突如「闘魂スタイル」という言葉を使い、ダアーをしたりアントニオ猪木のマネージャーを務めた新間寿さんを連れてきたり。

猪木さんの色合いの無かった中嶋選手がその対極ともいえるジャイアント馬場が設立した団体で猪木色を出していること。

そして福田社長が自らの色を出して発信していることが、悉く批判を浴びています。

提携を組んでいるアクトレスガールズの選手を従えてバカ殿のような恰好で発信をしたり、アメリカの団体(NXT)から選手を招聘したりと、明らかに全日本プロレスの今までのカラーとは異なる何かを打ち出していること。

更には、古参で功労者でもある石川修司選手やブラックめんそーれ選手といった面々が複数離脱しているということ。

まぁ誰がどう見てもヤバいんですよ。

久々にプロレスに戻ってきて、ああ、そういえばこの世界ってこういうこともあるんだよなぁということを思い出していますけど、にしても全日本プロレスのそれは過去に経験した中でも有数の動揺とも言えるんですよ。

で、このヤバいのを見てファンが本当に怒っている。
ただ、この気持ちは分かるようでわからないところもあって。

え?
全日本ってプロレス自体は面白いし、選手も揃っているし、若手も続々と出てきている。そこまで怒らなくても別にいいんじゃね?

くらいに思っているところもあるんですね。
客観的に見ると。

ただふと考えてみると、プロレスっていうのは常に不安定で、ふとしたタイミングで何かが上手くいかなくなるとすぐに転落していくってことも事実なんですよね。

2010年以降に回復基調にあった新日本プロレスでさえコロナで大打撃を受けましたし、四天王プロレスから新団体旗揚げという動きのあったプロレスリングノアも三沢さんが亡くなって以降は前の姿を取り戻せていない。

その辺は野球・サッカー・相撲とは異なるんですよ。思った以上にファンが流動的で、ふとした瞬間に離れてしまう。そして離れたファンはそう戻ってこない。

他の競技と比べて本当に不安定で、様々な団体が上がったり下がったりを繰り返して、気が付いたら消滅することさえある。その典型例が長州力さんの作ったWJプロレスであったり、前田日明さんのUWFだったりするんですよ。

だからこそ、団体が悪い方向に進んだ時にファンは当事者意識をもって怒りの声を上げるんだと思うんですね。

ただ、怒りの声をファンが上げれば上げるほど事は深刻さを増していく、ということもまた事実でして。なかなか難しいもんだと感じます。

丸藤飯伏論争の時もそうでしたが、騒動に対するファンの反応を見ているとまぁこれだけのことが起きたのだから仕方がないと思いつつも、言葉の強さや怒り具合に対してこの人たちめんどくせえなと思うのもまた事実です。

まぁそういうちょっと面倒な人たちに支えられているところがあるのが、エンターテイメント業界という世界なんですよね。

彼らを排除しちゃうとコア層が居なくなってしまう。故に上手くコアファンの意に沿うような着地点も見出していかないといけない。それは丸藤飯伏論争で私が学んだことでもあります。

何か事件があるとファンが危機感を抱きやすく、ビビットに反応するからこそ騒ぎが大きくなってしまう。これ、本当に難しいところだなと思いました。

ただ。
ただね。

全日本プロレスについて私は情報は観ていますけど、そこまで興味ないんですよ。

で、そこまで興味がない人がこのただごとじゃない事態を目の当たりにするとどうなるか?

「心配」というよりも「面白い」になっちゃうんですよ。
これが。

別に不幸を楽しんでいるとか、そういうことではなくて、単純にプロレスの世界の非常事態って傍から見ているとヘンテコなんですよ。

だって、どこの世界に会社の方針と真逆の社員が大太刀周りをしたりしますか?

社長がバカ殿の格好してYoutube出たりしますか?

それだけネジが外れた世界だからこそ、起こるハプニングもこちらの予想を上回ってくるし、それを当事者たるレスラーや会社がどう受け止めて、どう対処していくかということまでエンタメになってくる。

正直ね、プロレスの世界で起きているトラブルや不測の事態っていうのはどこまでがリアルなもので、何が実は脚本として描かれたものかなんてわからない訳です。

だから、トラブルといっても現実とフィクションが入り混じっていることさえあるんですよ。

ストーリーの要素としてトラブルが発生していることが軸に置かれることもあれば、リアルに対立しちゃっているというケースもある。

中嶋選手の猪木オマージュ(闘魂スタイルと本人が言ってるやつです)なんてその典型で、リング上では中嶋選手がそのスタイルを全面に出す中で他のレスラーはそれに拒否反応を示す。

当然これは、ストーリーとしての拒絶です。

しかし、アントニオ猪木さんのライセンスなどをお持ちの方が「闘魂スタイル」に対して警告書を送付するということが発生しました。

これは、リアルな拒絶と言えるでしょう。ここまでストーリー通りだとしたら相当手が込んでいますからね。

で、ストーリーとしての対立とリアルな対立がごっちゃになっているから、ファンとしては当然不安だと思うし、腹が立つこともあると思うんですけど、そこまでファンじゃない立場からするとこの訳の分からなさが面白いんですよ。

プロレスファンの方って、この手のプロレス界での混乱のことを「ズンドコ」って呼ぶ方が多いんですよね。

なんでこんなに舐めた言葉で混乱を評するのか長年疑問だったんですけど、今回の全日本プロレスの騒動で少しだけ分かったような気がします。

とはいえ「ズンドコ」っていうのは全く違う状況を指すのかもしれないんですけど、ただ、このちょっと訳の分からない混乱がキュートに見えるっていう意味で、混乱はしているけど抜けたニュアンスがあるということは分かるんですよ。

確かに昔からあったよなぁと思うんです。

1つのリングの上で複数の試合が行われる「アルティメットロワイヤル」とか、倒れそうになる金網を出場していない選手が支えながら試合をする「X-1」とか、北尾光司がデビュー戦で北斗の拳みたいな格好してきたりとか。

そういうガチなのかストーリーとして描かれたのか、リアルと虚構が組み合わさって訳の分からない闇鍋みたいなものが今自分の目の前にドンと置かれているという状況は今も昔も存在するわけです。

たぶん、年末のノアのメインをめぐる騒動に関しても、他の団体のファンの方からすると今の私みたいな受け止め方だったんじゃないかと思うんです。

だって、メインからセミになった拳王選手の不満っていうのはストーリーに乗った怒りにも見えますし、会社の都合で変更されたという視点で言えばリアルな怒りにも見えますから。

こういうどちらにも取れる混乱っていうのは心配というよりも面白い寄りのエンタメであって、故に「ズンドコ」と評するんだろうと理解できました。

だから、他の団体の混乱も含めてこれから私は楽しんでいくことになると思います。まぁノアの混乱についてはファンの方の荒れ方を見ると真には受けたくないなぁとも思うんですけどね。

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