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サッカーが羨ましくて相撲ライターが無いものねだりをする話

サッカーが羨ましい。
ワールドカップのたびにそう思います。

オリンピックの時にも思いますが、ワールドカップの方がその思いは強いんです。


私はスポーツライターという肩書がありますが、主戦場は相撲です。ですからどうしても相撲の立場になって考えることが多いんですね。


相撲というのは「偉大なるマンネリ」の競技です。


年に6場所。
大相撲に在籍する力士の中で、闘い続けます。


変な話、同期の力士とであれば20年毎場所闘うなんてことも有りうるわけです。例えば稀勢の里と琴奨菊は幕内で66回対戦しています。毎回同じ対戦相手と戦い続けるために、相手を研究するためにこのような相手と稽古で闘うことすらあるんですよ。


もうずーっと、同じ相手に囲まれて、同じサイクルで闘い続ける。
その中で、優勝を競う。


世代交代のドラマとか、毎回同じ相手と戦い続けることによる因縁とか、ある時を境に傾向が変わるみたいな面白さはあるんです。


ただこれは、ずーっと見ている人にしか伝わらない。何かが変わる時には本当に響くものがある。そういうものを観たくて、相撲ファンは興味の濃淡はあっても年に90日も相撲を追っているんです。


そういう重みって、見続けていないと分からないんですよ。どれだけ凄いことなのか、どういうドラマなのか。これが相撲が国民的関心のあった時代だったらいいんです。でも、相撲のライターがいうのも変な話ですけど、相撲ファンだけの閉鎖的な世界になっているのが実情なんですね。


恐らくこれって、他の競技に於いても同じだと思うんです。


競技そのもののファンでなければ味わえない感慨がある中で、一見さんが本当に入りにくくなっている。マンネリの世界があるからこそ競技が存在しているのに、マンネリだからこそ退屈で、伝わりにくくて、そこまでして入ろうとはなかなか思えない。


だから、地上波で開催のたびに今放送できているのは、大相撲と中央競馬だけです。


有難い立場ではあるんですよ。こんな状況でもまだ多くの人に見てもらえる環境が残っている競技は殆どないわけですからね。


他の競技のファンの方からすると怒られてしまうかもしれません。こんなに恵まれているのに、まだ多くのものを望むのか?って。


でもね。
望まずにはいられないんですよ。
サッカーの4年に1度の熱を見ると。


相撲がマンネリであれば、サッカーは非日常の競技だと思います。


リーグというマンネリが大きな土壌として存在する中で、国際大会という非日常が用意されているんですよ。


国内外から最高の選手を集めて、最強チームを作る。
そして、海外の猛者と国の威信を賭けて闘う。
こんなのもう、漫画の世界じゃないですか。


リーグ戦を観るのはファンだけかもしれません。でも、これが日本代表という単位になると一気に国民の関心ごとになる。そしてそれは、全ての世界で共通なんです。


国技館では様々な力士のファンがそれぞれの想いを抱いて観戦しています。しかし、これがワールドカップになると、日本中がテレビやタブレットの前で想いを一つにして勝利を期待するんです。


同じ楽しさを共有する上に、想いまで共有できる。人気は前ほどではないかもしれないけど、サッカーって共通言語なんですよ。


オリンピックだと世界中がにわかになる。
でも、競技によって関心は異なります。


ワールドカップの時だけは、サッカーだけに集中できますからね。そして、世界中のファンの数も違います。本当に何から何まで大相撲と別なんですよ。


柔道がJudoになったのとは対照的に、相撲はあくまでも相撲です。国内に完結して、大部分が日本人、そして強いモンゴル人との闘いという軸になってしまいます。


つまり、当事者意識を持つためのトリガーが、サッカーの方が無数に存在するんです。


こういう競技が存在していて、ワールドカップが今まさに開幕しようとしている時に大相撲九州場所をやっていても、そりゃ勝てませんよ。


勿論相撲には相撲の良さがあって、そこが楽しいからこそ私は今相撲ライターなんていう肩書で活動している訳ですけど、サッカーという真逆の立ち位置の競技とその熱を感じる度にどうしても絶望的な差を感じてしまうことにはなるんですよね。


どうしようもないことだし、相撲がサッカーになることは出来ない。無いものねだりなのは分かるんです。


しかし、無いものの大きさを見せつけられるとどうしても考えてはしまうんです。相撲には相撲にしかないものを突き詰めていくしかないし、そうすることによって独自性を深めてここまで生き永らえてきたのだとは思います。


一方でワールドカップという世界中の熱が集結する大会と、そこに至る過程を目の当たりにすることによって感じるものはあると思います。


オフサイドが何かとか、代表選手の所属クラブとか、プレイスタイルがギリギリ分かる程度ではあるんですけど、この時ばかりはにわかファンになってしまう訳です。


だから私は、これからも無いものをねだってワールドカップの度にサッカーを観続けることになると思うんです。大相撲に無いものを求めて。


■Voicyに11/17放送をアップしました。

今日は初めて相撲ネタをVoicyで上げました。

noteは相撲封印していますけど、こういう環境だったら相撲について話すのもアリですね。力士とマネーという、誰もが興味ある話を選んでみました。

是非お聴きください!


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