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【ヘルスケア】なぜヘルスリテラシーを身につける必要があるのか?(前編)

これまでの記事ではヘルスリテラシーの定義や重要性,日本人のヘルスリテラシーの現状について考察してきました。

今回は『なぜヘルスリテラシーを身につける必要があるのか?』について考えてみたいと思います(2 本の記事に分けて書きます)。
# ヘルスリテラシーを身につけるべき理由
# 今ヘルスリテラシーが注目されている背景も踏まえて

▶︎ まとめ

● 医療の高度化に伴う意思決定の複雑化(前編)
● 国によるセルフマネジメント,セルフメディケーションの推進(前編)
● テクノロジーの進歩とその活用(後編)
● コロナ禍による健康への興味の高まり(後編)

▶︎ 医療の高度化に伴う意思決定の複雑化

医療は年々高度化しており,最近では再生・細胞医療や遺伝子治療,ロボット遠隔手術という言葉を耳にする機会も増えてきました。
製薬業界では1億円を超える高薬価な医薬品も市場に出回るようになりました。

高薬価な薬剤(一例)にご興味のある方はこちら↓
・ゾルゲンスマ:ゾルゲンスマの薬価1億6707万円へ 国内最高額(2020/5/13)
・キムリア:白血病治療薬『キムリア』,薬価3349万円で調整(2019/5/14)
・ニボルマブ:オプジーボ,11月から再び値下げ 約4割(2018/8/22)
※ニボルマブのように薬価引き下げが行われる高額医薬品もあります。

医療の高度化は患者さんに治療やケアのより幅広い選択肢を提供する反面,以下のような様々な問題をはらんでいます。
ヘルスリテラシーの観点からは特に4つ目の項目に関連して『治療選択肢が増えることで患者自身による治療方針に関わる意思決定を難しくさせている』という問題が大きいように思いますが,以下のいずれの問題点に関しても国民一人一人のヘルスリテラシーの向上がその解決に大いに寄与するものと思います。
つまり,ヘルスリテラシーの向上を図ることで,個人として大きな社会問題に貢献することができると考えることができます。

1)国民医療費の上昇(国家財政の圧迫):
平成30年度の国民医療費約43兆円のうち,薬剤費は約10兆円前後と言われています。日本では国民皆保険制度により保険診療の患者自己負担額に上限が設けられているため,特に高額・高薬価な医療の使用は国民医療費,ひいては国家の財政を大いに圧迫します。国民一人一人が自身の健康を主体的に管理し,医療にかかる機会を減らすことで,国民医療費の上昇を抑えることができると考えられます。

2)保健医療や国民皆保険の持続性の確保:
前述の通りこれまでにない高額な医療が登場することで,国民医療費の管理はますます困難を極めることが予想されます。これからも高額な医療が次々に開発されるとすると,既存の保険医療や国民皆保険の継続が困難となり,その見直しが図られる可能性もあります。そのような未来に備えて,国に頼るばかりでなく自身で健康を管理する力を養っておく必要があると考えられます。

3)医療従事者の不足:
少子高齢化により医療従事者の確保が難しくなることも相まって,医療の高度化・複雑化に伴い医療従事者(特に専門や認定を有する者)の不足が懸念されています。医療従事者に医療にかかる負担(治療方針の決定,患者さんの状況把握・医薬品管理など)を全て担わせるのではなく,患者自身が主体的に自身の病気・健康を管理することで,医療従事者の負担を軽減することに繋がると考えられます。

4)選択肢が増えることによる意思決定の複雑化:
これからは医師に治療方針を委ねるのではなく,自身で治療方針の意思決定に関与していくことが求められていきますので,いざという場合に備えてヘルスリテラシーを向上させておく必要があると考えられます。
エビデンスがあるわけではないですが,医療従事者が決める治療方針に漠然とした不安を抱えながら従うよりは,医療従事者と相談しながら自ら納得のいく治療を受ける方が幸せな未来が待っているようにも思います。
ご自身やご家族が大きな病気をされている方は実感されていると思いますが,急に病気になった時の不安や恐怖は想像よりも大きいものですし,その状況になって初めて自分の無力さを痛感する方も少なくないと思います。
その不安や恐怖,心配事を少しでも軽減するためにも,せめて日頃から自身の健康状態を把握しておいたり,何か不安がある場合には放っておかずに自身で情報を集めてみたりすることが大切だと思います。

▶︎ 国によるセルフマネジメント,セルフメディケーションの推進

前述の通り日本の国民医療費の上昇問題は早急に解決を図られるべき社会問題であると認識しています。

個人的な感覚としては,日本は税収を上げて医療をこれまでと同様に提供し続けるというよりは,国民一人一人に健康管理を促して医療費を抑制する方向に舵を切っているように思います。
そのため,これからはセルフマネジメント,セルフメディケーション,予防医療,未病などがキーワードになってくると考えています。
# 『ゆりかごから墓場まで』の社会保障が難しくなっており
# 健康のセルフマネージメントを推進している印象

一例を挙げると,2017年から開始した『セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)』があげられます。
# ざっくり言うと,ドラッグストア等で購入した一般用医薬品の購入費用に関して一部所得控除を受けられます,という制度です。
# 病院にかかるのではなく一般用医薬品の使用(自身での健康管理)を促進することで国民の健康増進に加え,国民医療費の上昇を抑えることが狙いだと思います。

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国が健康の自己管理を推進している背景を踏まえても,今のうちからヘルスリテラシーをコツコツと身につけておくこと必要があると思います。

次回は,今回の記事の後編を書いていきたいと思います。

お忙しい中,記事を読んでいただきありがとうございました。
少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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