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保護猫ユニのおはなし

ユニは、2022年8月21日、虹の橋を渡りました。

亡くなるたった4日前に体調が急変してしまったので、亡くなってしまうまでが本当にあっという間の出来事でした。正直まだまだ事実として受け入れることが出来ていません。

それでも、目の前にちっちゃくなって帰って来たユニは、紛れもないユニ自身なので、現実なんですよね。

ユニは、元保護猫として、うちに来てくれました。7年ちょっとの間ですが、ユニと過ごしてきた時間は心が暖かくなる満ち足りた時間だった・・・と、ユニを失ってしまった今、痛切に感じています。

人間というのは忘却の生き物と言います。ユニへの感謝の気持ちをずっと持ち続けたくて、しっかり記憶に残っているうちに書き留めておきたいという気持ちから、うちに来てからのユニとの日々の出来事を中心に、最初に保護していただいたご家庭でのお話や、その前に産まれてから保健所に持ち込まれてしまうまでのことを想像しながら、ユニの「一生」を振り返ってみたいと思います。

ペットは「家族」と言われます。もちろん動物が苦手な方もいらっしゃるでしょうから、すべての人にお勧めは出来ませんが、ユニのような猫でもワンちゃんでも、人間と動物との関係性は、心の中を暖かいもので満たしてくれます。

当然、生き物ですしペットは自分で自分の生活を管理出来ませんから、ご飯のお世話や下の世話まで、綺麗なこと汚いことすべてひっくるめて必要になります。

私自身は、子育ての時と同じ感覚を持ちました。ユニは言葉が話せないだけで、実の子供と変わらないくらい色々なことを伝えてくれました。そして私が悲しんでいると黙って寄り添ってくれました。

ペットは「飼う」とよく言われますが、私は「一緒に暮らす」が正しいと思うのです。飼うというと、上下関係になってしまいますが、まあ、お世話をしているという点で考えれば「飼う」なのかも知れませんが、同居した猫や犬がくれる時間は、気持ちが通い合って本当に心地よいものです。私にとってユニと過ごしてきた時間は、紛れもなく一緒に暮らしていた時間です。このかけがえのない、一緒に暮らしてきた大切な時間を、これから振り返ってみようと思います。

※ちょっと長い文章です。目次がありますので、項目ごと日にちを開けて順にでも良いので、お読みいただけましたら嬉しいです。


2015年5月、うちにユニがやってくる


2015年5月初めに、妻から就寝前に「猫飼いたい」と言われました。

実はその頃の自宅近くには猫が何匹かいて、そのうちの1匹がうちを自由に出入りするようになり、家族で可愛がっていたのです。

家の近くに居た猫たちは、いわゆる「地域猫」。その地域の猫好きなどの有志が、これ以上猫達が繁殖したりしないよう、また健康に落ち着いて暮らすためにも避妊・去勢をして、ご飯をあげて管理している猫をそう呼びます。

自宅近くに、おばあさんが独り暮らしをしている一軒屋がありました。いつも通っていた床屋さんに行くときに通る道沿いの家なのですが、庭にはいつも数匹の猫がいました。こんなにたくさん猫を飼っていらっしゃるのですか?と私がこのおばあさんに尋ねたことがありました。すると「飼っているみたいなものかも知れないけれど、うちでご飯をやってるだけだよ」との答え。

その方は8匹の地域猫を、ご飯やりや、避妊・去勢まで自費でやり、自宅の庭を開放して、猫を自由にさせていました。独り暮らしのおばあさんには、猫たちは大切な話し相手。そのうちの1匹、私達が「ナベ」と名付けたキジ白の女の子が、うちに頻繁に出入りするようになり、うちでもご飯をあげるようになっていました。

そのナベが、ある日を境に全く姿を見せなくなりました。

ナベが来なくなってからは心配になり、夫婦で保健所に問い合わせたり区役所に調査を依頼したりと手を尽くして探しますが、消息はつかめません。ナベだけでなく、おばあさんの家に出入りしていた猫が全部いなくなってしまいました。猫のお世話をしていたおばあさんは悲しんで、離れた所に住んでいたお子さんのところへ引っ越してしまいました。

どうも、自宅マンション裏の空き地に家を新築して引っ越してきたご家庭が猫嫌いのようで、そちらの方が地域猫すべての排除を依頼してしまったようです。この方のご自宅の庭はきれいな砂利敷きで、猫がトイレをするには良い環境です。庭中に猫除けのグッズがあり、お決まりの水入りペットボトルもずらり。猫が居なくなってからペットボトルがなくなっていたので、どうやらこちらの家主さんが「犯人」でしょう。

猫好きの妻は、ナベがいなくなってしまったことを悲しんで、私と息子が「(ナベを)うちに入れて飼ってもいいよ」と言っても「このままで良い」と断ってしまったことを、何度も後悔していたようです。うちに迎えていれば、業者に駆除されることはなかったでしょうから。

この事件があったので、妻は私に「猫飼いたい」と言ったのでしょうね。「猫飼いたい」と言った後に、私が「どんな猫を飼いたいの?」と尋ねると、妻は「キジトラで、女の子」と答えてくれました。

猫を家に迎える・・・と言っても、私にはペットショップという選択は端からありませんでした。それよりも不幸にして捨てられたり、保健所に持ち込まれる猫や犬がかなりの数で存在し、それらがすべて殺処分されてしまうことを知っておりましたので、迎えるとすればそういう殺処分から救われた子の中から迎えたい・・・と、常々考えていたのです。

保健所に持ち込まれたり、野良猫を保護したり、そういう猫達を一時的に保護して猫を飼いたいという希望の方につなぐことをボランティアでなさっている団体が、日本中に存在しています。これらの団体の方々が一時的に保護養育している猫達を「保護猫」と呼びます。

私は、保護猫を紹介しているサイトをインターネットでいくつか見つけ、その中で運営がしっかりしていそうだと感じた「ペットのおうち」というサイトから、妻の希望の「キジトラで、女の子」の条件に合う子を探しました。


ペットのおうち インターネットサイト

https://www.pet-home.jp/

探す条件はキジトラの女の子以外に、私達夫婦が健康できちんと責任をもって終生お世話が出来ることも必須の条件でしたので、この時点で子猫は除外していました。最近の猫は完全室内飼い、定期的なワクチン接種などで寿命が延びており、20年生きる子も珍しくありません。そうすると、うちでお迎えできる子は、5歳以上に限られて来ます。この時、私達夫婦はまだ50台前半でした。ですのであと15年なら、夫婦どちらかは確実に生きているでしょうから。

ユニは、このすべてに当てはまりましたが、候補の子は他にも2匹。でも、ユニの素直そうな眼差しに、私は惹かれてしまったのでしょう。紹介ページの写真を見て何か直感みたいなものを、感じたことが一番大きかった。


「ペットのおうち」でのユニの紹介

https://www.pet-home.jp/cats/saitama/pn61622/


自分の直感を信じた私は、他に現在でも譲受可能かどうかを問い合わせをした2匹の子にはお断りを入れ、ユニに譲渡の申し込みを行いました。


トライアル開始

ユニを保護していた団体の方に問い合わせをしましたら、その団体の代表の方から「大変難しい猫ちゃんですけれど、宜しいですか?」と確認をされました。

「はい、もちろん。うちで預かった以上は、必ず責任をもって終生愛情をこめて接します」と答えますが、次に実際にユニを養育なさっていた矢矢さんからご連絡いただいたときにも、また念押しで確認をされます。

「賢い子なので慣れればよい子ですが、それまでは大変になると思います。どうしてもこの子は難しいとなれば、お返しいただくこともできますが、一度トライアルでお渡しすると戻った時には猫にはかなりの負担になるので、そういうことがないようにしたいのですが、宜しいですか?」と、再度の確認。


うちに来る前、保護主さん「矢矢さん」のところでのユニの様子

https://ameblo.jp/2-23-7/entry-12030867433.html?frm=theme

保護主さん曰く、「うちに来たばかりはウルバリン」だったとのこと。

保護主さん家庭に引き取られてすぐ、東日本大震災がありましたが、地震によって壊れた天井から天井裏に入り込んで、ユニはそこに数日間「籠城」してしまったり、一生懸命愛情をもって接して下さっているのに、はじめは中々慣れてもらえず、ひっかき傷や噛まれた傷など、生傷が絶えなかったそうです。

ユニは、千葉県柏市の保健所に、元の飼い主が持ち込んだそうです。おそらくペットショップで生後半年程度の子猫を買ってみたものの、ご飯を上げてもおやつを上げてもトイレの世話をしても撫でさせてもくれず、手を出せば引っ搔いたり噛みついたりの状況が、続いたのでしょうね。それでもそのまま保健所に持ち込むなんて、酷い話ですが。保健所に持ち込まれれば、その日のうちに殺処分されてしまいます。柏市の保健所から連絡を受けた保護主さんは、殺処分ギリギリで、ユニを引き取ってくださいました。

そんな経緯を伺っていても、私はこれまでどんなに人馴れしていない猫でも懐いてもらえてきたので、きっとユニも大丈夫・・・と高をくくっていました。

引き取って初日が無事済んで、夜を迎えたところでケージの中で鳴きもせずじっとしているユニを見て、「家の中をちょっとは探検してもらおうか」とケージの入り口を開けておいたことが大失敗の始まりでした。

ユニの為に準備していたケージとご飯

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早く慣れて欲しいと焦っていたのでしょう。ちょっと冷静さを欠いていた私は、ユニがトイレも使っていない、ご飯も食べていない、水も飲んでいないことに気付けなかったんですね。

しばらくは開いているケージの入り口の様子をおとなしく窺っていたユニですが、ちょっと目を離した隙にケージから出てしまったようで、ユニの姿がありません。

その頃の自宅マンションは、まだ猫の生態にも慣れておらず家の中がまったく「猫仕様」ではありませんでした。家具や押し入れの隙間、そして大家さんがやった中途半端なリフォームで出来た隙間など、隠れるところも沢山ありました。また、ボロ(笑)ですので、物入や押し入れ奥の隙間などから壁の裏などに入り込まれたら大変です。

慌てた私は自分の部屋にいた息子に「(リビングの)戸を全部閉めて!」と大声で言って二人ですぐにリビングのすべての戸を閉め、とりあえずリビングからは出られないようにすることには成功します。

ユニを探し回ると、キッチン側の窓の奥に、リフォームで出来た隙間があったのですが、そこに潜んでいました。

このままではこのボロ家のどこに籠城されるか分かりません。何とかユニを捕まえようと大捕り物が始まりますが、ユニは戦闘態勢をとって、私に捕まえられないように警戒しています。窓枠の隙間やソファの下を猛スピードで逃げ回り、ありとあらゆる陰に潜んで逃げようとしますが、何とかキッチンへの追い込みに成功し、冷蔵庫を縦に駆け上がる(考えたらこれもすごい状況ですよね)ユニを捕まえることに成功します。

しかし、私の両手で肩のあたりを抑え込まれたユニは、まるでフクロウみたいに首を180度回転させて、私の左手の人差し指に噛みつきます。と同時に、それまでずっと我慢していたのでしょう。大きい方も、小さい方も、思いっきり巻き散らしてキッチンは正に修羅場になってしまいました。

おしっこ塗れ、そして流血戦になりながらも、ケージの中にユニを戻すことに成功しましたので、今度はケージの入り口にしっかり鍵をかけました。

それでも、何とか自宅の隙間などに入り込んで籠城されてしまう事態だけは避けることが出来たので、ホッとしました。

ユニに噛まれた私の左手の人差し指は、次の日に病院に行って診てもらったら、なんと骨まで届くほど強く噛まれていました。病院の先生には「猫には本気になったら人の骨ぐらい嚙み砕いてしまう力がありますよ。骨が砕けなくて良かったね」なんて言われる始末。

この事件は、こんな大けが(自分の失敗ですし)をしてしまいましたけれど、私はユニに強い愛情を抱くきっかけとなりました。慣れない人をそんな風に怖がってしまうほど、この子は怖い思いをしたんだろうな・・・と。「もっと人が信じられるように、この子の恐怖を取り去ってあげたい」という気持ちを新たにしました。私の左手はその後一週間は腫れが引かず、会社に行ったものの「そんな包帯グルグル巻きの手の運転手じゃ、お客さん怖がっちゃうから休め」と言われてタクシー運転手の仕事も2出番休んでしまいましたが。

上からラグをかけたケージの中は、安心の世界

結局、ケージの中でおとなしかったユニを見て、「ちょっと慣れたかな?」と思ったのが、甘かったんですよね。

その時の状況を、保護主の方にメールで報告すると、「里親あるある」だったようで。

保護したばかりの時のユニの状況と、やっと慣れたと思った保護主さんのご家庭からうちに来たという状況を、ユニの側に立って考えれば、ほんの数時間でそこが”安心出来る空間”だなんて、思えるはずがありません。

それと、私の気持ちの中に、「早くユニに慣れてもらって、もっと可愛がりたい」との焦りもあったのでしょう。次のステップは急がずに、まずはユニが安心出来る場所を作りましょう・・・と保護主さんからアドバイスをいただいたので、ケージをそれまで寝室で使っていた厚手のラグで覆うことにしました。

こうするとラグの下の部分は周りからの視線を気にすることなく、寛ぐことが出来ます。

結局、これが一気にユニとの距離を縮めることに繋がりました。コミュニケーションを深めるには人間だって猫だって変わりません。自分の安心出来る環境を作ってあげることがまず大切だと、この時ユニに教わりました。

大きなラグを掛けたケージの中のユニ

でも撫でている私の左腕は傷だらけです(笑)

このユニの固い表情が、この時のユニの心境を表しています。

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おなかに触れた!そして家族全員にナデナデ

ラグを掛けたケージの中ではありますが、ユニは安心してご飯を食べ、トイレもしたいときに出来るようになりました。

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ラグを掛けた状態のユニと、ユニを撫でる私と妻

私達家族は、ユニへの声掛けをかかさず、とにかく話しかけるようにしました。とは言え、ラグをかけてケージの外から見えなくなる場所にいるときは、あえて声掛けしないように、しました。こちらは可愛い可愛いで近づきたい気持ちがあったとしても、受ける側が「今は嫌だよ」という気持ちなら、迷惑でしかありませんから。

トイレの掃除やご飯の交換は妻と私と交代で行っておりましたが、仕事柄明け番や公休には一日中家に居られることを利用して、とにかくユニと話すことを心がけました。

すると、思ったよりも早く、ユニは撫でられることを嫌がらなくなりました。むしろお腹をみせて「もっと撫でて」と言っているようにも思えます。

お腹を見せてくれるようになったユニ この時で2か月経っていました

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さらに2か月後 ケージの外でもナデナデして!とせがむ様になり、息子と妻で「2人ひと猫」

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保護主さんが苦労して心を開いてくれたユニは、元々が賢い子だったので、私達にも加速度的に心を許してくれるようになりました。

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ソファの上を独占して寝てしまうようになるまで、5か月。


お見送りが出来るようになりました

私の仕事はタクシー運転手です。

朝8時に営業所を出庫し、翌日朝4時までに帰庫するサイクルの「隔日勤務」でしたので、江東区にあった営業所に間に合うようにするためには自宅を朝6時前に出なくてはなりません。

妻も仕事をしていましたので、私に付き合わせて早起きするのはあまりに酷です。私は家族3人分の食事の準備をし、自分だけ食べ終えて家を出るのですが、ユニがこの時間を覚えてくれて、出勤の前に玄関までお見送りをしてくれるようになったのです。

いってらっしゃいにゃ

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まだうちに来たばかりで5歳ですから、ちょっと子猫の面影もあって可愛いです。


押し入れ大好き

加速度的に慣れてきたユニではありますが、基本「ビビり」(笑)

物陰や暗い所が大好きで、目を離すとこんなところに入り込みます。

おこもりさん

おこもりさん(笑)

元々お布団が大好きなので、暗くてお布団でいっぱいの押し入れはさしずめユニの”パラダイス”(笑)


Gから「ぶし」へ

「G」と呼べば、お察しの良い方でもそうでない方でも、おおよそあの「生命体」を想像しますよね?

ユニはなんとそのGをハントして、食べてしまうようになってしまうのです。

出番の日私は、家族3人分の食事の準備をして、自分の分を食べ食器を洗って出かけるのですが、準備の為に4時頃に目覚めると、何やら怪しい足の部分だけ、フローリングの床に落ちていました。

Gの足だけです。

「え、本体は?」

ユニが食べちゃったんでしょうね。私がユニに「なんか捕まえて食べたの?」と聞いても、ユニは知らんふり(笑)

そんなGの足だけ残された、まるで推理小説のような事件は、その後数回続いてあることから無くなりますが。

いくらなんでも、Gを食べてしまうのは感染症やら衛生面からも不安です。そこで考えたのは「食べ物なら他に好きなもの上げたら、食べなくなるかも?」という単純明快なこと。

その時ユニが、いつものご飯以外に好んで食べていたものがありました。妻が鰹節を少量、ユニに食べさせていたのです。しかしこれは人間用、もっと塩分を少なくしないと、猫は食べられません。

ちゃんと猫用の鰹節も売っているんですね。それを発見してから、毎日通常のカリカリ(総合栄養食と呼ばれる、バランスの良いハードタイプのご飯)以外に、夕方に1回だけ、猫用の鰹節をユニにあげることにしました。

鰹節は、我が家では「ぶし」と呼びました。賢いユニは、「ぶしあげるよ、ご飯だよ」と言うと、ケージに入って目を爛爛と輝かせるようになりました。

こんな顔していました。これをうちでは「ユニがテカテカしてる」と呼んでいました。目の前においてあるユニ専用のコレールに、猫用の鰹節をひとつまみ乗せると、いつもきれいに食べきっていました。

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「ご飯だよ」というキーワードが、大好きな「ぶし」だと覚えるのも一瞬でした。

この「ぶし」をもらうようになってからは、Gの足の残骸を見かけることはなくなりました。でもそれって、Gの味と鰹節がいっしょってこと?(笑)


お膝に乗っても、良いの?

ユニは、ものすごく臆病で引っ込み思案な猫です。保護主さんのおうちでも、スリスリや抱っこ、お膝に乗っても拒否しないまでにはなったとのことですが、基本的には「自分から自分のしたいようにする」という性格ではありません。

甘えたくても「撫でて」とか「抱っこ」という表情をすることは絶対にありませんでした。

妻がソファーに座っていた時です。私達家族はユニが黙って動きを止めている時には、こちらから「いいよ」の意思を伝える為に、ユニに必ず声掛けをしていました。

ソファーに座った妻が、ユニに「おいで」と何度も話かけると、ユニは「お膝に乗っても良いの?」という顔で、妻を見つめました。

妻はその顔を見てからも何度も「おいで」を繰り返しました。

ユニは、意を決したのか自ら妻の膝の上に、不格好ですが乗りました。

どこか不安なのでしょう、片足がソファーの座面に着いたままの格好で、妻の膝の上に自分から乗ることが出来ました。

何事も練習ですね、膝の上での身体の委ね方は、だんだん上手になって行きました。しばらくは膝の上に乗りながらも、後ろ足の片方は床につけたままだったりソファーの座面に着いたままだったりしましたが、だんだん全身を膝の上にゆだねることが出来るようになりました。

ユニは本当に何でも控えめで、自己主張のない子です。でも、お膝の上の乗り方も自分で慣れて行くことで、だんだん上手になって行ったのです。お膝の上は気持ち良い、安心できる場所だったのかな?



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妻の膝の上に乗るユニ だいぶ様になって来ました


猫が落ちています


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猫は、その空間が安全だとわかると、野生を失うようです(笑)

こんな感じで、これが「猫」だとは思えないような姿で、フローリングや絨毯の上に落ちていることが、多くなって来ました。

ここが、自分の居場所だって理解してくれているんですよね。

私はユニのこの姿を見る度に、何とも言えない幸せな気持ちになることが、出来ました。私達がユニを愛しているのと同じように、ユニが私達を信頼してくれる証の姿ですから。

猫と暮らすことの特権ですよ、これは。


引っ越し移動は大変

2018年に、息子が就職の為にうちから巣立って行きました。

ユニを迎えた時の自宅は賃貸のマンションで、本当は「ペット禁止」なのですが、大家さんとは黙認状態でユニを迎えておりました。

そのマンションはユニを迎えてから大家さんが変わり、それと共に黙認も続ける訳には行きません。ですからペット可の物件に引っ越したいとは考えておりましたので、息子がうちを巣立ったタイミングで、正式に「ペット可」の物件へ転居しようと決断しました。

ユニの臆病な性格を考えると、結構不安ではあったのですが、私は事業に失敗し、タクシー運転手となって生活再建中の身です。息子の一部屋を主の居ないまま、開けておくほどの余裕もありません。

物件は探し出して何とか確保しますが、ビビりのユニをどう引っ越しさせるかは、結構悩みました。

最初はケージにユニをいれたまま、引っ越し屋さんに運んでもらおうなんて甘い考えだったんですよね。

でも、引っ越しの業者さん、うちはアート引越センターにお願いをしておりましたが、「ケージに猫を入れて運んで欲しいのですが」と担当の方に尋ねると、「生き物をトラックの荷台に入れることは出来ません。ワンちゃんや猫ちゃんは必ず依頼主さんに適切な方法で移動していただくことになります」とのこと。

ユニの臆病な性格を考えると、慣れたケージだったら大丈夫かななんて考えた私が甘かった。そりゃそうですよね。引っ越し会社のトラックの荷台は荷物を載せるところで、生き物の移送は想定していません。

ただ、冷静になって考えれば、ケージに入れなくてもキャリーを使えば何の問題もないのです。私はユニをキャリーに入れ、引っ越し先にユニを移動させることにしました。ユニはビビりでうちの家族以外の人に会ったら逃げ出してしまうかも知れない・・・なんて勝手にケージに入れて移動が最良で唯一の策と決めつけてしまっておりました。でも、今回の引っ越しは同じ区内だし距離はほんの数キロ程度です。病院に行ったと思えば変わらない時間で移動することが出来ます。

こんな「冷静になって考えれば何の難しさもない」ことでも、当日になると人間はテンパってしまいます。どんなに緊張する場面でも、本当にその方法で良いのか?と、今一度振り返る習慣を、お勧めしたいと思います。

引っ越しは、ユニをキャリーに入れた状態で部屋から荷物を運び出してもらい、荷物はアート引越センターさん、私達夫婦はキャリーのユニと一緒に自家用車で引っ越し先へ移動します。

引っ越し先では荷物を入れる前に真っ先にケージの設置場所を決め、ユニをキャリーからケージへ移します。すべての荷物を運びこんだ後、家中の窓が締まっていることを確認して、ケージのドアを開けました。

すると驚いたことに、ユニは怖がることなく、自分から部屋中の探検を始めました。自分の「ホームポジション」であるケージがそのままということもあったかも知れませんが、そもそもユニはこの引っ越し先の部屋に悪い印象がないようで、「引っ越ししたらユニはしばらくケージの中ばっかりかな?」との心配が杞憂に終わったのは本当に驚きました。

猫にも、場所の相性はあるんでしょうね。

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まだ引っ越しの片付けも終わらない頃。ソファの上で以前と変わらず眠っているユニ。


新しいおうちは天国

引っ越し先は、ユニを迎えたマンションとは違って、1日中どこかの部屋でお日様が当たるおうちでした。「角部屋」なので東側・北側・南側と三方向に窓があり、また東側の窓の外には小さいですけれど公園もあるので、外を眺めて過ごすにはとてもいい環境です。

ユニは季節によって変わる日差しと風通しで、朝から午前中までは居間の南向きの窓、午後からは日が差してこない北側の寝室の窓と、日当たりに応じてくつろぐ窓を移動しました。
何しろユニは窓が大好きです。ビビりなので窓の外に出るのは怖くて嫌なのですが、ガラスの内側や網戸の内側のように、「守られている」場所であれば大いに寛ぎます。1日の太陽の傾きに応じて、日の当たる窓が選べるこのおうちは、ユニにとっては「天国」だったのかも、知れません。

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寝室の、妻の枕の上で寛いで窓の外を眺めるユニ。


ケロテロ対策

ユニは体重が3キロしかない、小さな猫です。窓際にいつもいるので、同じマンションに住む方に、窓際に居て外を見ているユニの姿をみるのを楽しみになさっておられる方が何人もいらっしゃって、そんな方から「(お宅の)猫ちゃんはちっちゃいですけど、子猫ちゃんですか?」と、尋ねられることが何回もありました。

でも、ユニは子猫ではなくて立派な大人の猫。引っ越しした当時はうちに来て3年目、8歳を迎えていました。

8歳になってもユニは身体が小さくて、食道も細かった影響か、勢いよくカリカリを食べ過ぎると、それが食道でふやけて膨らみ苦しくなってしまうのでしょう。2日に1回程度の割合で吐き戻してしまうのです。

うちではこの吐き戻しを「ケロ」と呼んでいました。

もどす場所が床だったら良いのですが、ユニが大好きな押し入れの中でもケロすることがあります。そうなると押し入れ内は修羅場になってしまいます。シーツのお洗濯だけで済めば良いですが、お布団に響いてしまうと洗うことが出来ないので、廃棄してしまうほかなくなってしまいますから。

場所を選ぶことのない、ユニの「ケロ」ですが、それが最悪の場所で発生し、たくさんのお洗濯や物の廃棄に至ってしまうような場合は、もうほとんど「テロ」(笑)

しかも、私が明日の出番に備えて早く寝ようとしていたり、綺麗にシーツをお洗濯して、お布団に掛けなおしたタイミングに限って、この「ケロテロ」が発生してしまうのです。

亡くなった今では、どうしてそんなに叱ってしまったのだろうと、反省しきりですけれど、眠さに負けたりするとどうしても気が短くなって、ユニを強く叱ってしまうこともありました。そんなことは私自身したくはなかったので、最悪の状況を招く押し入れだけは止めて欲しいと、押し入れを閉めてしまうことにしました。それまでは中の換気の意味も含めて、掛布団を仕舞った後でも押し入れは開けっ放しにしていたのですが。

でも、ユニは押し入れの引き戸を閉めておくくらいでは自分で開けてしまうので何の意味もありません。押し入れも「ロック」してしまわないと、押し入れ内の”惨状”が、再発してしまう可能性を否定出来ません。

こんなものを導入しました。

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引き戸と引き戸の間に差し込むと、ゴム製なのでしっかりと引っ掛かり、開けることが出来なくなります。

効果はてきめん。ユニが一生懸命押し入れの引き戸を開けようとしても、しっかりロックがかかって絶対に開きません。ユニは何度か挑戦しますが、どうやっても開かないと覚えると、このオレンジ色の物体が押し入れの引き戸に挟まっていると、開けることをしなくなりました。(ということは、このロックがかかっていないと、やっぱり押し入れを開けて入ってしまうんですが)

亡くなった今は、「押し入れは大好きだったから、ケロが少なくなったらロックしないで自由に出入りさせれば良かったかな・・・なんて思っていますが、それと言うのもユニのケロの根本的原因を解決してくれるご飯が、見つかったからです。

https://jp.unicharmpet.com/ja/allwell/home.html

ユニ・チャームペットさんの宣伝をする訳ではないですが、このご飯に変えてから、ユニのケロの回数が激減したのです。

ユニは、「ぶし」が大好きですが、ご飯についてもチキン味とかマグロ味、ターキー味とかのものは殆ど食べません。必ず「カツオ」でないとほとんど食べてくれないのです。

でもこのオールウェルのご飯は、カツオ味がありません。ちょっと不安でしたがフィッシュ味を試しに出したところ、これが意外とも思える食べっぷり!

ただ、このオールウェルに切り替えたのは2022年に入ってから。ですので余計にこれでケロが減ったのなら、ユニに押し入れに入れてやれば良かったと、亡くなってから思うようになってしまいました。もっと好きにさせてあげれば、と。


ユニが保健所に持ち込まれた理由

ここからは私の、ユニと暮らした実感から生まれた想像の話です。

ユニはとても賢い猫です。私達夫婦のそれぞれの気持ちを察して、甘えたりねだったり、時には距離を置いてくれたりと、ここまで一緒に暮らしやすい子はあまり居ないんじゃないかと思います。

それと、ユニはおもちゃで遊んだりしない代わりに、人間の食べ物に興味を示して食べようとしたり、テーブルの上のものをいたずらして下に落としたり、ティッシュペーパーやトイレットペーパーをたくさん「無駄遣い」するようなことは、一切しない子です。

それでもユニの最初の飼い主は、ユニを保健所に直接持ち込むという、「暴挙」に出てしまいました。

これは本当に想像の域を出ませんが、最初の飼い主は知り合いの人に産まれたばかりの子猫を譲ってもらうか、ペットショップでその外見の愛くるしさから衝動的に子猫を購入するなどして、かなり安易にユニを飼おうと思ったのではないでしょうか?

本来は甘えん坊で人間と暮らすことに何の抵抗もないユニですが、その前のハードルとして、人見知りで怖がりな性格も併せ持っていました。

そんなユニは、最初の飼い主になかなか慣れずにいたのでしょう。その最初の飼い主がどんなふうにユニに接していたのかは分かりませんが、ご飯をあげてもトイレをきれいにしても、撫でようとするとフーシャーばかりで引っ掻いたり噛みついたりの散々の時間を過ごしたのかも知れません。

ユニの肉球は、火葬の前にそこの担当の方から「とっても綺麗な肉球ですね。野良ちゃんだったことがないんでしょうね」と言われるほど、綺麗なものでした。そんなことからも、ユニはまったく野良の経験はなく、最初の飼い主からそのまま殺処分となる可能性が高い保健所に持ち込まれたのではないかと、考えております。

また、火葬の後お骨を集めて骨壺に入れるときに、担当の方から「後ろ足がものすごく立派で、すべてのお骨がとてもがっしりしている」とのお話をいただきました。ミックスではなくて、骨格の特徴からマンチカンではないですか?と尋ねられました。

と言われても元保護猫のユニですから、全く分かりません。でも、小さい身体なのにがっしりとした骨格、穏やかで賢い性格などから想像すると、やっぱりユニはマンチカンだったんだ・・・と考えるようになりました。ですからユニは最初の飼い主に、ペットショップなどで衝動的に買って迎えられたのでしょう。我が子可愛さでいう訳ではないですが、ユニの顔は丸顔でとても均整がとれた凛々しい顔立ちです。子猫の頃なら「この子可愛い!」と衝動的に迎える決断をしても、おかしくなかったのではないでしょうか?

私達はユニを迎え入れる時点で、その「猫種」が何であるかは、何の意味もありませんでした。

でも、迎えた時点では「ミックスでキジトラだから、20歳くらいまでは一緒に暮らせるかな?」との思いでいたので、思いもかけず推定12歳と6か月でユニが虹の橋を渡ってしまった理由は何なのか、心の整理をしたい気持ちが強くなっていました。

マンチカンであれば、遺伝的な問題も多く、早逝する子も多いので、この急病と突然の死も、避けられないものだったのかな、と思えるようになったのです。


幸せな日々

ユニは窓が大好きでした。窓から外を見ているので、私が仕事を終えて帰ってくる午前5時でも、窓際に居て外を眺めていることもしばしば。

仕事でどんなに疲れていても、窓に居るユニを見るだけで、仕事の疲れも一気に吹き飛んでしまいます。

帰宅した時に殆どの場合は、妻のベッドの枕元にあるユニの定位置で、ユニも横になっていました。「ユニ、ただいま」と小さな声で話しかけてユニの顔に鼻を近づけると、ユニはいつも鼻キスで答えてくれました。

この瞬間は、本当に幸せでした。自分を迎えてくれる暖かい存在。「大事だよ」「大好きだよ」「可愛いね」と愛情を込めた言葉をかけると、それ以上の愛情で答えてくれる。

人間であれば、「あの人はこんなこと言ったから嫌い」とか、言ったこと、したことなどで好き嫌いが生じ、その人との関係を疎遠にしたり断ち切ったり、しますよね。

でも、猫はそんなこと絶対にしません。こちらがちゃんと向き合っていれば、必ずそれ以上の愛情を返してくれます。

猫は「愛」の生き物です。


臆病な脱走

ユニは本当に怖がりです。うちに引き取る前に、保護主さんの団体のかにさんずにゃみりーさんから提示されていた条件にも、「網戸にもロックをかけて脱走対策をしっかりしてください」というものがありました。

ユニを引き取る前に、住んでいたマンションのすべての網戸に網戸ロックを取り付け万全の対策を取りましたが、ユニはそもそもお外が怖いのか、開け放した窓には近づこうとしません。網戸ロックも殆ど「宝の持ち腐れ」で、網戸を自分で開けようともしないユニには、全く無用の長物でした。(それでも網戸を使う時には念の為毎回ロックはしていました)

そういうユニの性格もあって、「脱走」なんてあり得ないと思っていたのですが。

ある日、私が出番で居なかった夜。妻が居間の窓も網戸も閉め忘れ、カーテンだけがかかっている状態になっていました。こんなことは後にも先にもこの日だけだったのですが、ユニはその開いた窓の向こうが、おそらく別の部屋の入口か、大好きな押し入れでもあるんだろうと、勘違いをしたんでしょうね。

そこからお家の外に出てしてしまったのです。

私は仕事から帰宅しても、いつもは鼻キスや窓からお帰りなさいとお迎えしてくれるユニの姿が無いことに不安を感じ、部屋中を探し回りますが、ケージにもソファの下にも、カーテンの影にも居ません。

最後に、「ここに潜んでいるかな?」と居間のカーテンを引いた瞬間、窓が開いているのに気づき、血の気が引きました。

ユニはこの窓から間違って出てしまったのでしょう。

ユニが居なくなったことに気づいたのは私が明けで帰宅した早朝です。すべての手続きは朝9時過ぎるのを待って動き始めましたが、まずは所轄の警察に届け、次に保健所にも連絡します。飼い猫は家の外に出てしまうと、法律上は「遺失物」の扱いになってしまうそうです。

なので万一猫が居なくなってしまったらまずは警察への届け出が必要なのです。そして猫や犬が飼い主から離れた状態で確認された時には、まず保健所が管轄し管理するということですので、そこで「野良」と判定され処分されることがないように、保健所にも飼い猫が居なくなった報告をする必要があります。こうすることで、家を出てしまった猫が誤って殺処分されることを防止する意味合いもあります。

役所関係の報告は済ませましたが、肝心のユニ自身を探す術がありません。自宅の周囲を探そうにも何の手掛かりもありません。とりあえず周囲を妻と手分けして探しますがユニのビビりの性格では、明るいうちに人間の目につくところにいるはずがないので、木の影や草むらなど、暗くて人の目が届きそうもない所を中心に探し回ります。中々見つからないので範囲を拡げて半径500メートルをしらみつぶしに探して回りました。

私が明けで帰宅した午前5時からお昼過ぎまで自宅近くを探し回りますが、何の手掛かりもありません。ユニの性格を考えると、怖くて外を歩くことは出来ませんから、私達が見つけない限り、栄養失調で死んでしまうことは確実です。

途方に暮れていると、ユニが居なくなってしまったことを知らせた保護主さんからメールの返信がありました。

「ユニちゃんの性格から、半径50メートル以内に絶対潜んでいます」

この言葉に私はピンと来ました。

うちのマンションには、個別に物置があって敷地内に倉庫が並んでいます。その倉庫の床下にいるんじゃないかと、床下の隙間を懐中電灯で照らして探し回りました。

倉庫の東側の床下を照らした瞬間、二つのキラッと光るものを見つけました。ユニの目です。

「ユニ!」と声をかけると、「ニャ・・・」とか細く返事をしてくれました。この声を聞いて、本当に胸を撫でおろしました。もし見つけることが出来なかったら、ユニの性格上そのまま飢え死にしてしまいますから。

とは言っても、そこに居ると分かっただけで、ちゃんとお家に連れて帰らなければ意味がありません。でもユニは、怖くて動けないんですね。いくら私達夫婦が「ユニ、おいで」と声をかけても、そのままうずくまって進むことが出来ません。

とりあえず、妻と交代でユニを見張ることにしましたが、いつ出てくるか分からない状態では一時たりとも目を離すことが出来ないので、倉庫の床下の出入り出来そうなところを全部塞いでしまい、ユニの目が見えるところも、どちらかが居ないときは塞いでしまうことにしました。

ユニの居場所は分かりましたが、臆病なユニは声をかけても外に出てくれません。出入り可能なところはすべて塞いだので、開いているところに捕獲機を設置して、そこに誘導しようと考えました。

まずは捕獲機を売っているところを探しますが、この時点で時間は夕方の16時半。そもそも当日中で捕獲機を買うことが出来る、在庫のあるお店が、自宅近くのホームセンターやペットショップには皆無でした。また在庫のあったところでも、捕獲機とは言っても農家の方などが、作物の食害を防ぐ目的で対象の動物を捕らえる構造のものしかなく、そんなものを使ったらユニが大怪我してしまいそうなものしかありません。

そこで私は、「きっと、野良猫の保護作業などで使うだろうから、千葉市の動物保護指導センターなら貸してくれるかも知れない」と思い付いたのです。

早速ネットで動物保護指導センターの電話番号を知らべ、事情を説明し捕獲機を借りることにしました。

この方法を思いついた時点で、時間は動物保護指導センターの定時間際の、午後17時半。18時の定時までに来てくれれば、お貸し出来ますとの言葉をいただき、私は急いでクルマを飛ばして保護センターに伺います。残念ながら18時には間に合いませんでしたが、担当の方が待っていてくれました。こういう厚情は、本当に身に染みてありがたいですね。

なんとかユニを見つけた当日に捕獲機を設置したものの、ユニの性格上そこに自分から入ることはあり得ません。とりあえずは捕獲機以外に出入り可能な所はダンボールやお風呂マット、そしてブロックで塞いで、捕獲機の中にユニの大好きな「ぶし」を乗せたお皿を置いて、ひとまず一晩待つことにしました。

一晩待っても、ユニは捕獲機の中に入ってはいませんでした。やっぱりいくら猫も傷つけないタイプとは言え、禍々しい雰囲気のある捕獲機の中には、どんなにぶしが好物でもユニの警戒心の方が勝ってしまっても無理はありません。

次の朝は、ぶしで誘えないなら強硬手段でと、ユニの見える側から自宅にあった物干し竿でユニをつついて捕獲機に誘導しようとしますが、ユニは硬直してその場を動こうとしません。

まあ、前から棒でつつかれて前に進む人間もいませんよね?そこで倉庫の反対側の床下から物干し竿でつつけば、こちら側に出るかも知れない・・・と物干し竿を二本つなげて床下に入れますが、何しろ倉庫が長いので届きません。

もっと長いものはないか・・・と閃いたのが自宅近くの貸し農園にある、園芸用の細い竹のような模様の入った棒。植えた作物を守るためにネットを張る骨組みにしたり、キュウリやナスなどが重くなって幹が折れないように支える為に使ったりするものです。

この貸し農園に電話を掛け、事情を説明しこの園芸用の棒を貸して欲しいと電話を掛けましたが、有難いことにすぐにOKをもらえました。

その棒をガムテープで10本つなぐと5メートル程度の長さになりました。これでユニの居る場所まで何とか届くことを倉庫の外側から確認して、反対側から棒を入れました。

ユニが出てきた時に備えて、反対側から私が棒でつつき、「出口」付近は捕獲機を外して毛布を拡げた妻が待機する体制を取りました。捕獲機がある状態では、怖がってその場にすくみこんでしまって出て来ないと考えたからです。

自分のお尻から棒が出てきて、ユニは驚いてものすごい勢いで床下から飛び出しました。妻は毛布を掛けようと投げますが、ユニの動きのほうが早かった。この時、毛布側を私がやるべきだったと後悔しましたが、時既に遅し。

床下から出したものの、ユニを取り逃がし、挙句見失ってしまい私達夫婦は途方に暮れてしまいました。倉庫の目の前にある畑や、その近くの用水路、そして雑草だらけの空き地に入り込まれたら、それこそ捕まえるのは困難です。その結末は想像するに恐ろしいことでしかありません。

絶望しながらも、「また、床下に戻っていてくれないかな?」と、倉庫の床下を覗き込みました。するとそこにまた、キラッと光る二つのものが見えたのです。そうです、ユニは目にも止まらぬ速さで逃げ回ったあと、やっぱり隠れる場所がここしかなかったので、また床下に戻っていたのです。

これは本当に嬉しかった。居場所が分かるだけでまだ希望が持てますから。

それでもこのままではユニをお家に戻すことは出来ません。かといって、強硬に後ろからつつけばまた取り逃がす可能性も高く、次に失敗すれば2度目なので、ユニがまた床下に逃げ帰ってくれるかも分かりません。

このままの状態では、ユニはご飯を食べることもお水を飲むことも出来ません。猫は、人間と違って何も口にしなくても数日は大丈夫らしいのですが、あまり長引くようなら健康状態も心配です。

自分達で打つ手が無くなった私達は、ここでプロフェッショナルの「ペットレスキュー」を依頼することにしました。

お願いしたのはこちら。

約束の時間に来られた担当者の方は、捕獲機の設置状況を確かめ、このままでは捕獲機そのものが明るい外にあるので、出来るだけ床下と同じ明るさにしましょう・・・ということと、おびき出すには好き嫌いは抜きにしてにおいの強い食べ物が良いでしょうと、ウェットフードにまたたびをかけたものに、さらにぶしを添えて捕獲機に設置しました。

また捕獲機の禍々しく見える部分には、使い慣れたタオルや敷物で隠し、ご飯のある所まで自然な感じになるように配置します。

それでもユニは微動だにしません。

ペットレスキューの方には、「ユニちゃんにとにかく声掛けしてください。とても怖い状況にあるので、飼い主さんの声で勇気が出ますから」とのアドバイスで、私もずーっと声をかけ続けました。

ユニは、か細く「ニャ。。。」と声をあげながらも、少しづつ捕獲機方向に動き始めました。

昨日、農園の方にお借りした棒はそのままです。ここで勝負と担当の方は判断したのでしょう。昨日私がやったように、倉庫の反対側からユニに届かない程度に棒を入れて、捕獲機への誘導を試みます。

ユニはもう限界に近かったのでしょうね。フラフラになりながら、覚束ない足取りながらもなんとか捕獲機に入ったので、そこですぐに捕獲機の入り口を閉じます。

玄関で捕獲機を開けますが、そこからユニは本当にフラフラで、「ニャ~、ニャ~」と小さな声で鳴きながら、お家に入りました。ユニのひげは綿埃がいっぱい。目の上も眉の部分にも蜘蛛の巣と綿埃が絡まり、まるでドリフのコントみたい。

ユニには毎年三種ワクチンを接種していますが、倉庫の床下では衛生状態も心配なので、そのままお風呂場へ直行し、シャワーですっきり洗い流しました。

これだけのことがあったのに、シャワーが済んでその日は仕事に行った妻が帰宅すると、何事もなかったかのように妻に甘えます。

でも、本当は嬉しかったのかな?ビビりのユニの相当に臆病な脱走劇は、これで終了しました。


ちぐらは天国

ユニは暗くて狭い所が大好き。ついでに暖かい所だったらもっと好きかな、思って、Amazonで見つけたちぐらを買ってしまいました。

寝室のベッドの横に置いた衣装タンスの上に置いては見たものの、ユニは当初は全く興味を示さず、素通り。

ちぐらの大きさはユニの体重約3キロにはちょうど良いくらいのものを選んではいたのですが、警戒心もあるのか近づいては居ても中に入るところまでは行きません。

そこで、ちぐらの中に合法ドラッグ(笑)「MTTB(マタタビ)」をちょっと塗してみました。

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やはりマタタビのにおいには反応したようで、ちぐらの中に入り込んで何やらクンクン鼻でにおいをかぎはじめました。におい付け程度にしか塗していないので、ちぐら内部を舐めたりはしませんでしたが、いったん入ってしまうと、心地よさに気づいたのかそのまま居ついてしまいました。

ちょっと小さめということもあって、ユニも身体を預けやすいのでしょう、また中に入っていても外はちゃんと見えるので、ユニには丁度良い、距離感だったのかも知れません。

このちぐらに入ることを覚えてからは、かなりの長時間を過ごすようになったので、ダメになるのも結構早くなってしまいました。中で爪とぎをしたりもしていたので、2年も持たずに”2代目”のちぐらを購入。

こちらも交換してからはなかなか中に入ってはくれませんでしたが、再び「MTTB」を中に塗すとユニはIN(笑)。そして今回のピンク色のちぐらも、お気に入りとなりました。


ベッドカバーの上も天国

ユニは身体の小さな猫です。食道も細くカリカリを勢いよく食べると、中でだんだんふやけて膨らんで、そうなると息苦しくなるのは自明。気道を確保する為に、”吐き戻し”してしまうこともほぼ毎日でした。

しかも、止めておけば良いのに、カリカリを食べた後お水を飲んでしまうんですね。そうなると水を飲む前に食道に入っていたカリカリが水で一気にふやけてしまうので、水を飲んだ数分後にはケロテロ発生です。

家の中で、どこでケロテロされても困ってしまうのは変わりませんが、一番避けたいのはやはりベッドの上です。

シーツを外して洗えば済む程度なら良いですが、下手をするとマットレス本体に響いてしまいます。となると洗濯は不可能ですから買い替え必至です。

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少しでもケロが下に染みてしまわないように、ベッドカバーを「導入」しました。しかしこれをユニは意外と気に入ってしまいます。ベッドのマットレスの感触がかっちりとして、居心地が良くなったのでしょうね。

私が出番の日には、まだ妻がベッドを使う可能性があるのですぐにカバーをかけることは出来ませんが、私の公休の日には二人とも起きていればベッドをもう使うことはないと理解しているらしく、ユニがやって来て「早くベッドカバーを掛けろ!」と言うが如くにニャーニャー鳴き始めます。

写真はベッドカバーを初めてかけた時。既に寛いでいるユニですが、おそらく自分の為に用意してくれたんだと感じたのではないでしょうか?


ファンヒーター前も天国

ユニもやっぱり猫(笑)。

前足も後ろ足も短いマンチカンのような体形のユニは、高速道路の「動物注意」の標識で出てくるタヌキのような体形(失礼)。

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仰向けになってファンヒーター前で寝転がっていると、タヌキ見たい(笑)

でもユニは本当に気持ち良い時にだけ、この格好するんですよね。猫が落ちていますの時の写真と同じように、平和この上ない表情を見せてくれるファンヒーター前のユニの姿。猫は家中で一番居心地の良い場所を見つけると言いますが、正にその通りでした。ユニのこのような姿を見ることは、何にも代えがたい幸せでした。


無残なソファー

臆病でビビりなユニですが、爪切りも歯磨きも基本させてはくれません。年1回のワクチン接種の時に動物病院で爪を切ってもらったり口の中を掃除してもらったりくらいしか出来て居ませんでした。

猫の定番である”爪とぎ”は、ケージの横に麻縄を巻いたポールを付けていてそれで爪とぎすることもあることはあるのですが、主に爪とぎの被害に遭っていたのはパソコンの部屋にあるソファの背面でした。

ユニがうちに来た時に会ったソファは、寿命の為廃棄してしまいましたが、その後しばらくはソファなし。

家具は新品を買っても、爪とぎなど傷だらけになるのも一瞬だろうと、ソファをまた置きたいなと思った時に買いに行ったのはリサイクルショップです。

なので傷だらけになっても惜しくはないのですが・・・。

無残なソファ

ここまで傷んでしまうと、もはや快感(笑)。

仕方ないですね、ユニが居るんですから。


お腹に虫さん

2018年の年末、脱走事件からまもなく、普通は猫飼いの家では植物を置いたりはご法度(口に入れたりするので)ですが、ユニは食い意地も張っていないし悪戯もしないし、手の届きにくいところに飾る分には良いかな?と、クリスマスの装飾の植物を買いました。

杉の葉のような細い細かい葉に、装飾の為に銀色の塗装がしてあるものでした。

その植物に外観上は何の変化もなく、またケージの上に置いたのでユニが上るには椅子か何か一段低い台から飛び乗らないと、乗ることが出来ない高さだったので、安心だろう・・・、と完全に油断していました。

ユニの健康状態は、トイレの猫砂に残った排泄物でチェックをしていました。お腹がゆるくなったりすることは偶にありましたが、1日か2日で元に程ることが殆どです。今回も緩くなりましたが、いつもと同じように様子を見ますが、4日経っても一向に治まりません。

毎年5月にワクチンを接種してもらっていた、かかりつけの先生に診てもらうことにしました。ここにはユニが怖がらない先生が2人もいたので、体調に変化があればここ・・・と決めていたのです。

お腹の検査をしてもらいましたら、中に元気な虫さんがウヨウヨ!

先生から「何か細い葉のようなものを食べたようですね。」と言われ、夫婦で顔を見合わせて「あれだ!」とすぐ思い当たりました。

まさか、ケージの上にひとっ飛びとは。

早速抗生剤と駆虫薬を処方され、抗生剤はその場で注射もしてもらいました。

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お家に帰ってからは、件の植物を処分するだけでなく、先生の指示に従ってトイレの砂も全部捨てた後塩素で消毒し、ユニの触れそうな場所はすべて塩素系消毒液をスプレーして拭き掃除しました。ケージもキャリーもベッドも床も、全部です。

一番難儀したのが、お薬を飲ませる方法。ユニの口に入れてもすぐに吐き出します。細かく砕いてカリカリに混ぜても、お薬だけ残します。

それじゃあ、大好きなかつお味のチュールに混ぜちゃえ!と混ぜてしまうと、味が変わるのか食べてくれません。

カリカリの粒の中に、細かく砕いたお薬を仕込んで、少なめに出したカリカリと一緒に全部食べさせるしか、方法はないようです。

と言っても、硬いカリカリにお薬の破片を入れ込むのは至難の業です。

こんなものを見つけました。

このペーストでお薬の破片を包んで、カリカリと同じ大きさに整形し、カリカリに混ぜることにしました。お薬を砕くのは私の担当、ペーストで包むのは妻がやりました。このペーストがかつお味で、色合いがカリカリと一緒だったことも良かったですが、これが大成功!しっかりお薬を飲むことが出来るようになって、お腹も元に戻りました。


喋った!

このお話は信じてもらえるでしょうか?

ユニは、私のことはどうも「パパ」と認識しているようなのですが、妻のことは「ママ」ではないようです。

私が妻をいつもニックネームで呼んでいるので、どうもユニにとってはそのニックネームが妻だと認識しているみたい。

早朝、私はまずユニのトイレを綺麗にして、猫砂を補充してからユニのお水の入れ物を洗ってお水を取り替え、カリカリを補充します。

ですので朝ご飯が欲しければ私を叩いて(笑)起こします。

ところが私がこの朝のルーティンをこなしている時に、こんなことをしゃべったのです。

「○○○○、ごはん!」(○○○○は、私が妻を呼んでいるニックネームです)

でも、ご飯は私が出しています。これはどうも、寝ている妻を起こしたくて喋ったようなのですが、タイミング悪く私はトイレを掃除していたり、お水を替えたりしていてユニの近くにいません。

ユニはこの「○○○○、ごはん!」と喋りながら、妻の顔を叩いていたようで、「起きろ」のつもりで喋っていた可能性があります。

他にも、12月の深夜、私が遅れてベッドに入ると、そこにいつものようにユニも潜り込んで来て、寒かったのかちょっと震えながら身体を私のお腹にくっ付けて来てこう言いました。

「しゃむい」

私がそれを聞いてユニに「寒いの?」と尋ねるとまた、「しゃむい」

本当に意味が分かっているかは確認のしようがありませんでしたが、確かにこう返事をしてくれたのです。

聞いたのは私だけなのですが。


好き嫌い

ユニは食べ物に関して、本当に欲のない子です。

お刺身を食べようとしたら飼い猫に盗られた、とか食卓のご飯のおかずを一品持って行かれた・・・なんてことは、ユニには無縁の話。何しろあの「チャオチュール」ですら、そんなに好んで食べないのですから。

大好きなのはかつお味のこれ。

妻はユニ用に買ったものでも味見してしまうのですが、そんな妻曰く、これは薄味ながらも美味しいとのこと。

カリカリも最初に奮発して購入していたカナガンですら見向きもしなかったくらいなので、グルメではないのでしょうが(笑)、好き嫌いは激しいほうでした。


おもちゃで遊ばない

猫と暮らしている時の楽しみのひとつとして、おもちゃで一緒に遊ぶということが、普通はあると思います。

でも、ユニはおもちゃと言うおもちゃに、全く反応しない猫でした。紐を振ろうが、魚のクッションを置こうが、猫じゃらしを目の前でフラフラさせても、目で追うだけで身体は全く反応しません。

一通りおもちゃは買ってはみたのですが、全てに全く反応なし。

唯一反応して追っかけたのは、なんと人間用耳かきの上についている梵天(笑)。おかげでうちの耳かきはケースの外に出しておくことが出来ず、常にケースの中でした。

他にもおもちゃに反応しない猫ちゃんって、居るのかな?


急変

2022年8月17日早朝、私が仕事で朝3時に帰宅した時は、普通にカリカリを食べ、水を飲んだりいつもと何も変わらずのんびりとしていたのに、私がお風呂を終えマッサージチェアで微睡んでいるときに、ユニが突然大きな鳴き声を上げて家中を駆け回り、止まったと思ったら四肢を突っ張って痙攣し始めたのです。

私は、とにかく病院・・・と思って、ネット検索で時間外で対応出来る動物病院を探しました。

現在は、ペットを家族と思って、人間と変わらない対処をする方が増えているんでしょうね。時間外の対応動物病院が、こんなにも多くあるとは思いませんでしたが、自宅のある千葉市稲毛区からさほど遠くなく、その後の通院も考えてペテモどうぶつ医療センター幕張新都心へ電話を掛けて、救急での対応が可能かを確認しました。

電話口に出てくれた女性は、てきぱきとユニの状況について質問をしてくれて、「脳幹になにか病気がある可能性があります。時間外は朝8時までの受付ですので、それまでに気を付けてお越しください」と案内をしてくれました。

私は、自分の仕事で知っていた市川市の苅谷動物病院が、24時間体制で高度な医療まで対応出来ることを知ってはいたのですが、ユニの病状がそこまで深刻だとは考えていなかったので、後の通院の事も考慮してペテモどうぶつ医療センターへユニを連れて行きました。

ペテモでは、最善を尽くしてくれたと思います。私の、ユニの状態の説明から獣医さんはまず血栓を疑いましたが、下肢に繋がる動脈の脈動はしっかりしていたので、その可能性は低いでしょうとのことでした。

次に考えられるのは、てんかん発作とのこと。また貧血が進行しているので、他に病気が隠れている可能性がありますが、まずは発作の可能性としててんかんが考えられるので、そのお薬を投与しましょうとのことで、私は同意して処置をしてもらいました。

この時は、私もユニの身体に起きている異変の重大性をそれほど認識していませんでした。この発作の原因は心疾患で、ユニには心臓肥大がありそこから血栓を作ってこの発作に繋がった可能性はありますが、今のところ血栓はありませんので、脳のてんかんが考えられるとの獣医師の診断に、違和感はありませんでした。それに、ユニがうちに来てから年に1度のワクチン接種、そして10歳を超えシニアの仲間入りをしてからはワクチンと同時に血液検査を行ってもらっていた、地元稲毛のあい・ペットクリニックへ連れて行こう・・・と思っていたので、ペテモでの確定診断を求めなかったのです。

本当はこの時に、あとでかかりつけにかかろうと思わずすぐ少し詳細の検査を求めていたら、ユニは助かったかも知れないのに・・・と、後でかなり後悔をしましたが。

かかりつけのあい・ペットクリニックの開業時間を待って、問い合わせの電話を入れ、ユニを連れて行きました。

その時私は愕然とします。これまで信頼を寄せていた担当医2名が、お二人とも居ません。ワクチンに連れて行くときに私でもかなり難儀したのに、この病院の獣医師はお二人ともユニをすぐに安心させ、難なくワクチン接種を済ませてしまうのです。

病気知らずのユニが一度、私たちが「出来心」で買ってしまったクリスマスの飾りの下の方についていた、細い針みたいな葉を食べてしまっていて、そこに付着していた虫さんでおなかが下ってしまった時にも、こちらの獣医師さんはユニをしっかり診察して、的確な診断を下してくれていたのです。

新しい担当医は、ペテモでの血液検査結果だけを見て、私達夫婦に急に怒鳴り始めました。

「こんなに貧血が酷いのに、なんでその対処をしないんだ。これはいつ死んでもおかしくない数値なんですよ」

貧血なのは聞いていましたが、それよりその「原因疾患」が問題だとペテモの担当医には言われていたので、ユニの状態を聴診や触診で診ようともしていないこの見たこともない獣医師に対して、私が不信感を抱くのにさほど時間はかかりませんでした。

それでも、以前の獣医師が居ないとは知らなかったので、この初日にここに預け、18時過ぎに指定通り迎えに行った後にユニが朝よりぐったりしていたとは言っても、「それだけ病気が大変なんだろうな」としか考えなかった私の甘さを、私は後でものすごく後悔しました。

その翌日も、あい・ペットクリニックに預けますが、夜中中私が看病し、朝病院に預ける前には多少元気になっていたのに、20時過ぎに迎えに行った時には、ユニはほぼ昏睡状態でした。私たちの呼びかけにも反応がなく、痛みが起きるか排尿がある時だけ、鳴き声で訴えるだけになってしまっていました。

2日目にあい・ペットクリニックのこの獣医から「貧血が酷すぎて診断も治療も出来ないので、川崎の高度医療センターへ土曜日に連れて行って欲しい」と言われ、そこに連れていく予定で頼まれた診療申し込みをFAXで送信まで済ませました。

本当はこの前に気づくべきでした。そもそも「いつ死んでもおかしくない」と言い切った獣医が、予約を直ぐではなく4日も開けた土曜日に取ることがおかしいのです。

3日目の朝は、ユニはずっとうちで安心したのでしょう、多少元気が戻っていたんですね。ペテモで購入していた介護用のフードにも多少口を付けられる程度には。夜通しユニに添い寝をし、声を上げ痛がった時には身体をさすったり、おしっこをしてしまった時には身体を暖かいタオルで拭いて、ペットシーツを替えるくらいしか、出来ることはないのですが、それでもユニは朝には少し声で私達夫婦に訴えるようには、なっていました。

それで私は決断しました。川崎の高度医療センターへ行くには今日一日、またあい・ペットクリニックに預けなければなりません。

それでは、ユニはそこで私達にも遭えずに亡くなってしまうと思ったんですね。


2回の転院

私は意を決してユニを苅谷動物病院へ連れて行くことにしました。ここには供血猫の登録もあり、タイミングが合えばすぐに輸血が受けられたのです。

電話で問い合わせをすると、輸血そのものは可能だけど、在庫の猫用の血液が、ちょうど使われてしまったばかりとのこと。次の輸血用の血液は、病院に登録しているドナーから輸血して準備をするので、少なくても数日はかかりますが、本当に輸血が必要かの判断と、血液型の検査、そして輸血できなくても可能な治療を考えます・・・とお話をされて、ユニを連れて行くことにしました。

やっぱり考えちゃいますね、最初からユニを苅谷さんに連れて来ていたら・・・と。輸血もそのタイミングなら血液もあったでしょうし、入院してすぐにICUで暖かくて酸素も栄養も補給されるベッドで、体力も温存出来ただろうに・・・と、かかりつけのあい・ペットクリニックを優先してしまった自分の判断を、本当にこの時後悔しました。

苅谷さんでは到着後すぐに処置室からICUに入り、酸素濃度を高めた暖かい部屋で、湯たんぽで背中とおなかを温めてもらっていました。

急変からこの時間まで、苦しい顔しかしていなかったユニが、いつもに近い感じで、とても緩んだ、安心した表情を見せていました。

苦しかったんでしょうね、とっても。

その日は入院となり、私たちは二人で帰宅しました。

担当の先生から言われた「貧血の原因が免疫系の問題だと仮定して、そちらの治療を並行して進めますが、貧血の状況は17日からどんどん悪化しています。うちの病院で輸血可能になるにはもしかすると一週間近くかかるかもしれないので、ご家族の方ですぐに輸血できる他の病院を探すか、ドナーの猫ちゃんを探してください。」との言葉で、輸血可能な病院をネットで探しました。

もちろん、ユニの保護主さんのご協力もあって、インスタで頂いた情報も辿って確認もしました。

灯台下暗し、とはこのことでしょうね。自宅近くの鈴木犬猫病院のブログで、この病院にドナー猫が常駐していることを知ります。ネット検索は、最近は広告ばかりで参考にならないとことは見ないことが多いのですが、この時には広告でも何か情報はないかと、一つ一つ調べていたのです。その広告の中に、この情報が隠れていました。

https://www.suzuki-vets.com/report/report/1824.html

翌朝、9時の診療受付時間を待ってすぐに鈴木犬猫病院へ電話をします。すると電話口に出られた方は「ドナー猫は確かにいますが、担当医師に確認します」と言われ確認で何分か待たされた後に、「輸血は可能です。何時ごろ来られますか?」と聞いた時には、目の前に光が差し込んできたように、感じました。「これでユニが助かるかも知れない」と。

すぐ苅谷さんに輸血可能な病院が見つかったので転院をしたいと電話で連絡し、10時半来院の予約を取って向かいます。病院で準備をしていただき、お支払いを済ませてキャリーにユニを移そうとしますが、ICUから出てまた苦しくなってしまったのでしょうね、ものすごく苦しみ始め、声を上げて訴えて来ました。

この時、「何とか病院で輸血するまで、頑張って」としか、考えていませんでした。最短で到着するルートをナビで確認し、鈴木犬猫病院を目指します。

「ユニが鳴いたら、さすってあげてね」と妻にお願いしますが、途中で大きく仰け反ったかと思うと、動きが止まってしまいました。

ユニに「良い子だね、頑張ってるね、病院までちょっと待ってね」と声をかけながら運転しますが、ユニには、移動の30分でさえも、持ちこたえる余裕はありませんでした。

鈴木犬猫病院に到着し、すぐに処置室へ入りますが、看護師さんからすぐに「ユニちゃん、呼吸をしていません」と告げられます。「心臓のお薬を入れたり、心臓マッサージで蘇生処置を始めてよろしいですか?」と聞かれ、延命処置はしないとは思っていましたが、この時は藁をもすがる気持ちで「はい、お願いします」と言ってしまいました。

ユニの呼吸は、また始まることはありませんでした




虹の橋

虹の橋の話は、耳にしたり目にしたりなさった方は、多いと思います。

原作者は不詳ですが、その内容は亡くなってしまったペットが、天国の手前の虹の橋と言うところで幸せに過ごしていて、病気で亡くなった子は元気になり、食べ物も沢山あって幸せに過ごせる場所。

でも唯一足りないものが、一緒に暮らしていた人。

その一緒に暮らしていた人が天国に渡る前に、この虹の橋で再びペットと出会い、一緒に虹の橋を渡って天国へ行くというお話。

ユニが、待っていてくれて、また妻や私がこの世を去ってしまった後に、一緒に過ごすことが出来ると良いなあ。

私と妻とどっちが先かって言うと、妻が先でないと私が色々と心配なので、妻を看取ってから私はゆっくりと身辺整理をして、この世に残すことになる息子に迷惑が掛からないようにした後で、ユニと妻の待つ虹の橋を渡った後の天国へ迎えたら良いな・・・。

今、心からそう思います。

お葬式

千葉市の郊外にある、リン・ペットセメタリーで執り行いました。

申し込みをした時に担当していただいた方が、「家族」を亡くした気持ちに寄り添って下さる、とても暖かい担当の方でした。

ユニの話をたくさん聞いて下さり、ユニという猫が居たことを他の方に聞いてもらえる喜びがあるんだと、知りました。

もちろん、家族の中で折に触れてユニの事を話し合うだけでも、とても大切な思い出なのですが、ユニのことを家族以外の方に聞いていただけることがこんなにも心の傷を癒すとは、考えもしませんでした。

これがこのnoteを書こうと思った、きっかけです。

これから家族を迎える方へお願いしたいこと

ユニは「保護猫」でした。ユニを柏市の保健所から引き取って保護してくださった矢矢さんがいらしたので、私達家族はユニと巡り合うことが出来ました。

ユニとは、本当に運命的な出会いと思えるほど、心温まる時を過ごして来ました。今、猫を飼いたい、犬を飼いたいとお考えの方は、やはり同じように心温まる時を過ごしたいと思っておられることと、思います。

ペットとの出会いは、色々な形があると思います。ペットショップで「この子可愛い!」と思うことでも良いと思います。

私達がユニと出会ったように、保護猫・保護犬達との出会いを求めて、色々な所で開催されている譲渡会(一時保護活動をなさっている団体などが実施する、保護猫・保護犬との出会いの場)に参加して、希望の猫ちゃん、ワンちゃんに巡り合うのを待つのも良いでしょう。

でも、どのような出会いでも忘れないでいただきたいのが、迎えた動物は「家族」として迎えてすべてを受け入れ、全てを愛し、終生暮らしていく覚悟をもって欲しいということです。

自分とは違う「生き物」と生活する以上、子育てと同じか、もしくは直接言葉が分からない部分、子育てより辛い面もあると思います。

そして私達がユニを見送ったように、死と言う別れも厳然として存在します。これは私達がユニを大切に思えば思うほど、その別れが辛かったように、必然ではありますがとても辛いものです。

終生その子のすべてを受け入れ、その別れをしっかりと受け止めて、それでも一緒に暮らしていくことの幸せは、他の何より代え難い素晴らしいものだと、思います。

ユニの事を知っていただけて、保護猫・保護犬の存在を知っていただけましたら、どうか日本全国で活動なさっている保護主の方から、貴方の終生の家族と出会っていただけたらと、思います。

きっとあなたとの運命の出会いを待っている子が、どこかに必ずいますから。


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