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電通とMakuake実行者が語る「顧客体験価値」の作り方 #Makuakeミライカンファレンス2021

2021年9月12日に行われたMakuakeミライカンファレンス2021。「ミライを創る挑戦者が集い、ミライについて考える」というテーマのもと、Makuake実行者様や各分野のプロフェッショナルを招き、さまざまな業界の未来について語ったイベントの様子をレポートでお届けします。

『企業が考えるべき「顧客体験価値」の作り方とはPresented by 電通』のセッションには、株式会社電通のビジネスプロデューサー加藤涼氏、藤本眞一郎氏、株式会社淺沼組でリニューアル事業「GOOD CYCLE PROJECT」の技術部門を担当する山﨑順二氏、 株式会社Gunosyの新規事業「YOU IN(ユーイン)」を担当する深谷江里子氏の4名が登壇。

企業のブランディングや事業開発に伴走する電通の取り組みや、淺沼組、GunosyがMakuakeで実行したプロジェクトを紹介しながら、「顧客体験価値の重要性とその作り方」についてディスカッションしました。モデレーターは、株式会社マクアケ専門性執行役員/R&Dプロデューサーの北原成憲氏が務めました。

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「顧客体験価値」はなぜ重要なのか

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北原:
まずは本日のテーマ「顧客体験価値」の重要性について、マクアケの考えをご紹介します。「顧客体験価値」の定義には諸説あると思いますが、「顧客が何にお金を払うのか」を定義することが大事だと考えています。

マクアケのビジョンは「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」。これまで1万7000を超えるプロジェクトが生まれてきました。Makuakeでは見たことも聞いたこともない製品をオンライン上でプレゼンテーションする必要がありますので、顧客体験価値をいかに想起させられるかが応援購入につながります。私たちが日々身をもって体感している顧客体験価値の重要性とその作り方について、プロフェッショナルである4名にお話を伺っていきたいと思います。

「広告」を越えた提供価値を届ける、電通の取り組み

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北原:
顧客体験価値について、電通様の取り組みをご紹介いただけますか?

加藤氏(以下、敬称略):
電通というと広告のイメージがあるかもしれませんが、最近は広告にとどまリません。私たちが注力しているのは以下4つの領域ですが、今回は②のお話が中心になるかと思います。

①広告領域の高度化・効率化
②顧客体験のデザイン・実現
③DX(マーケティングデータ基盤の構築・変革)
④ビジネスサポート(商品開発・ビジネスモデル開発・提供価値の再定義など)

「顧客体験価値」は、ここ5年ほどさまざまなお客様と議論してきたテーマです。改めてなぜ重要なのかを考えると、新たな事業を始めるハードルが下がっているからだと思います。

これには二つの視点があって、1つ目は「資本観点」。資本をたくさん投下しないと新商品が作れずヒットが生まれないという時代がかつてはありましたが、今はスモールスタートができる世の中になりました。Makuakeの成功事例にも在庫なしで始められるというグッドポイントを遺憾なく発揮している企業がたくさんありますよね。2つ目は「マーケティング観点」。大量生産大量消費の時代が終わり、今は人数は多くなくてもサービスやプロダクトを深く愛してくれるファンを作れるかどうかが重要です。ファンが何を考えているかはデータだけでは出てこない。その点、Makuakeの実行者はプラットフォームをうまく活用してファンの考えを聞き出し、一度デビューさせたものをさらに磨いている事例が多くあると思います。

今日はそんな話をしながら、ビジネスをうまく回すためのMakuakeの活用方法についてもお伝えしたいと思っています。

気分に合わせてお茶を選ぶ体験/Gunosy「YOU IN」

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北原:
ここからは、実際のプロジェクトをご紹介しながら、顧客価値創出の具体事例を見ていきたいと思います、まずは「YOU IN」のプロジェクトのご紹介をお願いします。

深谷氏(以下、敬称略):
「YOU IN」は、ムードペアリングティーというコンセプトで作られたお茶のブランドです。気分に合わせてお茶を選ぶという体験自体を価値として提供していきたい、という背景で生まれました。ちなみに「YOU IN」という名前は、陽(YOU)な時も陰(IN)な時もあなたに寄り添いたいという意味で名付けたものです。

◆「YOU IN」プロジェクトページ

◆「YOU IN」公式サイト

ティーペアリングと聞くと、レストランでワインをペアリングするように、お茶をペアリングするコースが最近は少しずつ出てきているかと思います。インスピレーションはそこから得ましたが、それを食事ではなくムード(=その瞬間の気分や状態)に合わせてペアリングしてみようというのが私たちの新しい提案。元気な時、幸せな時、やる気が出ない時、ストレスが溜まっている時などさまざまな状態があると思いますが、それに対して悩むというよりも、今はこういう瞬間だと向き合って肯定してみませんか?というメッセージを込めています。

ブレンドしているお茶やスパイスが異なる9つのムード(味)をMakuakeで販売。結果的に600名以上の方にご支援をいただきました。お茶の価格帯としては高価だったので、体験価値に共感してもらえた結果だと思うと大変嬉しいです。

北原:
「お茶屋さんじゃないGunosyがお茶を作った」と不思議に思われた方も多いと思います。どういった顧客体験価値を提供しようと思ってお茶にたどり着いたのでしょうか?

深谷:
提供したかったのは、お茶を飲む瞬間というよりまずはあなたの気分を考え、それに合わせてムードからお茶を選んでみませんか?という価値です。

プロジェクトが走り始めた2020年春頃はちょうどコロナが始まり先行きが不安だった頃で、私たちが取り囲まれているペイン(生活の中で感じた課題や改良の余地がありそうな物事)を一つひとつ考える作業があったんです。その中で、不安な気持ちを無理に取っ払う必要はあるのか、という議論が出てきました。そこで出た結論が、自分の機嫌を自分でとれる大人になれたらかっこいいよねという価値観。そこに寄り添える存在としてお茶がぴったりかもしれないと考え、生まれたのが「YOU IN」です。

北原:
なるほど。お茶として売り出してしまうと価格帯が見合わないけれど、「自己肯定感を高める」ことにならこれだけお金を出していいと共感してもらえたことが、成功のポイントだったのですね。

SDGsを消費者のメリットに変換/淺沼組「GOOD CYCLE PROJECT」

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北原:
続きまして、浅沼組様が取り組まれた体験価値のプロジェクトをご紹介いただきたいと思います。

山﨑氏(以下、敬称略):
「GOOD CYCLE PROJECT」は淺沼組のリニューアル事業です。

まず、象徴的なのが名古屋支店の改修工事。淺沼組が来年創業130年ということで、樹齢130年の奈良・吉野の杉を丸太のように並べました。また、より良い循環を意識してエントランス部分には植物や土の壁を配するなど、自然素材もふんだんに使っています。

この改修工事は、リニューアル事業の『ReQuality』というコンセプトのもと「人間にも地球にもより良い環境を創造する」という考え方で行われています。

◆GOOD CYCLE PROJECT公式サイト

・環境配慮型:低炭素化、資源循環などSDGSに関わる環境配慮型のリニューアル
・空間改善型:健康科学、ヘルスケアなど施設の中にいる人の健康を改善するための取り組み

杉を丸太状にする際に出た端材は、通常なら廃棄物になってしまいますが、循環させる有効な方法はないかと考え「ヨシノチップス」という芳香剤のようなプロダクトを計画しました。循環を消費者にも体感してもらうために、Makuakeに出品。新聞広告を出したり、インスタグラムで紹介したりと、淺沼組の『ReQuality』ブランディングを社会に発信させていただきました。

◆「ヨシノチップス」プロジェクトページ

北原:
「YOU IN」同様、日用品メーカーではない淺沼組が芳香剤を作ったことにも既成概念に囚われない体験価値創出があったのではないでしょうか。電通様が伴走されて価値設計されたと思いますが、その点いかがですか?

藤本氏(以下、敬称略):
「GOOD CYCLE PROJECT」は、淺沼組のSDGsブランディングを顧客メリットに変換するプロジェクトだと思っています。

まさにMakuakeプロジェクトページのキーワード「100日間、あなたの部屋が森になる」がそれを表していて、BtoBの建設会社が廃材をリニューアルするというSDGsの活動を、コロナ禍の在宅ユーザーのベネフィットに変換した。廃材から作られた「ヨシノチップス」が、お部屋の中をリラックスする空間に変える。そういった提供価値がこのプロジェクトにはあったと思います。

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顧客体験価値の創出は、顧客解像度の追求から

北原:
2つの事例を聞いて、どういったポイントを意識することで顧客体験価値が作られるのかを電通様に伺いたいと思います。加藤さんいかがでしょうか?

加藤:
2つの事例に共通しているのは、お客様が中心にいるということ。単にお客様と言ってもどちらも解像度がシャープです。昔だと、調査を行ってお客さんが誰かを定義することが重要でしたが、今は調査しなくてもお客様と対話する場があります。例えばMakuakeの応援コメントを見たり、SNSの発信に対するコメントを見たり。自分たちが考えたものを市場に打ち出して、それに対するレスポンスを受けてプロダクトやサービスを磨いていく。ものづくりのプロセスをお客様とともに作り上げていくということが、さらにファンを生むし、新たなサービスの形だと思いました。

北原:
たしかに、Makuakeの実行者とお話しすると「いいねが集まっても必ず売れるわけじゃない」と話す方が多いです。成功するプロジェクトに共通するのは、やはり顧客解像度。徹底的に1人のお客様像を追求して、その人に絶対買いますというコメントをもらえる製品を作った実行者や、自分自身が一番の顧客となって自分が一番欲しい商品を作り切った実行者もいらっしゃいますね。

加藤:
今まで企業の開発プロジェクトは閉じて、狭いところでやっていたから、世に出ずに終わってしまう新製品のアイデアもたくさんあったと思います。でもその中で、実はお届けしてみたらたくさんのファンに愛されるものもあったかもしれない。それに対して、Makuakeは消費者と企業の距離感を縮めるとともにオープンにしました。さまざまなクライアントと仕事をする中で、マーケットフィットするサービスを作るためにMakuakeをうまく活用してお客様と一緒にプロダクトを磨いていくことはとても大切だと感じます。

完成したものを広めるツールとしてだけでなく、アイデア自体はまだふわっとしているけれども、お客様と接したいという状態ならうまく活用していけると思います。

顧客体験価値を定義し、いかに表現するか

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北原:
最後に、視聴者の方からの質問にお答えいただきたいと思います。「まだ世にない商品を作る上で、サポーターはどんな体験ができるか想像しづらいと思いますが、ビジュアルや文章で伝えるための工夫はありますか?」

加藤:
どう価値規定するかと、どう表現するかという2つのステップが重要だと思います。例えば「ムードペアリングティー」はその言葉を聞くだけでポジティブなイメージが湧きますよね。価値を決めた後の伝え方も大事だと思います。

藤本:
消費者の声を聞きやすい現代だからこそ、仮説を立てる前に、生のお客様の声をたくさん聞いてみることが重要ではないでしょうか。

北原:
Makuakeのプロジェクトページの滞在時間は平均1分半〜2分。第1段落をみて、自分にとってこんな価値があるんだと理解できると応援購入に繋がりやすい傾向があります。具体的なシーンも交えながら、こんな体験の中でこういった価値を発揮してくれるんですよ、ということを言葉とビジュアルでしっかり見せていくことが、マクアケでは重要だと考えています。

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