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PRTIMESとMakuake実行者が語る、明日から取り組めるPRコミュニケーション #Makuakeミライカンファレンス2021

2021年9月12日に行われたMakuakeミライカンファレンス2021。「ミライを創る挑戦者が集い、ミライについて考える」というテーマのもと、Makuake実行者様や各分野のプロフェッショナルを招き、さまざまな業界の未来について語ったイベントの様子をレポートでお届けします。

『心を揺さぶるPRコミュニケーションとは?Presented by PR TIMES』のセッションには、株式会社PR TIMES営業本部副本部長/アライアンス担当マネージャーの高田育昌氏、「神山まるごと高専(仮称・設置構想中)」の広報担当を務めるSansan株式会社の小池亮介氏、日本酒ブランド「HINEMOS」を展開する株式会社RiceWine代表取締役の酒井優太氏の3名が登壇。

元記者の高田氏が考えるメディアに注目されやすいPRの切り口や、Makuakeの成功プロジェクトが持つPRコミュニケーションのポイントを紐解きながら「生活者の共感を生むPRコミュニケーション」について考える場となりました。モデレーターは、株式会社マクアケ執行役員/戦略広報本部長の矢内加奈子氏が務めました。

MakuakeとPRコミュニケーション

矢内:
本セッションは、ゲストの方々がPRにおいて大切にしていることを実例をもって深堀りし、明日からのPRコミュニケーションに活かしていただくことを目的としています。それでははじめに、ゲストの皆様の自己紹介をお願いいたします。

高田氏(以下、敬称略):
PR TIMESの高田です。PR TIMESでは「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ。」というミッションを掲げ、プレスリリースの配信プラットフォームを中心にさまざまな事業を運営しています。

PR TIMESのプレスリリースプラットフォームは大きく2つあり、1つはプレスリリースの配信です。登録から配信までウェブだけで完結するサービスで、1万1000以上の媒体の中から1回に300までの配信先を選んでいただけます。それと同時に、2万名を超える個人のライター、記者、編集者の方々に、希望するジャンルのプレスリリースをお送りしています。

もう1つはプレスリリースの掲載、転載です。弊社のパートナーメディアである全国紙やwebメディアなど205(2021年9月1日時点)の媒体に、原則プレスリリース全文を転載いただいています。そこからさらにSNSで広がることで、記事にならなくても多くの生活者に情報が届く。こうした従来のプレスリリースという枠を超えたサービスを提供しています。

矢内:
高田様はさまざまなプレスリリースも見られていると思いますので、今日はPRにおいて大切なポイントを伺えればと思います。

小池氏(以下、敬称略):
Sansanの小池です。「神山まるごと高専(仮称・設置構想中)」は2023年4月の開校を目指して、設置構想を進めている高等専門学校です。コンセプトは、「テクノロジー×デザインで人間の未来を変える学校」。育てる学生像としては、自分の手でものを生み出す力を持ちながら、事業や社会を変えるアクションを起こせる「モノをつくる力で、コトを起こす人」です。テクノロジー教育とデザイン教育、そして起業家精神を三位一体となって学生にインプットする、今までにない学校になるのではないかと考えています。

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酒井氏(以下、敬称略):
RiceWineの酒井です。私たちは「HINEMOS(ひねもす)」という日本酒ブランドを展開しています。「ひねもす」には終日、一日中という意味がありますが、これをブランド名に掲げた理由は、時間ごとに合う日本酒をおすすめしているブランドだからです。7時にビールやシャンパンで乾杯する代わりに、スパークリング日本酒を。8時には料理に合いやすいマッコリのようなにごり酒を。というように各時間帯の日本酒を飲むと、全ての日本酒が味わえるというコンセプトになっています。

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矢内:
私も昨日「SHICHIJI」の日本酒を飲んで、このセッションに参加しています!小池様、酒井様はMakuakeでプロジェクトを実行し大成功されていますので、成功の秘訣なども伺いながらお話を進めていきたいと思います。

メディアの視点「9つのフック」と「6つの感情」

矢内:
ではまず高田様から、メディアの方が求めているPRの切り口とは何かをお話しいただければと思います。

高田:
記者には毎日大量なプレスリリースが届いているので、多くのリリースの中から何が引っかかってもらいやすいかを「9つのフック」に、リリースを見てどういった感情になるかを「6つの感情」に分類しました。

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高田:
9つのフックの中で一番分かりやすいのが「季節性」。例えば、オリンピック期間中ならスポーツなどの話題は報道されやすく、報道されているからこそ生活者も関心を持ちやすい。あとは「新規性」のように日本初、世界初という言葉があると記者はとりあえず見ます(笑)

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ですので、これらのフックをタイトルなどに入れて分かりやすく引っ張っていただくことが大事です。その結果として、6つの感情というのが出てきます。今日いらっしゃるお二方のプロジェクトであれば、「喜び」や「驚き」などが中心になると思いますが、リリースがどのように受け止められるかを考えることも重要になります。

成功プロジェクトが意識したPRのポイント

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矢内:
Makuakeは新商品や新しい体験を応援購入できるサービスなので、「新規性」は多くのプロジェクトがクリアしていると思います。小池様や酒井様のプロジェクトでは何を気にしてPRやプロジェクト設計をされていたのか、伺いたいと思います。

まず、高専の設立にあたって「先輩」を集めた小池さんのプロジェクトについて、設計の背景を教えていただけますか?

◆「神山まるごと高専(仮称・設置構想中)」プロジェクトページ

小池:
高専を開校するにあたって、私たちには2つの課題がありました。1つは資金面の課題。そしてもう1つは、色々な人の知見を得るためにサポーターを自然な形で集めたいという課題でした。2つ目に関しては、一方的に応援してくださいと伝えるのではなく、世の中の方に興味を持ってもらえるようメッセージを伝える必要がありました。そこで「先輩になりませんか?」という「新規性」で興味喚起したいと思い、「先輩」というテーマを設定しました。

矢内:
新設校ということで、1年生にとって「先輩」を作りたかったというストーリーもありますよね?

小池:
はい。「先輩」を募れば学生にとっても嬉しいし、世の中の応援も得られて一挙両得ではないかと考えました。

矢内:
酒井様のプロジェクトは、冷蔵庫の中に酒蔵を作る、というのが非常に面白いポイントだったかと思います。どういった背景から生まれたのでしょうか?

◆「HINEMOS」プロジェクトページ

酒井:
私たちがMakuakeで実行したのは冷蔵倉庫の中に酒蔵を立て、その中で作ったお酒をリターンとするプロジェクトでした。色々な酒蔵のプロジェクトがある中で、「新規性」や「意外性」を打ち出したいという狙いはありましたね。また、日本酒は木造建築の中で微生物を扱うため、冬にしか作れないとされていました。11月〜4月の4時とか6時から集中して作らないといけないので、働き方も改善したいと思っていました。そんな時、冷蔵倉庫の中ならずっと冬だから、年中酒を作り続けられると気づいたんです。その結果、私たちは一年中、9時〜17時の働き方ができています。

矢内:
プロジェクトを始める前のリリースで、年間30の酒蔵がなくなりつつあるなど社会問題にも触れていらっしゃいましたよね?

酒井:
1970年代には3000蔵あった酒蔵が、今は1200〜1400蔵まで減ってきていると言われています。働き方の問題や需要の問題などもあり、ちょうど変革が求められているタイミングでした。また、私たちはD2Cという形態なので、お客様の声を商品開発に年中活かせるという部分も考えて今回のプロジェクトを設計しました。

共感を生むのに大事なのは、ターゲットの絞り込みと本音

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矢内:
他に意識されたPRポイントはありますか?

酒井:
私たちの拠点である小田原には、実は酒蔵はなかったんです。そこで、小田原唯一であることには「新規性」があると思い、大々的に打ち出しました。

矢内:
「地域性」も絡めて「新規性」を打ち出したんですね。あと、Makuakeのプロジェクトページでは酒蔵の引っ越しストーリーをかなり正直に書かれていたと思うのですが、あれはなぜだったのですか?

酒井:
もともと私たちは井上酒造さんという他の蔵を委託醸造という形で使わせていただいていました。そこの杜氏の方の実家の蔵が愛知県にあったんですが、酒蔵自体の老築化や、お父様の体調不良により廃業を考えられていたんです。そんな中、杜氏の方の継ぎたいという想いと、お父様の本当は存続させたいという想い、私たちにも自社の酒蔵を立てたいという気持ちがあり、この3者の境遇を鑑みて、酒蔵を小田原に移転させることを考えたんです。井上酒造さんは快く応援してくださいましたが、杜氏がいなくなることで負担をかけてしまう部分もあったので、プロジェクトの経緯を丁寧に記載したというのが理由ですね。

矢内:
もし高田さんの記者時代にこのようなプレスリリースが送られてきていたらどうでしたか?

高田:
小田原、神奈川の記者をしていたのであれば絶対に取り上げたと思います。地方に行くと各地のテレビ局や県紙、ブロック紙などきめ細かく取材している記者がたくさんいるので、取り上げてもらいやすい。最近ではさらに、それがweb媒体に掲載されて地域外に広がるというケースも多いと思います。

矢内:
PRというと大きな話題を狙おうとしすぎて、結局メディアの方に興味を持ってもらえないということが結構あると思います。ピンポイントに刺しにいって、結果的に多くの人に広まるというのは理想的ですよね。

小池様のプロジェクトで「先輩」になれる権利を1000名限定、3万円で募集するという形にしたのはどういう経緯からですか?

小池:
最初は、1万円で1万人集めて1億円にしようと考えていました。でも1万人集まってしまうと、一緒に何かをしようというコミュニケーションが取りづらい。関係者作りという意味では1000人が一番最適な数字だという結論に落ち着きました。結果、親世代にあたる主婦の方や、教師、経営者、20代の会社員など本当に多様な方が集まりました。共感いただけたポイントだと思うのは、未完成なところをあえて見せたこと。今まさに作っているものに参加できるというフローに共感いただけたんだと思います。

矢内:
プレスリリースを出すときには、何もかも揃えて出さなきゃいけないというわけではないんですね。

生活者視点で情報を発信する重要性

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矢内:
気づけば終盤となりました。ここで高田様に質問がきています。「記者の目に留まる事象を作るには、どういったところからインプットしたり、ヒントを探したらいいでしょうか?」PRのネタ作りという観点で、ご意見いただけたらと思います。

高田:
自分のやろうとしているプロジェクトやそれに近いものなど、多くのプレスリリースや記事などに目を留めて、生活者視点で共感できるようなパブリシティからヒントをもらうというのが、地道ですが王道のやり方だと思います。

矢内:
では最後に皆様からコメントをいただきたいと思います。「PRとは何か」という観点でお答えいただけますか?

酒井:
作ることだけでなく、伝えることが重要な世の中になっていると思います。日本酒の業界的には、酒屋さんや問屋さんに伝えて売ってもらっていたものを、今度は私たちが作り手として伝えていくことが重要だと思います。

小池:
私が広報をする上で気をつけているのは、「自分たちが伝えたいことをターゲットが聞きたいように伝える」ということです。情報化社会の中では、相手の聞きたいように自分たちのことを伝えていかないと、届きません。私は相手の立場になって体験を想像するロープレをすることで、想像力を鍛えるようにしています。

高田:
マクアケさんもPR TIMESもやっていることは違うけれど、新しい行動を発掘するという意味では同じだと思います。これまで知られてこなかったことを広げるお手伝いをするのが我々の仕事だと思うので、ぜひ今後も良い形で協力して、お二方のような行動を応援できればと思います。


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