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店頭とECの購買をシームレスに「データで見るコロナ禍の消費動向」 #Makuakeミライカンファレンス2021

2021年9月12日に行われたMakuakeミライカンファレンス2021。「ミライを創る挑戦者が集い、ミライについて考える」というテーマのもと、Makuake実行者様や各分野のプロフェッショナルを招き、さまざまな業界の未来について語ったイベントの様子をレポートでお届けします。

『データから読み解く最新消費動向 〜EC、リアル店舗の最新データから考えるミライの消費〜 Presented by Criteo』のセッションには、デジタル広告ソリューション企業であるCRITEO株式会社のChief Industry Strategist中村祐介氏、株式会社三越伊勢丹でECサイトの運営を担当する北川竜也氏、Septeni Japan株式会社でECやアドテクノロジーに精通する余川大介氏の4名が登壇。

オンライン、オフラインで起こっているコロナ前後での消費動向の変化をデータで紐解きながら「これからの消費者に対応するための商流の作り方」が語っていきました。モデレーターは、株式会社マクアケ共同創業者/取締役の木内文昭氏が務めました。

コロナによって変化した国内外の消費動向

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木内:
本日はコロナがもたらした変化をデータやリアルとの接点から紐解き、各業界を代表するゲストの皆様から具体・抽象それぞれで起きていることを伺えればと考えています。では早速、消費動向の変化についてデータから見ていきたいと思います。Criteo中村様、よろしくお願いいたします。

中村氏(以下、敬称略):
弊社の持っているデータをベースに消費動向の変化をお伝えします。まず、直近2021年4月〜7月までのオンライン消費データです。

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中村:
ECサイトでの消費動向変化ということで、弊社で取引している小売のお客様全体のデータとなります。デイリーで訪問するユーザー数は昨対比では1.4%と微増です。昨年コロナになってからトラフィック(サイトに来るユーザー数)が増えたというお客様が多かったため、引き続き増加が続いている状況。真ん中のオンサイトCVは実際に購入しているユーザーの割合で、こちらも16%増と引き続き増えています。一番右の購入頻度で言うと大きな変化はありません。推測も入りますが、新規でEC購入を始めたユーザーが増えたため、購入頻度としてならすと全体的にはあまり増えていないのだと思います。

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中村:
次に、昨対比で売上が伸びた商品カテゴリです。一番上のベビー系は、ギフトも含めて伸びています。コロナ禍で直接お祝いできない人たちが、せめてギフトを送ってお祝いしたいといった需要が増えていると推測できます。あと、面白いのがLuggage & Bagsのカテゴリ。旅行が難しい状況なのでスーツケースなどは減少傾向ですが、日常使いや日帰り旅行などで使えるバッグの需要は回復傾向にあります。

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逆に減少しているカテゴリで言うと、家具関連やスポーツグッズが少し落ちています。昨年コロナ禍になり買い替えた人が多かった分、今年は落ち着いている印象です。

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中村:
Criteo自体がグローバル展開している企業なので、参考としてアメリカの状況もご紹介します。私たちの広告ソリューションはオンラインで配信いただくものですが、それとユーザーが実際に来店したか、購入したかのデータを紐付けて分析しています。2021年1月から7月のデータですが、アメリカでは店頭での買い物が回復しています。2020年末から2021年年始にかけてワクチン接種もかなり進んでいたので、それに合わせて店頭に戻ってくるユーザーが増えました。

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中村:
次に、オンライン・オフライン含めたオムニチャネルで購入するユーザーのデータです。直近3ヶ月間に、店頭、オンライン、店頭とオンライン両方の3パターンのうちどのチャネルで購入したかのサーベイを行いました。結果、店頭とオンライン両方で購入する方は購入する頻度や回数も高いため、こうした消費者に買ってもらえるよう施策を打つことが重要だとわかります。

最後にご紹介したいのが、オンラインで買って受け取りは店頭で行うClick & CollectやBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)という新しい購買行動に関する各国の傾向です。キーワードとなるのが「カーブサイドピックアップ」という大型スーパーなどの駐車場でオンライン購入したものをピックアップできるというサービス。アメリカとフランスでは利用が増えていますが、日本はスーパーに駐車場がなかったり、スペースが大きくなかったりするのでフィットしないかもしれません。ただ、利便性は高いので今後出てくる可能性はあります。

オンライン消費の定着と売れる商品の変化

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木内:
今のプレゼンを受けて北川様に伺いたいのですが、コロナ禍で生活スタイルが変わる中、三越伊勢丹で感じる変化はありますか?

北川氏(以下、敬称略):
先ほどご紹介があった購買割合が減っているカテゴリに注目すると、必ずしも購買行動が弱くなっているわけではなく、現在の生活スタイルが定着してきた証なのではないか。昨年一気にオンラインで買う習慣にシフトして、昨年揃えたものを今年わざわざ揃える必要がないから買わなかった、という流れはあると思います。今後私たちが販売する商品もどのぐらいのライフサイクルで提供するのが最適なのかを考えていかないと、お客様の体験価値を下げてしまうなと感じました。

木内:
広告代理店の視点で、余川様が感じる変化も教えていただけますか?

余川(以下。敬称略):
デジタルシフトに関しては、企業からいただくご予算が増えています。コロナ禍において新たにECを使う消費者が増えてきたため、新規顧客を獲得するための広告に出稿する企業が増えていると感じます。

木内:
新たにネットを使う消費者が増えた分、購入頻度は減っているんじゃないかというお話もありましたね。Makuakeのデータで、どのような推移があったか見ていきたいと思います。

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木内:
コロナ前後で比較すると全体としては200%弱の伸びがありました。中でも伸びているジャンルでいうと、最も大きいのがコスメ/ビューティー/スキンケア/健康/エコというカテゴリ。おうち時間の運動不足解消につながる商品や、男女ともにコスメの売上が伸びました。続いて調理器具。外食が減って家で良いものを作るための調理器具の需要が増えています。最後にアウトドア。アウトドアの時間をリッチに過ごせるものや、緊急事態への備えとなるような商品が売れ筋となりました。

小売に求められるリアル店舗とECの融合

木内:
では続いて、三越伊勢丹での変化についても教えていただければと思います。

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北川:
2020年のデータですが、百貨店業は70%強まで売上高が落ち込み、その煽りを受けてそれ以外の事業も軒並み100%を下回ってしまった状況でした。オンラインに関しては売上が伸びていますが、売上幅が減った絶対量と比べるとまだ下げ幅をカバーできるには至っていません。オンラインにおいて特徴的なのが「meeco(ミーコ)」という化粧品特化のECサイトや「ISETAN DOOR(イセタンドア)」という高価格の定期宅配ゾーンが200%近い伸びを見せたことです。

店頭での買い物状況ですが、年間購買額の高いお客様は昨年の後半ぐらいからかなり戻ってきています。コロナ禍で伸びている代表的なカテゴリとしては、ラグジュアリー関連や化粧品、お肉やフルーツなどの高級食材などです。特徴的なこととしては、皆さまが百貨店といって想起いただけるような商品は明らかに伸びています。例えば、ランドセルやニッチなデザイナーズブランドの商品、現代アートなども。

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北川:
また、日本橋三越や新宿伊勢丹などは、売上の50~60%を近隣6区にお住まいの方が作って下さっている、というデータがあります。会社帰りや休みの日などちょっとしたタイミング、短時間滞在での来店が増えているため、店頭とオンラインの掛け合わせ、シームレス化が重要だと感じています。こちらも先ほどの話につながりますが、EC、店頭両方で購入する方の購買額は、ECのみで購入する方と比べて20倍にものぼるというデータもあります。

木内:
特化型ECの伸びや、ECと店頭両方使い分けられるお客様がいて、その方の購入額が多いというのは非常に興味深いと思いました。オムニチャネルでの購入が当たり前になってくると思うのですが、余川様、そういう観点で重要なポイントはありますか?

余川:
以前私が担当していた家具販売を行うクライアント様の事例では、お客様はまず店舗に家具を見に行って、家に帰ってオンラインで購入し、次の週末に店頭で受け取るといったClick and Collectの進化系のようなパターンもありました。それを実現するには店舗にECへの導線を設けるなど、デジタルからリアルだけでなく双方に誘導することが重要だと思います。

木内:
お客様の動向としてはオンライン、オフラインを自由に選択するのが当たり前になっていく。ここをどう掴んでお客様の体験価値に還元するかというのが大きなトレンドになっていきそうですね。そういう意味で今、北川様も苦労していることがあるのではないでしょうか?

北川:
すでに最適な業務フローが出来上がっているところに新しい仕組みを入れるとなると、かなり難しくなります。今までの理屈では非効率だからやらない方がいいと却下されていたものも、お客様目線でみた時に2倍3倍もメリットがあるとなれば、勇気を持って取り入れていくことが必要だと思っています。

ミライの消費者が購買に求める価値

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木内:
今後こうした変化にどのように対応していくべきなのか、トレンドや注力ポイントなどがあれば中村様教えていただけますか?

中村:
私自身も一消費者としてECサイトで買うことが増えていたんですが、やっぱり人って店頭にいくことでの新しい発見やコミュニケーションなども求めていると思うんです。ECだとある程度これを買おうというニーズがあって、それを買うということが多いと思いますが、オンラインの体験もMakuakeさんのように楽しめたり、応援できたりというのが重要になってくると思います。オンライン、オフライン問わず、ただ買ってもらうことを目的にするのではなく、消費全体として楽しんでもらう仕組みを用意することが重要になってくるのではないでしょうか。

木内:
今までオンラインとオフラインで分けて考えていたものがお客様視点で見ると一緒になってきている。そこをシームレスにする上で課題は多いけれども、いかに乗り越えていくのかが重要なポイントだと感じました。それでは最後に皆さまから一言ずついただきたいと思います。

中村:
企業様をサポートさせていただく中で、消費者全体のデータを一緒に把握して、広告という観点でいかにサポートできるかが重要だと感じています。グローバル展開している強みを生かし、日本とは異なる消費スタイルが出てきている海外の事例やデータを、国内でご紹介していければと思います。

余川:
データを扱う上でも、オンライン、オフラインの垣根をなくしていくことが重要だと感じています。例えば、特に大手企業だとECの売上を管理する部署と店舗での売上を管理する部署が違い、お互いの売上を取り合っている状況もあるかと思います。それをユーザー視点に立って、抜本的に変えていけると良い結果につながっていくのではないでしょうか。

北川:
アメリカでは店舗の来店者数が回復しているというお話もありましたが、この1年で大きく変わった消費行動は定着してきているので、簡単に戻ってくるという甘い見通しを持ってはいけないなと感じます。データを活用して高速でPDCAを回していきながら、お客様に喜びと新たな体験価値を提供していきたいです。

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