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既成概念を超えた先にある、新たな食文化 #Makuakeミライカンファレンス2021

2021年9月12日に行われたMakuakeミライカンファレンス2021。「ミライを創る挑戦者が集い、ミライについて考える」というテーマのもと、Makuake実行者様や各分野のプロフェッショナルを招き、さまざまな業界の未来について語ったイベントの様子をレポートでお届けします。

「食の最前線 〜アタラシイ挑戦で変化を起こし続ける〜」のセッションには、日本酒作りを行うhaccoba, Inc. 代表取締役の佐藤太亮氏、「九州アイランドプロジェクト」を運営する株式会社一平ホールディングス代表取締役社長の村岡浩司氏、青山にあるレストラン「The Burn」で料理長を務める(2021年12月退任)米澤文雄氏の3名が登壇。

普段、食に関わる仕事の最前線に立つ3名が感じる「コロナを経て、今だからこそ生まれる食文化」について語り合っていただきました。モデレーターは、株式会社マクアケ共同創業者/取締役の坊垣佳奈氏が務めました。

Makuakeで生まれた新しい食文化

坊垣:
食の業界は、今大きな変化を強いられています。Makuakeと食で言うと、コロナ禍でプロジェクトが増え、ユーザーニーズや応援購入総額も増えた分野になります。ゲストの3名も食分野の変化を実感されていると思いますので、お話を聞いていきたいと思います。まず、佐藤さんお願いいたします。

佐藤(以下、敬称略):
haccobaの佐藤です。僕たちは、日本酒にビールの原料であるホップを取り入れた、ある種クラフトビールのような酒づくりをしている酒蔵です。昨年Makuakeでプロジェクトを実行して、2021年の2月からようやく本格的に酒づくりをスタートすることができました。私たちの特徴を他に挙げるとすると、拠点を福島の南相馬に置いていること。震災の避難で人口が0人になり、もう一度みんなで文化を切り拓いていこうとしている場所なので、僕たちの挑戦とまちのあり方がシンクロしているのを感じます。

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坊垣:
味も華やか、見た目もピンク色で、女性でも飲みやすいのが特徴ですよね。では続いて、村岡さんお願いします。

村岡(以下、敬称略):
一平ホールディングスの村岡です。もともと寿司屋としてスタートした会社で、私はその2代目です。最近は飲食店の展開だけでなく「食」のものづくりも行っており、県境を超えてあたかも九州を一つの島のように捉え、九州の農作物と伝統的なものづくりの技術を掛け合わせて新しい価値を作れないかと考えています。

その一環で生み出したのが、Makuakeのプロジェクトで販売した「九州チーズタルト」。九州パンケーキという九州の素材でできたパンケーキミックスで生地を作り、伊佐牧場(鹿児島県)のクリームチーズや、丸山農園(宮崎県)のレモンを使って作っています。

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坊垣:
Makuake上には、九州アイランドという九州の食分野を中心にまとめたページもご用意していますので、ぜひご覧ください。続いて、米澤さんお願いいたします。

米澤(以下、敬称略):
私は青山一丁目にあるThe Burnというレストランの料理長をしています(2021年12月退任)。メインの仕事はシェフですが、食や料理につながるさまざまなプロジェクトに関わらせていただいています。お店のメインは肉料理が多いのですが、一方でヴィーガン料理のようなものもご用意しています。自分の弟がダウン症なのでマイノリティの方の味方になりたいという想いが強く、コンセプトに掲げていたところ、徐々に時代に合ってきたように感じています。

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坊垣:
Makuakeにも実は米澤さんが監修しているプロジェクトが結構あるんですよね。特徴的なものだと「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」でしょうか?

米澤:
今年はコロナで延期になってしまいましたが、前々回のトリエンナーレから、食のプロデュースに関わっています。なるべく僕がなにもしない、というのが関わる上で大切にしているポイントです。イベントに来るお客様は基本地元の方じゃないので、僕が手を加えたものを出してしまうとそれは東京のものになってしまい、良さが伝わりづらくなってしまう。現地のお母さんたちにも、そのまま出しましょうよと伝えるんですが「こんなものは商品にならない!」と嫌がるんですよね(笑)

坊垣:
それって、日本の地方あるあるですよね。自分たちはそれにずっと向き合ってきてるから、どれだけ素晴らしいものかが分からなくなって、自信を持って出していくことができないという…。

米澤:
その地方では当たり前のものなので、それが商品になるという発想がほとんどないですね。価値あるものだということを外からお伝えするのが、僕の役割です。

現代に必要な食とコミュニケーション

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坊垣:
haccobaのお酒は、どのような層にどういうコミュニケーションを経て届いているものなのでしょうか。

佐藤:
顧客層としては、一つは普段日本酒は飲まないけれど、クラフトビールは好きという若い方が多いです。クラフトビールの派生系みたいな感じで楽しんでもらっていると思います。あとは、南相馬という地域を応援してくださっている方々も少なからずいる印象です。地元の方もいらっしゃいますが、都市部の方々が圧倒的に多いです。

坊垣:
みなさん地域に根ざして何かをやっているという共通点がありますよね。村岡さんが、九州アイランドを始められた想いやきっかけを伺えますか?

村岡:
私の場合は、地元宮崎で起こった厄災がきっかけです。2010年に家畜伝染病の口蹄疫が流行って、宮崎の飲食店は大きな影響を受けました。私の経営する飲食店も客足が減り大変な目にあったのをきっかけに、もともと興味のあった食品加工業に参入しました。ローカルの特徴を出す為に“全部地元の素材で作りたい”という想いでスタートしたんですが、九州という単位で捉えれば、全てその中で揃うのではないかと気づいたんです。宮崎は小麦を作っていないけれど、他の県にはある、みたいな感じです。その後も、世の中にある加工食品は、全て九州という島の中で完結できるんじゃないかと、加工技術を持つ工場を訪ねたり、さまざまな産地を訪ねたりして、食材と技術の掛け算を続ける活動をしています。

既存の枠組みを壊す食のイノベーション

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坊垣:
エリアの括り方で、ブランディングがしやすくなったり、見え方が変わるというのは面白いですよね。

村岡:
そうですね、一次産品ってその地域の特性を表現できるので、どこの地域のものって出しやすいですが、加工食品になると途端に地域に紐付けづらくなる。醤油とか日本独自の文化に紐づいた調味料だって、今はその原材料のほとんどが外国から輸入されている。そこを一次産業に紐付けることができれば、もっと面白いムーブメントになるかもしれません。

僕、米澤さんに聞きたいんですが、今の時代って何かを作るディレクターは多いと思うんですが、米澤さんのようなプロデューサーが飲食業界に少ないのはなぜでしょうか?

米澤:
料理人の派閥があるからかと。ヨーロッパや日本で修行した人だと、どこのシェフに師事してきましたという派閥が生まれるんですよね。私がキャリアを積んだNYは珍しく派閥がないんです。私も師事していたジャン・ジョルジュの味の作り方やビジネスの作り方が色濃く出ることもありますが、ジャン・ジョルジュは三つ星フレンチの他にイタリアンやアジアンレストランも展開している。だから、色々掛け合わせていいという感覚を持てているんです。でも、日本でしっかりキャリアを積んできた人だと、そういう掛け合わせはタブーだと思っている人もいるので、壁を壊すのはなかなか難しいですね。

今の時代だから生まれた食文化

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坊垣:
ここ3年から5年ぐらいの間で、私たちの消費に関する感覚の変化が急速に進んでいる気がしていて。酒蔵の業界もオンラインでの販売ってほとんどやってなかったじゃないですか。従来のように地元の酒屋さんとの関わりみたいなのも残したいとは思いますが、それが故に届けたい人たちに届けられてこなかったという背景もあるのではないかと。佐藤さんその辺りいかがでしょうか。

佐藤:
確かにそうですね。一消費者からしたら、格好よく見えたり、美味しく感じたりってとても直感的なものだから、業界のしがらみは関係ない。今は伝統を大事にしつつ、多少自由に味を作ったり製法を変えたり、気軽に試してダイレクトに消費者に問いかけることができる。美味しいものを作る上で、本当にいい時代だと思います。

村岡:
今まであった壁が一気に溶け始めましたよね。Makuakeを実施すると、共感で繋がる自分たちを応援してくれるコミュニティや温かい輪が出来上がっていく。ものづくりの世界ってもともと自由で、自分がこう作りたいと思ったものを自由に表現できていたはずなのに、産業の発達とともに固定概念が生まれてしまった。でも今その壁が溶け始めて、新しい風が吹き始めているように感じています。

佐藤:
私たちも壁が溶けている感覚があります。お酒って新しい製法もあるけど、一方で自由な酒づくりをしていた昔の時代の製法が面白いというのも感じていて。今自分たちが参考にしているのも昔農家さんとかが自宅で楽しんでいたお酒づくりのレシピ集みたいなものです。工業化してきた時代よりもさらに前の時代の方が、次の時代のヒントがあるんじゃないかなと最近は思っています。

米澤:
昔に戻ることが新しいものを探るヒントになる。その中にさっきお話にあった共感とかストーリーって確実にあると思います。日本ってこれまで、裏側のストーリーとかをあまり語らない文化だったと思います。でも今はSNSもありますし、自分たちのこだわりを発信することで共感を生む=ファンを増やすことにつながると思うんです。日本人らしさは残した方がいいとは思うけれど、一方で欧米的な自分の言いたいことを発信して、やりたいことを全うする勇気はすごく必要ですよね。

村岡:
加工食品をやっていると、大きなマーケットを目指そうとする時、どうしてもバイヤーさんとかマーケットの意向を考慮せざるを得なかった。自分たちのやりたいことを通しすぎると売れないというマインドブロックがあったんですが、Makuakeはそれを超えられる気がします。

過去の蓄積が新しい挑戦のエンジンに

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坊垣:
村岡さんは考えたことをスピード感を持って形にする方だなという印象を持っているのですが、その辺りいかがでしょうか?

村岡:
小さなことでも長年かけて積み重ねてきた信頼があったり、しっかりと本質をリサーチする力があったり、繋がりを大切にしてきた人にとっては新しいことに挑戦できる良いタイミングだと思います。コロナがいつ終息するかという出口は分からないけれど、それだからこそ、今はなんでも許されるからやってみようとスピード感持って動ける時代ですね。

坊垣:
周りの感覚も変わってきているから、応援してくれる人や共感してくれる人も変わってくる。Makuakeみたいなツールを通じてコミュニティを形成することもできる。ある意味トライしやすい時代ですよね。米澤さんも過去の修行経験は大きいんじゃないでしょうか?

米澤:
色々なことをやり始めたのはここ7年ぐらいなので、厨房から出ずに料理を作り続けていた過去の15年ぐらいは確かに今を支えていると思います。やっぱり基礎があると強いですよね。家の土台と同じで、技術や経験も裏付けされる下積みがあればこそ周りの人たちに対する説得力も高まる。だから若い料理人たちにも、色々やりたいのはわかるけれど、まず一つのことを5年続けようとは言っていますね。

坊垣:
佐藤さんも、他の酒蔵で修行されてましたよね?

佐藤:
そうですね、でも僕たちはまだまだひよっこです。私たちは酒蔵として一人前になっていくところとか成長の過程も含めて楽しんでもらえたらいいなと思っています。酒蔵を作るからには、やはり100年、200年続いていくものになってほしいので、まだ本当に最初のフェーズです。一緒に修行を見守ってほしいという気持ちで頑張っています。

坊垣:
私も応援しています。3名ともこの変化を問われるタイミングで、長い時間かけて作ってきた関係性やご自身の中で培われてきた基礎を生かしながら、巻き込み力も強く感じました。今、飲食店を中心に苦しい方が多いと思うのですが、何かしらMakuakeで展開できることもあるのかと思いますので、改めてご一緒していけたらいいなと心新たにさせていただきました。

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