もずとりす

家を出るときには生ぬるい風が吹いていて、曇りの春も寂しいなとか思う。でもセブンに着いて制服に着替えると雨が降り出していて、ランダムなしみがアスファルトに滲んでいた。帰る頃には霙になっていて、ビニール傘を買う羽目になった。
夜中、子供が絵本をねだるような切実さで、ヘッセの詩集を探す。結局いつかは詩に辿り着くのかもしれない。
炬燵の対面に置いといたはずの詩集は何処へいったのか、仕方なく代わりを探して本棚を触っていると、アルハンブラ宮殿についての本に、一万円が挟まっていた!
いつかへそくりにしたのを思い出した。 
社会人になってそこそこお金稼いで余裕ができたら、一万円を部屋の色々なとこに隠しときたい、そんで百舌鳥や栗鼠みたいにそのことを忘れたまま春を迎えたい。

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