#12 「彼の願い」
― 今一番欲しいものを尋ねると酒井努君は「三浦の命や。サッカー部の仲間なんだ。」三浦君という子が、家屋の下からまだ救出されてない子だった。(新聞記事より) ―
「彼の願い」
彼は知っている
彼は知っている
あの子がもう戻ってこないことを
だけど願ってる
だけど願ってる
全ての望みを捨ててまで
あの日の幸せを
苦しいくらい 取り戻したいと
彼は知っている
彼は知っている
けれどもそれは叶わぬ願いと
だけど願ってる
だけど願ってる
彼は
きっと泣いたりなんてせずに
強い心で
自分自身を見つめてる
わたしみたいに泣いたりなんてせずに
ずっとずっと
この現実を見つめてる
なんてなんて わたしたちは弱い存在なのでしょう
このぬくぬくとした日々をすべて投げ捨てても
彼の願いを叶えられないなんて
(1995.1)