#3「赤い花」
教室の窓の外で 強い風に吹かれている赤い花
大きな木の枝に付いたその花の名を
わたしは知りもしないから
あなたのことを たとえば 「赤い花」と呼びましょう
この景色をこの色では もう二度と見ることはないでしょう
大学の4年間が過ぎようとしています
自分にとって 何だったのかと 問いかけても
今は答えの出ない時間
それでも終わりが近付けば
強くなっていくこの気持ちを 何と呼べばよいのでしょう
寂しさや 悲しさや やり切れなさや そんなものとは違うから
この気持ちを たとえば 「赤い花」と呼んでもかまわない
もう二度と見ることのない 確かな予感を含んだ景色は
あの日あなたが帰らぬ人になったことを はっきり理解したときと
同じ気持ちを感じさせます
生きていて 流れる時間を手にして
こんなに 綺麗な 赤い花を見ることが出来るのに
苦しいです
苦しいです
繰り返すことのない時の中で 繰り返していくこと
こんなに 綺麗な 赤い花を見ることが出来るのに
苦しいです
苦しいです
(1995)
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