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人はどのような時に他者とのつながりを見出すのだろう?

今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「SNSを通じての影響の広まり方」を読みました。

本節のタイトルは「SNSを通じての影響の広まり方」ですが、実際のところどれだけSNSから影響を受けているのでしょうか。つい見てしまうSNS。関心がありそうな広告が表示されたり、友人・知人の投稿が表示されている。

何かを呼びかけていたり、有益だと思われる情報を届けていたり。それらを受け取っている一方で、いくらかは素通りしている感覚もある。その時々によって自分の興味関心が違う。もっと言えば「何を発信しているか?」より「誰が発信しているか?」で自分の興味関心の度合いが異なるような気がしています。

自分との距離が近い、関係性の深い友人からの発信は少なからず気を引かれますし、その友人が知人の投稿をシェアしている場合も、自分と知人の間に関係はなくとも「友人を介している」ことで少なからずつながりを感じられ興味を持つことは少なくありません。

私たちが住む新しい世界、つまりデジタルメディアによってつながった社会では、デジタルなソーシャルメディアを使って人々の協力を促さなければならない。それに成功することもあれば、失敗することもある。どうすればデジタル世界におけるエンゲージメントを成功させることができるのだろうか?

「どうすればデジタル世界におけるエンゲージメントを成功させることができるだろうか?」との問いかけですが、著者はエンゲージメントという言葉を「チーム内のメンバー間で繰り返される協調的行動」と定義しています。

デジタル世界。ここではFacebookやTwitterなどのSNSを想像しながら考えてみることにします。何かを呼びかけたとして、何かを伝えたとして、実際に協力してくれる人がどれだけ増えるのか。一度に複数の人に影響を与えることができるのか。あるいは、ネットワーク上で影響が徐々に連鎖して大きな流れとなるのか。いずれのパターンもあるように思いますが、いずれにせよ「影響力はソーシャルネットワーク上でどのように増幅されるのか?」との問いを考えることが、デジタル世界におけるエンゲージメントの成功に直結しているように思います。

最初の実験では、持ち家居住者に対してソーシャル型のフィードバックを与えた。自宅の電力消費量と、他の平均的な世帯の消費量とを比較できるようにしたのである。比較する相手が国全体における平均の場合、人々の行動は変わらず、省エネ行動もほとんど見られなかった。しかし比較する相手を周囲の近隣世帯にしたところ、行動変化が起きた。つまり比較する相手が自分とどれだけ近い関係であるかが重要なのだ。これこそソーシャルネットワーク効果である。比較する集団に含まれる人々の顔が見えるようになることで、その相手に対する信頼感が高まり、生成される社会的圧力も強くなるのだ。

著者は電力会社の協力のもとで省エネ行動に関する実験を行い、持ち家居住者に対して電力消費を抑えるように促したそうです。電力需給逼迫から節電要請が続く昨今ですが、実際のところニュースなどを通じた政府の呼びかけに応じて節電に協力したいと思うでしょうか。ウェブニュースのコメント欄を見ると様々な意見が交わされています。

政府の要請ではなく、身近な人からの呼びかけだとしたらどうでしょうか。しかも、その人自身が実際に節電行動を取っていることや、工夫を紹介している場合にはどうでしょうか。もしかしたら「自分も何かできることをやらないとな…」という気持ちが芽生えるかもしれません。実際に行動するかはともかくとして。

こうして身近な例を考えてみると、「つまり比較する相手が自分とどれだけ近い関係であるかが重要なのだ。これこそソーシャルネットワーク効果である」との言葉には納得感があるように思いました。

また、「どれだけ近い関係であるか」については、その人に対する好意や価値観の類似性でも測ることができるかもしれません。その人のことをあまり好きではないと感じていたら、相手の呼びかけを自分事として受け入れることができないかもしれません。

そこで次に私たちは、SNSを電力会社のウェブサイト上に解説し、まずは人々にローカルな「バディ」グループを形成するよう促すために、少額の報酬を与えるようにした。(中略)こうして生まれたソーシャルネットワーク・インセンティブによって、電力消費量を17パーセント抑えることに成功した。この効果は過去の省エネキャンペーンで最も成功したものの2倍であり、一般的に行われているキャンペーンと比較した場合には、4倍にもなった。そしてファンフィット実験と同様に、行動変化の効果が最も大きかったのは、周囲の人々との社会的絆が強い場合だったのである。

ローカルな「バディ」グループの形成を促す。

前回は著者が社会実験として行った健康促進プログラム「FunFit」でも同様の仕掛けが施されました。運動を促すためにソーシャルネットワーク・インセンティブを用いる。すなわち、相互に状態を確認しあって適切な支援(あるいは罰や圧力)を与えるように、そのような確認・支援に対して少額の報酬を与えて社会的圧力が働くようにする。

そのようなソーシャルネットワーク・インセンティブの効果は高く、持続性が高いことが示されたのでした。今回の省エネ行動も同様で、効果の源泉は「周囲の人々との社会的な絆の強さ」による。

このように考えると「人はどのような時に互いにつながりを見出すのか」という問いがソーシャルネットワーク・インセンティブを考える上で重要だと思います。

共通の目標に向かっていること。孤立していると感じないこと。誰かに支えられていると感じられること。つまり、「何かを共有している」と感じる時に人は互いにつながりを見出すのかもしれません。

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