見出し画像

自立する地域とは何だろう?

E・F・シューマッハ(イギリスの経済学者)による書籍『スモール・イズ・ビューティフル - 人間中心の経済学』の「第一部 現代世界」より「第五章 規模の問題」を読めています。

本日は「人口と地域の発展」について。一部を引用してみます。

大きな国内市場が絶対に必要だという主張を、どのように考えたらよいだろうか。もし「大きな市場」の意味が、政治的な境界線を頭において考えられているとしたら、それは錯覚である。(中略)ところが、もし貧しい国か州が、豊かな国か州に政治的に結びつけられているか、政治的支配を受けているとすれば、話はまったく違ってくる。なぜだろうか。それは、人の移動のはげしく、故郷離れの進む社会では、不均衡の法則が均衡の法則よりもはるかに強く働くからである。
二十世紀後半の大問題は、人口の地域的な分布の問題、つまり「地域主義」の問題である。ただし、ここで地域主義というのは、多くの国家を自由貿易制度に組み入れる地域主義のことではなくて、それぞれの国の中ですべての地域を発展させるという、反対の意味のものである。これこそが、今日すべての大国で解決を迫られている重要課題なのである。

「二十世紀後半の大問題は、人口の地域的な分布の問題、つまり地域主義の問題である。」

本書が執筆されたのは1973年ですが、その当時にシューマッハが喝破した「人口の地域的な分布の問題」は、「都市への一極集中」が加速しているという事実が裏付けています。

日本については、総務省「人口推計 2019年(令和元年)10月1日現在(結果の要約,概要,統計表)」によれば、2019年10月時点で、関東4県が全人口の29.1%を占めます。内訳は東京(全国比:11.0%)神奈川(同7.3%)埼玉(同5.8%)千葉(同5.0%)となっており、東京圏への集中が緩やかに進んでいます。

「都市は人類最高の発明である」と言われることもあるようですが、都市という装置は「空間的な集中」つまり人同士の物理的距離を近付けることで、様々なコスト(物理的移動、コミュニケーションなど)を下げました。

一方、都市は「巨大な経済圏」としての魅力から、人が集中し続ける結果として「過密」となってしまうと、様々な弊害が出てきます。それはたとえば「満員電車(によるストレス)」や「住居の高密度化」という形で表面化しています。

「人口が多い地域=巨大な市場」という見方、つまり「規模の大きさ」は人を惹きつける力があるようです。

しかし、新型コロナウイルス蔓延により「密が仇になる」という時代が突如としてやってきました。リモートワークが推奨されるなどしていますが、今なお電車の混雑は解消されていません。

新型コロナウイルスは、都市も地方も関係なく蔓延しており、ワクチン接種が進むまでは沈静化は望めないと思われます。

そのような状況下だからこそ「自立する地域とは何だろう?」という問いと向き合ってみたいと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?