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ランダム性を取り入れて矛盾を乗り越える。

今日は『反脆弱性』(著:ナシーム・ニコラス・タレブ)から「腹ぺこのロバ」を読みました。

衝撃やストレスを、成長や繁栄の推進力へと変える性質。それが「反脆さ」です。安定しているようで脆い、不安定なようで反脆い。適度なランダム性が反脆さに対して有用であることが示唆されています。

食料と水の両方に同じくらい飢えたロバを、食料と水のちょうど中間に置けば、そのロバはどちらか一方を選べずに飢餓か渇きで必ず死ぬだろう。ところが、どちらか一方にランダムに小突いてやれば、命を救うことができる。(中略)システムが危険な袋小路に陥ったとき、そのシステムを行き詰まりから解き放つことができるのは、ランダム性のみであることもある。この例では、ランダム性の欠如は確実な死に等しい。

どちらも等しく大切だけれど、どちらかしか選べない。同時性が成立しない状況で何を選ぶのか、どのように判断をするのでしょうか。

通常の論理演算では「解なし」となってしまうかもしれません。あるいは、永遠に循環する解の探索プロセスが始まり決められない(答えを出すことができない)となるかもしれません。

どちらも正解であるならば「論理」で答えを出せないのであれば、他の基準で判断する他ありません。その時の「気分」かもしれませんし「直感」かもしれません。それらは「ランダム性」に近いのではないでしょうか。

最後は「ランダムに決める」という行動が組み込まれたシステムは反脆い。

一見すると「軸がない」「一貫性がない」とも見えるのかもしれませんが、「軸を持つ」「一貫性を重視する」というのは「安定しているようで脆い」という状態に陥る可能性があるのだとすれば、「不安定なようで反脆い」という状態へと至る道筋なのかもしれません。

さらに、「カオス」と呼ばれる変動を示す、いわゆるカオス系は、面白いことにランダム性を加えることで安定させることができる。(中略)次に、彼がスイッチを入れると、まるで魔法のように、秩序的で滑らかな跳ね方に変わった。なぜ魔法かというと、彼がカオスを取り除いたわけではなかったからだ。完全にランダムな弱い衝撃を加えたことで、カオスから秩序へと、状態の変化が起きたのだ。

「カオスに対してランダムな弱い衝撃を加えることで秩序が生まれる」というのは非常に興味深いです。カオス(混沌)にランダム性を加えると、一層カオスな状態になるのではと思えるのですが、その逆のことが起きている、つまり逆説的だからです。

「考えがまとまらない」時に気分転換に散歩に出かけてみると、不思議と頭の中が整理されてくることがあります。もしかすると、そこにはランダム性が関わっているのかもしれません。

目にする景色は「ランダム」です。同じ道を何度歩いたとしても、見え方は変わるはずです。なぜならば、目に飛び込んでくる景色は時事刻々と変わるのですから。光の加減、歩いている人、走っている車など。景色を構成する要素が変化するからです。

秩序を取り戻すためにランダム性を取り入れてみる。論理で行き詰まったら最後はランダムに決めてみる。そう思うと、案外、人という生き物の可能性は論理的に考えること以上に、気分に任せてみることにあるのかもしれません。

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