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プライバシーとはなんだろう

今日は、ジェレミー・リフキン氏(文明評論家・経済評論家)による書籍『限界費用ゼロ社会 - <モノのインターネット>と共有型経済の台頭』より「プライバシーの問題」という一節を読みました。一部を引用してみたいと思います。

プライバシーは長らく基本的権利と考えられてきたが、生得の権利だったことはない。それどころか現代を除けば、人類の生活は全歴史を通じておおむね、地球で最も社会的な種にふさわしく、公的に営まれていた。(中略)人間生活の囲い込みと私有化は、共有地の囲い込みと私有化と手を携えて進んだ。煎じ詰めればすべてが「我がもの」か「汝がもの」になる新しい私有財産関係の世界においては、自らの所有物に囲まれ、残りの世界から隔てられた自主的行為者という概念が、独自の形をとるに至った。
プライバシー権は他者を締め出す権利と化し、各人の家は各人の城であるという考えが生活の私有化に伴って現れた。そして、あとに続く世代は、プライバシーを人類史の特定の時代に見合った、単なる社会的慣習ではなく、自然が与えた人間生来の特性と考えるようになった。
この世代にとって、自由とは、他人の制約を受けずに自主的に行動したり、他者を排除したりすることにあるのではなく、むしろ進んで他人にアクセスしたり、グローバルでバーチャルな公共広場の一員になったりすることにある。この若い世代の特徴を一言で表すなら、それは透明性であり、彼らの行動の仕方は協働だ。そして自己表現は、水平展開型のネットワークでのピア・プロダクションとして行なわれる。
肝心な疑問は、あらゆる人間とあらゆるモノがつながったとき、個人のプライバシー権をしっかりと守るためにはどんな境界を設ける必要があるか、だ。

「プライバシーとは何だろう?」
「プライバシーは他者に知られたくないもの?」
「プライバシーは他者に共有してゆくもの?」

そんな問いが浮かぶ一節でした。

IoT(Internet of Things)とはモノとモノがインターネットでつながった状態のこと。インターネット空間上ではわずかな時間の中で膨大な量のデータ、情報が飛びかっています。

リクエストとレスポンス。

インターネットを介してサービスを利用するとき、私たちはウェブブラウザの「向こう側」に対してリクエストをしています。そして、そのリクエストに対して「向こう側」からレスポンスが返ってきます。それは新しいウェブページだったり、文章、音声、動画などの情報だったり。

リクエストする時、場合によっては明示的に個人情報を送ることもあれば、位置情報などの暗黙的な個人情報を渡していることもあります。たとえば、自分の位置情報を利用するサービスであれば、「向こう側」には位置情報が記録されています。その行動履歴から特徴的なパターンを見い出せば、住所などの個人情報を推測できるかもしれません。

その意味ではサービスは利用したいけれど、「向こう側」の存在に対しては情報を知られたくない、記録してほしくないと思うわけです。自分と他者、つまり「向こう側」との間にある境界線の内側の領域がプライバシーであると。

一方、SNS上で自分のプライベートな近況や行動、考えなどを共有することもあるわけですが、これは顔の見えない「向こう側」つまりSNSの運営主体に対してではなく、知人や友人などの顔の見える「向こう側」に対して共有しています。

しかし、知人や友人など顔の見える「向こう側」"だけ"に対して共有されているわけではなく、顔の見えない「向こう側」もその情報を保持、管理しているので「知っている」わけです。

こう考えてみると「プライバシー」という境界線はどこか曖昧で、本人が気にしなければどこまでも領域は狭くなる(透明性が高くなる)こともあるし気にするならば領域はどこまでも広くなります(何も情報を開示しない)。

囲い込みや私有化(私有財産制)が台頭するまではプライバシーなるものは意識されることなく、自然と共有空間の中で一体となって生活し、そこではお互いに目に見える状況であるがゆえに対等な関係が成立していました。

インターネットを介して、互いに目に見えないつながりの中に関係性が成立していくことになります。その中でどのように「対等な」関係を築いていけばよいのでしょうか。

自分のプライバシーという曖昧な境界線の領域を狭くできる他者と出会い、その人たちと深い「つながり」を築いて、自己開示していくことが鍵になると思います。

一方、透明性とは「隠しごとがない」ということだけれど、やっぱり誰もが知られたくない「何か」を抱えているのではと思うと、「自己開示の強要」「フェアの強要」みたいな環境では、自己開示は難しい。

「プライバシーとは何だろう」という問いの裏には、「その人がどのような環境に置かれているか?」という問いが隠されている気がします。

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