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「今を愛する」ということ〜身体に残る響きの余韻〜

晴れ渡る青空の下、コンサートホールに足を運び、豊かでみずみずしい音響に包まれる。

心地よい響きが、心とからだの緊張を解きほぐしてゆく。

不思議なことに、鳥肌が立つ瞬間は「音が届く前」にもやってくる。

じんわりと残る余韻。

覚えようとしているわけではないのに身体が覚えていて、目を閉じるだけで美しい音が聞こえてくる。

その時の「今」が、時間を経てもなお、「今」として私と共にある。

今を愛そう。

輝きは何を照らしてもよい
すべてが私を忘れてくれる
今に棲み
限りなく私が今を愛する時

いつまでも黙っている歌の中に
あまりにかすかな神の気配がして
それから私がふと今に気付く
ただ静かなひろがりの中で

私が今の豊かさを信ずる時
この星にいて死を知りながら
私は自由だ

情熱は何をみたしてもよい
陽のように空のように
あふれるあまり黙って輝くもの達の下で

谷川俊太郎『空の青さをみつめていると』より「今」

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