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ストレスと友人になる

僕にはあまり友人と呼べる人がいない。
今は生まれ故郷を離れ、知っている人が誰もいない土地で一人で暮らしているので尚更だが、実のところ地元にもあまり友人はいない。
元々人付き合いが得意ではないというのもあるが、どちらかといえば僕は一人で過ごすことが好きだったりする。
変な気を遣って自分のしたいことを制限されてしまうのが嫌なのだ。
だから、他人と一緒に過ごすくらいなら一人で過ごすという選択を取ることが多い。

ただ、断じて「ぼっち」ではないと思っている。
別に一人で過ごすことしかできないわけではない。
必要に応じて他人と過ごすことだってできる。
まあそれは、現在は、という話で、中学高校の頃は「ぼっち」だったと思う。
友人と呼べるような関係の人間はあまりいなかった。
今でも連絡をとっている同窓生はほとんどいない。

高校の頃、進路指導の先生に言われたことがある。
「一人で過ごすことへの抵抗が少ないということは、強みになりうる」と。
どういう意味で言われたのか、いまだに僕にはわかっていない。
一人で過ごすことへの抵抗がないかと言われれば、別にそうでもなかったと思う。
どうしようもない孤独感に苛まれることもあったし、自分のことを相談できる友人がいないというのはそれなりに辛いときだってあった。
なんだかんだ、一人で生きられる人間なんてそうそういないのだ。

ただ、アラサーになってからのこの数年間、つくづく思っていることは、一人でいる時間も大切にしなければいけないということだ。
きっとこれは僕だけの特性ではないだろうが、僕は他人と過ごす時間に少なからず僕なりに気を遣ってしまうため、他人と過ごす時間が長くなればなるほど気持ちが疲弊する。
プライベートで他人といる時は、「どう思われているか」「相手の時間を浪費していないか」ということが気になりすぎてしんどくなる。
仕事で他人といる時はまだマシだが、それでもどう思われているかを気にしなければいけないストレスは感じてしまう。
特に今は中途半端な役職を与えられているために、上からも下からもストレスがかかる。いわゆる「中間管理職は辛い」というものだ。
よく考えれば、1日のうち9時間も拘束され、それが月に20日ほどある、労働ってとんでもないことな気がしてきた。
そんな、プライベートでも仕事でも疲弊してしまう気持ちをリセットするために、やりたいことを自分一人でやる、家から一歩も出ず誰にも会わない、そんな日を作らなければいけないのだ。
今の時期だと、窓とカーテンを閉め切り、エアコンをつけて、涼しい部屋でゲームをしたり、ガンプラを組み立てたりする。
飽きたり疲れたりしたら昼寝をすればいい。
休みの日にそういった過ごし方をすることが増えてきた。
家から一歩も出ない休日は全然珍しくない。
「せっかくの休みの日なのに、勿体無い」と言われることもあるが、そうやって心のバランスをとらなければやっていけないのだ。

昔の僕、ブラック企業に勤めていた頃の僕は、そのバランスの取り方が下手だった。
そもそも休みは月に四日、休日出勤も毎月結構ある、毎日残業を強いられる、仕事のことを考えない日はなかった。
仕事に遅刻しそうですごく焦る夢や、出勤中に色んな理由で全然職場にたどり着けない夢を、毎日毎日見た。
それなりに厳しい僕の母が「辛かったら辞めてもいいと思うよ」と言うくらいには、あの頃の僕は見ていられない状況だったという。
結局その職場は一年くらいでやめた。
もちろん学ぶこともあった。あの経験がなければ今の自分はいないとも思うし、今の職場では割と例外的なキャリアを積めているのも、おそらくブラック企業での経験が生きていると思う。
ただ、何より心身ともに辛い一年だったし、いまだに少しストレスがかかっている時は仕事に遅刻する夢を見たりする。
心に負った傷はそうそう治らないもので、通院したりするほどではないものの、多分僕の精神状態は普通の人より弱っている状態がもうここ数年はずっと続いている。

それでも、あの頃に比べたらマシだし、少しストレスがかかっていてもよっぽどのことがない限り大丈夫だ。きっと僕はあの頃より確実に成長しているのだと思う。
ストレスとうまく向き合うこと、ストレスを作らないようにうまく立ち回ること、そう言ったことをこの数年間で学べたのだと思う。
もちろん、ストレスフリー、というわけにはいかないが、何も対処できないよりは全然いい。
あの仕事をやめたのがその時の僕にとっては正解だった。
何が正解で何が間違いかわからない、とはよくいうが、その時の自分にとって正解ならそれが正解でいいのだ。
前の仕事をやめた後の就職活動は正直難航してしんどかったし、今の仕事に就けたのだって本当に運が良かったとしか思えないくらいだが、僕はいつだってあのブラック企業をやめたことを後悔したことはない。

ストレスは、常に僕たちのそばにいる。
どんな場面でもストレスは少なからずかかり、あまりに過剰になると体調を崩したり精神が不安定になったりする。
ただ、適度にストレスのかかった環境でパフォーマンスが向上する場合もあるし、ストレスは不要というわけではないのだ。
ただ、ストレスの原因を分析し、和解することが重要だ。
ストレスが過剰になったならその原因を取り除き、適度なストレス量に調整する。
そのためには、自分自身の心との対話が必要になってくる。
何を望むか、何を望まないか、自分の心の正直な声に耳を傾けてみることだ。
そして、適度なストレスの中でパフォーマンスを向上できるようになれば、ストレスはどんな友人よりも心強いパートナーとなってくれるだろう。

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