ネタ

昔から古事記とかに出てくる、黄泉の国のエピソードが納得出来なかった。何か違うなあ、という違和感。愛する妻を前にしてそうなるかな?という気持ちだ。

なので、いずれ短編映像にしてもいいかな、と思いメモしたものを晒しますね。

「タイトル未定」

 男は目を覚ました。なぜ自分がここに横たわっていたのか、全く記憶にない。彼はゆっくりと体を起こした。どこか痛いわけでもない。手を頭に持っていった時、何かが手に触れた。彼はそれを取って見てみた。女性用の髪飾りだった。
 その瞬間、彼は全てを思い出した。一心同体のような妻との生活。お互いに交換したそれぞれの髪飾り。多くの子供を生したこと。子供たちの姿を二人で見たこと。そして、最後の子供を産んだ時、妻が死んだこと。男はそのことを認められなかった。あまりの出来事に、彼はその前後の記憶が曖昧になってしまっていたのだった。
 男はその場所に向かった。妻がいるはずの場所だ。山の大きく開いた横穴に寝かされているはずだ。彼はその横穴の入り口から体を中に入れた。気温がすっと下がるのが分かった。横穴は少し傾斜する下り坂で、どこまで続いているのかよく見えない。辺りは暗い。彼は持っていた小さな松明に火をつけた。そして、坂道を下っていった。
 しばらく行った所に、やや開けた平らな空間があった。そこに、妻がいた。妻は寝かされ、体には大きな布のようなものが被せてあった。しかし彼にはそれが妻だと分かった。彼は近づき、布を剥いだ。その瞬間、彼の目に飛び込んできたのは、妻の体に群がっている無数の蛆だった。一瞬、彼はたじろいだが、妻が松明の明かりを見て、小さく「眩しい」と呟いた。男は妻の体に食らいついている蛆虫を片端から取り除いていった。何十匹、何百匹の蛆虫を地面に叩きつけ、足で踏み潰した。松明で焼き殺した。そのせいで松明は消えてしまった。そして妻を抱え起こした。妻は足に力が入らないようだったが、彼にしがみつくような形で何とか立ち上がった。
「逃げよう。ここから」
「うん。連れていって」
 彼は妻の手を引いて、走った。こんなに暗闇は深かっただろうか? こんなに坂道はきつかっただろうか? 男は疑問を感じたが、妻をここから連れ出すという決意のもと、そんな疑問は吹き飛んだ。やがて、遠くに光が見えてきた。あれだ。あれが外の世界だ。生者の世界だ。あそこで我々はずっと暮らしていくのだ。そこまでたどり着いた時、妻の足が止まった。
「早く行こう」
「だめです。そこは明るすぎる」
「あそこが一緒に住む世界なんだ」
「いいえ。あれはあなたが住む世界。そこにいたら、あなたはきっと私をいつか憎むようになる」
「そんなことあるものか!」

 振り向いた瞬間、妻は瞬間、男を突き放した。今までどこにそんな力を残していたのか、という程の力だった。そして、妻はそばにあった岩をずらし、入り口を塞ごうとしていた。
「やめろ!」
 男は叫んだ。閉じていく岩の隙間から、妻の腐り始めた顔が見えた。身体に雷をまとっている。かつてと違う醜い姿。
「さようなら。私のことは忘れてください」
 忘れるわけがない。男は、岩の隙間から、首にかけていた飾りを中に押し入れた。しばらくの間があって、隙間から妻の手が出てきた。似た形の髪飾りだった。それを男が手に取ると、岩は完全に閉められた。
「俺は…お前を忘れないために、1日に1500人の子供を作る」
 妻が岩の向こうで答えた。
「あなたが私を忘れるように、1日に1000人の人を殺します」
 もう声は聞こえなかった。男は空を見上げた。そして、髪飾りをつけると、立ち上がり、光の中へと歩き出した。

こんな感じです。
アテルイの話や卑弥呼と壱与の話も作りたいね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?