[LIVE]H男は生きている-蔦木栄一(突然段ボール)没後20年追悼ライブ 2023年8月25日新宿LOFT
1977年に蔦木兄弟により結成されたパンク/ニューウェーブ/アヴァンギャルド/アンダーグラウンド・バンド、突然段ボール。
私の残りの人生のテーマとして「一度は観てみたいがまだ観ていないバンドを観る」第一弾として観に行ってきた。
いつまでもあると思うな親とバンド。
PANICSMILE
1992年に福岡で結成されたパンク/ポスト・パンク風のバンド。
初見。
聴いていて思い浮かんだ言葉は「計画された混沌と破壊」。
自由に彫刻してゆくリード・ギターがTelevisionを思わせないでもない。
石川浩司
たまのランニングでお馴染みのアンダーグラウンド・アーティストによるソロ演奏。基本はカラオケにヴォーカルを乗せるパフォーマンス。
小道具は身近にある生活用品が多く、洗濯物干しやガムテープ、ビニール袋等が使われていた。
「ロックは理科を避けて通ることができない」という独自の理論にハッとさせられつつも「教科書が開けなかったから物理を理解できず、エレキはやめてアコースティック楽器奏者になった」というエピソードが本当にすてき。
ラストは突然段ボールの蔦木俊二氏がギターで参加。ほぼインプロの演奏だったと思う。
グンジョーガクレヨン
初見。
衝撃としか言いようがない。
楽曲もない、リズムもコードもない、和音もない。
ギター、ベース、ドラム、サックスの音に反応しモダン舞踊(?)というか暗黒舞踏のような舞を披露するフロントマン。マイクは立てられておらず、そもそも歌わない予定だったと思われる。
生命は環境に反応しながら生きる。
この音が聞こえているにしろ、聞こえていないにしろ。
聴いているにしろ、聴いていないにしろ。
意識的にしろ、無意識的にしろ。
ただ、反応してゆく。
みたいなことを考えた。
松本里美(サボテン)
1982年に突然段ボール主催の自主レーベル「FLOOR」からアルバムをリリースした女性ポスト・パンクバンド、サボテン。
松本里美による弾き語りのパフォーマンス。
銅版画としても活躍しているのだそうだ。
MCで興味深いエピソードがあった。
故・蔦木栄一は現代美術作家として活動していたらしく、ある時銀座のギャラリーで「眩しいチョコレート」なるインスタレーションが展示されていた。壁じゅうに板チョコを貼り付け、一週間そのまま溶けていくさまを展示していたそうだ。うーん、現代アート。
その再現として、自ら描いたと思しきイラストにチョコレートを貼り、ライトをあて溶けていく姿を演奏しながら展示していた。
演奏後に「作品の写真を撮ってもいいですか?」と声をかけると、「もちろん。溶けなかったけどね」とはにかんでいた。
突然段ボール
音源は聴いていたがライヴは初見。
非マッチョで、ファッショナブルでもなくて、生きづらくて、世の中すべてをくだらないと思っていて、やさぐれて、しらけて、逆ギレして、、表現する。
これぞ、パンク・ロックだと、私は強く思った。
MCで「親方(亡くなった兄、蔦木栄一のこと)は世界の成り立ちがくだらないと、いつも言っていた。本当にくだらないよね。どうすればいい?ぶち殺せ、だよな?」
自らを「頭がおかしい」と言っていた蔦木俊二のことを、狂人だとは思えない。みんなそうだろ?
「今でも突段で食っていくことを夢見ている。叶わず死んじゃっても、別にいいけど」
デビューシングルから新曲まで。
過去も未来も背負ったライヴ。
ものすごく、刺激を受けた。