演技の向こう側 | ジャグリング新人戦西日本杯 イベントレポート

このnoteは、ジャグリング新人戦西日本杯のイベントレポートです。

新人戦の雰囲気が伝われば嬉しいです。

◆自己紹介
花田と申します。ジャグリング歴10年目。最近はイベントをつくっています。

今年は、ジャグリング新人戦に協賛として関わっています。少し前は運営に参加していました。

新人戦にはそれなりに長く関わっているのですが、一度も会場に行ったことはありませんでした。良い機会なので参加することにしました。

◆イベント概要
ジャグリング新人戦 西日本杯
日時:2024年3月10日(日)
場所:大淀コミュニティセンター(大阪府)
コンセプト:1. 新人世代の交流促進、及び、モチベーションアップに繋がる場を提供する。2. 競技会を通じて、新人世代のジャグリング力向上に貢献する。

参加人数は、70-80人くらいでした。きちんと数えようと思ったのですが、すぐに数えるのが難しいくらいの人数でした。


◆出場者一覧
出場人数は、女子個人部門が8名、男子個人部門が25名、フリー部門が3名です。

新人戦の出場資格は、「ジャグリング歴1年以内」です。(フリー部門を除く)

出場人数は多い印象を持ちました。
一人当たりの演技時間が2分30秒、午後だけの開催ということもあり、密度は高く感じました。

詳しい大会のルール等は、公式webサイトをご確認ください。

出場者一覧 公式webサイトより

◆イベントのタイムテーブル
大会は午後から始まります。私は14:45くらいに会場に着きました。

ジャグリング新人戦公式SNSより

◆開会式

司会が話し始める前に、観客の拍手から始まります。早速あたたかい雰囲気です。司会はアマルガさん。

代表挨拶、審査員紹介、大会の注意事項のアナウンスがありました。

審査員席は、客席から見て、右から、らっせ〜ら世良さん、ラクトさん、砂原啓人さん、鈴木さらさん。

開会式時点ですでに演技しやすい空気を感じました。

◆女子個人部門

大会は女子個人部門から始まります。
主観的になりますが、演技を見て思ったことを率直にお伝えできればと思います。

(1)色へのこだわり

エントリーNo1の天さん(芸大パフォーマンスドール, シガーボックス)は、色の魅せ方にこだわりを感じました。

シガーボックスの側面も色を変えていました。衣装はもちろん、グローブや靴の色まで意識されていたように思います。

シガーボックを積む動きには練習量を感じました。箱を積みながら、面で色を見せていく、そんな印象を受けました。

(2)自然な拍手

No2の陽炎さん(芸大パフォーマンスドール, フロウワンド)の演技では、観客からの自然な拍手が印象的でした。

技が決まったタイミングだけでなく、決めポーズだけでなく、トリックの中で拍手が起きていました。

演技が始まる前から観客を意識されており、所作の一つ一つが積み上がって、自然な拍手につながっていたように思います。

ボディロール系をうまく取り入れており、フロウワンドを触る時間の長さを感じました。

(3)ループ系の見せ方

No3のスピカさん(大阪公立大学奇術部Jenga, ディアボロ)の演技では、ループが印象的でした。

トリックのループ中に観客から拍手をもらっていました。

2ディアハイトスでは、最後はキャッチし損ねていたものの、十分に評価できるキャッチ数となっていました。

スピカさんがループ技で拍手をもらえたことで、女子個人部門に限らず、この後の出場者に対しても、ループ時に拍手が起きやすくなったと思います。ご本人だけでなく、大会全体を盛り上げてくれました。

【技術:40点】
(中略)
ドロップ・ミスによる減点は行わないが、成功しない技は評価の対象外となる。但し、成功の兆しのみえる失敗は、審査員の裁量によりそれに応じた評価を付けるものとする。

ジャグリング新人戦 大会要項 審査基準よりより

(3)トリックの順番とシルエット

No4の小猫さん(関西大学文化会奇術研究部, エイトリング)は、技の順番、つまり構成が良かったです。

エイトリングがどう見られるか?をよく意識されているように感じました。

エイトリングを増やした瞬間に会場が盛り上がりました。その直前のスイング系から予想が難しいので、期待以上の効果があったと私は感じました。

増えたエイトリングの組み合わせ方と立ち姿、つまりシルエットで魅せていました。衣装もシルエットを際立たせていました。

(4)技数の多さ

No6のあむさん(ジャグリングクラブTOSS, デビルスティック)は技数が多く、難易度の高い技を成功させていました。

道具や衣装は黄色系でまとめられていました。

リスト系からのピルエット、ダブルレッグオーバー、オールリリースと決まっていきます。ハンドスティックのトス系の技もありました。

加えて、2本のハンドスティックと1本のセンタースティックを投げるオールリリースピルエットからの背面キャッチに成功。会場は盛り上がります。

シングルパートは、とにかく技数が多かったです。

続いて、デュアルアイドリングから、フリップやウィンドミルに繋げていきます。それぞれ成功させていました。

技の数、密度は最も高かったです。

(5)技の途中での盛り上がり

No7の次女さん(尼崎ジャグリングクラブ あまのジャグ, クラブ)は、綺麗なピルエットが印象的でした。

キックアップから3クラブカスケード、1upピルエットで会場は盛り上がります。女子個人部門で一番の盛り上がりでした。

その後、1upダブルピルエットにチャレンジ。ダブルピルエットの途中で会場は沸いていました。惜しくも失敗でしたが、このダブピルも、「成功の兆しが見える技」でした。

ピルエットのフォームが綺麗でした。

(6)練習の様子を想起

No8の川田珠鈴さん(大阪工業大学ジャグリングクラブTOSS, ハット)は、サムスピンが印象的でした。

ハットは黒ベースの青、緑、紫と複数種類を使用。
1ハット→2ハット→3ハットの構成。

1ハットパートと2ハットパートのサムスピンが綺麗でした。特に2ハットの魅せ方が効果的だったと思います。

サムスピン自体が綺麗で、練習中にハットをくるくる回している姿が想像できました。

演技が終わってダッシュ

演技を終えて、ハケるとき、ダッシュする人が多かったです。ホットして、一緒に大会に来ていた同期や先輩の元に走っていく姿がたくさん見られました。

女子個人部門の結果は、
1位 あむさん(ジャグリングクラブTOSS, デビルスティック)
2位スピカさん(大阪公立大学奇術部Jenga, ディアボロ)
3位 小猫さん(関西大学文化会奇術研究部, エイトリング)
となりました。
入賞された皆さん、おめでとうございます。

※SNSでの情報をもとに記載しております。

◆男子個人部門

男子個人部門は、出場人数が多いため、数名に絞ってお伝えさせてください。
(※一応、全員分メモしてあるので、コメントが欲しいという方がいればご連絡ください。可能な範囲で個別に送付いたします。)

(1)メモが追いつかないほどのデュアルの技数

No11の楓さん(大阪公立大学奇術部Jenga , デビルスティック)はデュアルパートが印象的でした。

白のデビルスティック2本を使用。
アウターフラットカスケードからスタート。
シングルパートでは、ダブルレッグオーバーからの背面キャッチやアルバートで会場を沸かせます。

デュアルパートでは、メモが追いつかないほどの技数でした。
ウィンドミル系、センタースティック2本のリリースからのDI復帰、デュアルプロペラ、足の下DPなどが見えました。

(2)フラワースティックを扱う上手さ

No17のるぅむさん(芸大パフォーマンスドール, フラワースティック)さんは道具特性を活かした演技でした。

手でのフィッシュテールからのスタート。その後、ボディロール系のシーケンスを決めていました。

ベルの使い方やピルエットの入り方が上手かったです。

1本のセンタースティックをハイトスして、ハンドスティック2本を投げて、低い方を背面で、高い方を頭上でキャッチする、いわゆる「Yuスペシャル」が決まりました。ここまでの男子個人部門の中では一番の盛り上がり。

デュアルパートに入って、チェーン系も成功。サイトスワップ(多分7531)にも挑戦されました。

失敗はあるけれど、「フラワースティックを扱う上手さ」が随所に感じられました。

(3)操作安定性の高さ

No20のふじさん(大阪公立大学奇術部Jenga, ディアボロ)は、演技の開始からスピードがありました。操作安定性をすぐに感じることができました。

インテグラル系をきちんと決めていきました。1ディアパートはミスなし。

2ディアパートも積極的に挑戦していきます。

2ディアのコラムス系統の中で、ディアボロがぶつかりましたが、復帰できて会場は盛り上がります。

ここまでドロップなし、終盤の2ディアハイトスからトリックに入って初めてのミス。最後のトリックでも惜しくも決まらず。

ディアボロの操作安定性という意味では、No20のふじさんと
No12のアツヤさん(九州工業大学ジャグリングクラブ ピルエット, ディアボロ)が抜けていたように思います。

(4)圧倒的な完成度

No26のカルパスさん(関西大学大道芸サークルジャグりま専科, シガーボックス)

まず衣装にこだわりを持たれていたように思います。青面と白面のシガーボックスを使用されました。

2シガーのスタートでしっかりと決めて拍手をもらいます。

3シガーは色替えを多用して、効果的に魅せていきます。
3シガー大回転までの技の組み立ても良かったです。

前半、明確なドロップはなし。シガーを挟み損ねるミスはありましたが、後続に影響がない程度でした。

3シガーレインボールプからの色替えも綺麗に決まります。その後、3upピルエットも成功。

ここら辺で観客が「ノードロップ」を意識、そして観客までも緊張していきます。

終盤の4シガーパートでは、ダイヤモンドをはじめ、数個の技(多分「ルビー」)を決めて、最後まで落とさずにフィニッシュ。

大会唯一のノードロップの演技でした。
演技終了後に、大きな歓声。

大変良い演技を観ることができました。

(5)得意な系統で攻める

No29の武士道さん(九州工業大学ジャグリングクラブPirouette, デビルスティック)は、系統の魅せ方がうまかったです。

演技はアイドリングからスタート、アンダーザレッグから、股下系に繋ぎます。
ボディロール系から股下のプロペラ系に入ります。

股下のプロペラ系トリックを組み合わせながら移動しているのは、相当な練習量を感じます。しかも音ハメもできていました。

後半は、デュアルプロペラ。スタートも良かったです。
デュアルプロペラパートでも股下系を取り入れています。

最後にXDPパートに入ります。XDPのスタートも良かったです。
XDPで終わるかと思いきや、ダメ押しで股下系を加えてきました。

後半は難易度が高い技を披露していきながら、失敗が少なかったです。

XDPという難しい技を、股下系を組み合わせることでより効果的に魅せていました。

なんで股下を極めようと思ったのか、きっかけが気になります。

(6)オーバーヘッドを貫き通す

No30のつちいさん(京都大道芸倶楽部Juggling Donuts, ボール)は、No29の武士道さんと同様に一貫したジャグリングスタイルを感じました。

白のボールを使用。
3ボールカスケードから演技をスタートして、ボディスローやサイトスワップを組み合わせていきます。

空気が変わったのは、ピルエットからのオーバーヘッドでしょうか。

その後も、オーバーヘッド系統で攻めます。

4ボールパートでは、ファウンテンからサイトスワップを使って(多分7531)、1個のボールを頭の上にストールして、バランスしながら3ボールオーバーヘッドに移行するという技を披露。会場は盛り上がります。

締め技は、5 ボールオーバーヘッドで、最後まで技術力の高さを感じることができました。

同じく、なんでオーバーヘッド系統を練習しようと思ったのかが気になりました。


男子個人部門では、同じブロックの同期同士でハイタッチしている様子が印象的でした。横のつながりができているように感じます。

男子個人部門の結果は、
1位 カルパスさん(関西大学大道芸サークルジャグりま専科, シガーボックス)
2位 武士道さん(九州工業大学ジャグリングクラブPirouette, デビルスティック)
3位 つちいさん(京都大道芸倶楽部Juggling Donuts, ボール)
となりました。

入賞された皆さん、おめでとうございます。

※SNSでの情報をもとに記載しております。

◆フリー部門

フリー部門は審査のない部門です。ジャグリング歴の制限もありません。
出場者3名全員がシガーボックスでした。

全員シガーボックスにもかかわらず

No35のアマルガさんは、おそらく1日を通して最も難しい技を成功させたと思います。
初見で解析できている自信がないのですが、5シガーのダンシーズ軌道(ダイヤモンド?)でマグネティックを加えていました。2箱に対して、ひっついた2箱を積み上げて、最後の1個を回収する。マグネティック系のルーティンのラストに相応しい技でした。

No36のそーすけさんは、演技前のコメントで「闇鍋のようなルーティンになった」と。3シガーパートはバリエーションに富んだ構成でした。

No37の恭々さんの演技で印象的だったのは、曲に合わせて手拍子、ではなく、技に合わせて歓声が上がっていました。ジャグリングの大会ではあまり前例がないように思います。エンターテイメント性に富んだルーティンでトリだったこともあるかと思います。

全員シガーボックスなのに、系統がそれぞれ違い、飽きない時間でした。

先輩から誘ったのか、後輩から誘われたのか

出場者3名の所属は「大阪公立大学奇術部Jenga」「京都芸術大学ジャグリングサークルRelish」「高知工科大学ジャグリング部 KUTJ,」です。

女子個人部門/男子個人部門にも同じ所属の出場者がいることが気になりました。

先輩から「新人戦に出てみない?自分も行くから」と誘ったとか、後輩から「自分も出るんで、先輩も来ませんか?」と誘ったとか、いろんなことが想像できます。実際は違うかもしれませんが。

いずれにせよ「新人戦に出場する理由」になっていて、勝手に「フリー部門」の意義を感じました。


◆交流会

緊張からの解放

全部門が終わると、交流会が始まりました。会場が緊張から解放されたような空気に変わりました。

ジャグリングをする人が7割くらい、話をする人が3割くらいだったでしょうか。道具ごとに集まっているグループもあれば、異なる道具同士で貸し借りしている様子もありました。

「交流を楽しみにしている」といった声も多く、盛り上がっていました。

おわりに

初めて観覧したジャグリング新人戦、率直に楽しかったです。
出場者が本気で取り組んでいる姿勢だからこそ、出場者それぞれのこれまでの練習や背景を想像できました。

そして新人戦が手段として使われているのが良かったと思います。

新人戦に出場/参加されたみなさんにとって
・交流が生まれる
・練習のモチベーションがわく
・知り合いが増えて次のイベントがさらに楽しくなる
のような変化がありそうだと思いました。

来年も、協賛か何かで関われると嬉しいです。

以上です。

もし修正・削除して欲しい箇所等あれば、遠慮なくご連絡ください。
特に初見で解析しきれていない技があるかと思っています。


参考

参考①:カミングスーン動画まとめ

新人戦の事前リサーチとして、カミングスーン動画を検索しました。
14個あります。

カミングスーン動画は、記録に残りにくいので、まとめておきます。
大会出場者の皆さんの交流のきっかけになれば幸いです。
削除希望があればご連絡ください。

◆参考②:大会結果のポスト

新人戦西日本杯のイベントレポートは以上です。
ありがとうございました。


全力でイベントをつくります