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ソロモンの指輪をもとめて

あらゆる栄誉、富、快楽を、ぜーんぶ獲得したら、それで、ひとは幸福になれるんだろうか? なれそうな気がする、けど、どうなんだろうね。。。

この命題は、ぜひ自分で体験し、確かめてみたいもの。だけど、残念ながら、それを実行できるリソースも、体力も、時間も、持ち合わせない、というひとが大半。

なので、神様は、人類からひとり、代表選手を選んで、そいつに、ぜーんぶ体験させる、で、そいつの感想を聞く、というプロジェクトを発案し、実行した。それが「ソロモン・プロジェクト」だ。

プロジェクトの被験者
名前はソロモン。彼は、偉大な戦士であり詩人であった父王ダビデの後を継ぎ、古代イスラエルの第三代国王に就任した。

ソロモンの属性
ソロモンが国を治めるにあたって、神は「おまえの欲するものを、何でも与えるから、ひとつ言え」と尋ねた。熟考のすえソロモンは、軍事力でも、独裁権力でも、莫大な財産でもなく、「知恵をください」と願った。その願いを神は聞き入れ、ソロモンは人類史上、最高の知恵の持ち主となった*¹。知恵を用いて統治したソロモンは、イスラエルを空前絶後の版図と繁栄にみちびき、結果的に彼は、栄誉も富も快楽も、すべて手にした。

プロジェクト1「最高最大の栄誉」
父王ダビデの悲願はエルサレムに「神殿」を建てること。でも、戦士として多くの血を流したダビデが神殿を建てることは、神が許さなかった。そこで父王は、必要な資金と資材をすべて準備し、神殿建設を息子の手にゆだねた。ソロモンは立派に仕事を成し遂げ、栄光に輝く主の神殿を完成した*²。こうして彼は、最高最大の栄誉を享受した。

プロジェクト2「最高最大の富」
ソロモンの知恵の評判は、世界に鳴り渡り、知恵の言葉を慕い、あらゆる国々から使者が宝物を携え、謁見を求めにやってきた*³。シェバの女王は、アラビアの黄金を贈ることで、ソロモンの知恵も好意もハートも得た*⁴。また、ソロモンは大船団を仕立てて世界中に派遣し、あらゆる産品を持ち帰らせた*⁵。こうして彼は、最高最大の富を享受した。

プロジェクト3「最高最大の快楽」
ソロモンは、あらゆる民族から選り抜きの美女を集め、後宮に住まわせた。その数は、正妻が700人、側室が300人、実に合計1000人にも及んだ。ソロモンは、彼女たちと、快楽のかぎりをつくし、彼女たちが勧めるままに、あらゆる国々の偶像の神々を礼拝し、異教の秘儀にあずかった*⁶。こうして彼は、最高最大の快楽を享受した。

プロジェクトの評価方法
以上のとおり栄誉、富、快楽を享受したソロモンに対して、神は感想を求めた。ソロモンは、自分の感想を本にしたため、それは『伝道者の書』(コヘレトの書)として、旧約聖書の中におさめられた。

評価の概要
最高最大の栄誉、富、快楽を体験したソロモンの感想をまとめると、概略、次のとおり。

空の空、すべては空。日の下でどんなに苦労しても、それが人に何の益になるだろうか。(伝道者の書 1:2-3)
● すべてのことは物憂く、人は語ることさえできない。目は見て満足することなく、耳も聞いて満ち足りることがない。(1:8)
● 知恵が多くなれば悩みも多くなり、知識が増す者には苛立ちも増す。(1:18)
● 私は心の中で言った。「さあ、快楽を味わってみるがよい。楽しんでみるがよい」 しかし、これもまた、なんと空しいことか。(2:1)
● 自分の目の欲するものは何も拒まず、心の赴くままに、あらゆることを楽しんだ・・・見よ。すべては空しく、風を追うようなものだ。(2:10-11)
私は生きていることを憎んだ。(2:17)
● いのちがあって、生きながらえている人よりは、すでに死んだ死人に、私は祝いを申し上げる。(3:2)
● 人の労苦はみな、自分の口のためである。しかし、その食欲は決して満たされない。(6:7)

ソロモンが出した結論
以上が、個人が経験し得る最高最大の栄誉、富、快楽を体験したソロモンが、身をもってくだした評価だが、それをふまえて、彼は、こういう結論にいたった。

結局のところ、もうすべてが聞かされていることだ。神を恐れよ。神の命令を守れ。これが人間にとってすべてである。(12:13)

どうでしょう、この結論。。。もう、全米が泣いた、というレベルを超えて、全世界が激怒するレベルかも。

ふっざけんな、ソロモン王、こんなにいい思いさせてもらって、これがおまえの結論かよ?って。

しかし、まあ、これが、全人類の代表として、あらゆる栄誉、富、快楽を味わい尽くしたソロモンの答えなのだ。。。「空しい、死にたい」って。

どう取るかは自由
この結果報告書がおさまった聖書を、全人類は神から受け取っている。で、どう読んで、どう生かすかは、受け取った一人一人の選択に任されているんだ。。。わかりました、と判断するか。あるいは、いや、やっぱり自分で納得がいくまで試させてください、と判断するか。それは、自由だ。。。

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今日の聖書の言葉。

お前の主なる神はお前のただ中におられ 勇士であって勝利を与えられる。主はお前のゆえに喜び楽しみ 愛によってお前を新たにし お前のゆえに喜びの歌をもって楽しまれる。
ゼファニヤ書 3:17 新共同訳

結局、心のフォーカスを、どこに置くか、ということだと思うんだよね。

ほんとうの満足?
ほんとうに存在するかどうかもわからない、「ほんとうの満足」を求めて、栄誉、富、快楽を追求するという、ソロモン流の生き方は、たとえてみれば、広大無辺の宇宙の果てに届くため、小さなジグソーパズルを一個ずつ手に取って埋めて行くような作業だ。。。その途方も無い感じは、恐怖だ。

今日の聖書で、こう言われていた。

主はお前のゆえに喜び楽しみ 
愛によってお前を新たにし 
お前のゆえに喜びの歌をもって楽しまれる。

現状、神は「あなた」を喜んでいる。神は「あなた」を楽しんでいる。神は、愛によって「あなた」を新しくする。神は「あなた」を思って、喜びの歌をうたい、楽しんでいる。

これはねー、ほんとうに、信じられないことではあるけれど、でも、神にとっての喜び、楽しみ、愛は、わたしであり・あなたである、というんだ。

この <神の喜び、神の楽しみ、神の愛の対象は、わたしだ>という事実をシンプルに受け入れることができれば、わたしたちは「神の満足」のなかで自分の「ほんとうの満足」を手に出来るんだ。

それは、信じさえすれば、いま・すぐ、手に入ってしまう。

でも、それを簡単には、手に入れたくないんだよね、私たちは。。。だから、リトル・ソロモン流の探求を、まだこの人生で、やり続けたいと欲してしまうんだ。。。

註)
*1.  列王記上 3:12
*2.  列王記上 6:14
*3.  列王記上 4:29-34
*4.  列王記上 10:1ff
*5.  列王記上10:22
*6.  列王記上 11:1ff

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